133.
ピクシーの設計図を、八宝斎は食い入るように眺めていた。
「なるほど……。浄化の魔法陣を大きく作るんじゃなくて、細かく分割して……。倍加術式で効果を増幅……。この仕組みなら最小限の魔力で浄化効果を維持できる訳か……」
数時間、八宝斎はひたすら設計図に向き合い、その評価を続けていた。
ミシェルは魔道具の専門家ではないが、相手がかなりこれに強い興味を抱いていることは、十分に伝わった。
やがて、八宝斎がゆっくりと口を開く。
「これ、実物は?」
「ないです。これから作ります」
「私に作らせて欲しい」
(食いついてきた……!)
ピクシーはあえて、八宝斎の真正面に立たないようにしていた。
彼女の目は虚無の魔眼といって、魔力から相手の感情を知ることができると、知ってるからだ。
(相手はいわば読心術の使い手だぞ……ミシェル……いいのか……? 君の打算が、全て読まれてしまうぞ……?)
しかし、ミシェルは八宝斎の目を真っ直ぐに見据えたままだった。
獲物が餌に食いついた瞬間にも、表情にはまったく揺らぎがない。
(なんと言うポーカーフェイス……。しかし魔力を見る相手には通用しない……いや、そうか! ミシェルは加護を持たない。加護と魔力は切っても切れない間柄だ。つまり、彼女は魔力を持たない)
ゆえに、魔力から心を読まれることはない。
(なるほど……。やけに自信があるとおもったら、こういうことだったのか。八宝斎を相手にしても商談で優位に立てる、その勝算があったんだな)




