132.
ピクシーの作った設計図を手に、ミシェルは八宝斎の店へと向った。
出迎えたのは、緋色の髪をした美しい女性、天才魔道具師である、八宝斎だ。
「こんにちは、八宝斎」
「ミシェルさんっ! こんにちはー!」
八宝斎はニコニコしながら歩み寄ってくる。
その気安い雰囲気を、ピクシーは密かに首をかしげた。
(そんな仲良かったのか……この人たち……?)
「これお土産です」
ミシェルは持ってきた紅茶の茶葉を八宝斎に手渡す。
彼女は「いつもありがと~」と笑みを向ける。
(なるほど……カイウスの知育玩具の件でお世話になって以来、足繁く通い続けていたわけか)
純粋に感謝の気持ちはあるだろう。
しかし抜け目ないミシェルのことだ、この天才職人を他国に逃がしたくないがゆえに、頻繁に店を訪れれ、丁寧に関係を育んできたのだろう。
「わぁ! この紅茶好きなやつ~!」
「そうですか。偶然選んだものが気に入っていただけたらなら、嬉しいです」
(絶対リサーチしたでしょ……君……)
ミシェルがたまたま相手の好みに合うモノを選ぶはずがない。
彼女にとって、情報は武器も同然なのだから。
「それで、今日はどうしたの?」
「実はマギア・クイフの賢者が、面白い設計図を書いたのですが。実現可能かどうか、魔道具師の意見を伺いたくて参りました」
(なるほど……依頼として押しつけるのではなく、まずは相談から入るのか。そして相手が興味を抱いたところ本題に入る算段か……)
何かを手に入れるために、周到な準備と戦略を練っておく。
ピクシーは改めて思った。
(味方でほんと良かったよ……)




