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【連載版】加護なしの第八王女は、前世が社畜だったので王宮生活がイージーモードにしか見えない  作者: 茨木野


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123/140

123.


 聖王国の使者は、客間の前に通されていた。

 彼はソファに浅く座り、審判の時を待つ罪人のごとき表情で、うつむいてる。


 額からたれまくる汗は、いくら拭っても止まることはない。

 呼吸が浅い。


 脇汗で服がぬれまくっている。


 重力魔法が掛かってるかのごとく、体が重く感じた。

 地面に視線を固定させて、考えるのはこれからのこと。


(冷徹妃は恐ろしい女性だと聞く……。今回の件はかなり腹を立てているだろう。なんとしても……ごまかさねば。死ぬ気で)


 扉が開くと、「謁見の準備が整いましたぁ」と、若いハーフエルフの女が、呼び出す。

 使者は女と共に部屋を出て、謁見の間へ。


 扉を開けると、そこには、大男が玉座に座っていた。


 この国の皇帝、ギデオンだ。

 ギデオンを見た瞬間……使者は内心で、大きく安堵の息をついた。


(しめた! 無能帝だけしかいないぞ!)


 周りを見渡すも、冷徹妃の姿は見えない。

 後から入ってくる可能性は考えにくい。


(政治の分らぬ無能帝ならば、どうとでも説き伏せることができる……! やった……! 勝った……!)


 先ほどまで自身にのしかかっていた、重みが解けて、体が軽くなったような気がした。

 使者はギデオンの前まで移動し、跪く。


「シンシャーと申します」

「よくぞ参った。ギデオンである」


(くく……よくご存じだよ。冷徹妃がいなければ、政治をまったく理解できぬ馬鹿者だってことはぁ!)


「ギデオン陛下におかれましては、ご機嫌麗しゅう……。

此度は部下が勝手をし、貴国に迷惑をかけてしまったこと、誠に申し訳ないと思っております!」


「ほう……部下が勝手に」


「はい! あの演習をよそおった攻撃は! 聖王国の総意ではございません! 一部の愚者たちの独断専行なのです!」


「なるほど……愚者どもの独断専行……か」


 使者はニヤリ、と心の中で嗤う。


(いいぞ! やはりこの男……政治をまるで理解していない! 現に、私の言ったことをオウム返ししてるだけだ!)


 くわぁ……とギデオンがあくびをする。


(つまらなそうにしてるし……やっぱり政治をまるで理解していない。くく……なんともやりやすい男!)


「つきましては、今回のお詫びとして、これだけの慰謝料を貴国にお支払い致しますゆえ、どうか……お許しいただけますと」


 シンシャーは目録を、先ほどのハーフエルフに渡す。

 女を経由して、ギデオンは書類に目を……通さなかった。


 ぱさり、と書類が地面に落ちる。


「な、なにを……?」


「貴様の言い分によると、今回は聖王国の反乱分子が起こした犯行ということだな」


「え、ええ……」


「そうか。ならば、なにゆえそいつらの首をもってこない」


「は!? く、首……ですか?」


 ギデオンは立ち上がる。

 ぐしゃり、と書類を踏み潰す。


「当然だろう。そいつらは帝国に唾を吐いたのだ。俺は、舐められるのが一番許せん」


「い、いやいや! 何を言ってるのですか……。他国の人間を打ち首にする権限なんて、持ってるわけがないでしょう!?」


「その通り。だから、おまえらがやるのだ」


「な、なぜ……?」


「俺たちに申し訳ないと思っているのなら、せめて、反乱者どもの首を差し出す。それが誠意ってものではないのか……?」


(こ、この男……本気だ。本気で要求してきている……)


「おまえ達が持って寄越したそこの書類には、俺らへの誠意がまるで感じられん。いいか? 俺らを殺す気で来たのだから」


 しゃきんっ、とギデオンは腰に佩いていた剣を抜いて、シンシャーの首に刃を立てる。


「殺されてもおかしくない。だろう? その覚悟があって俺らにケンカをふっかけてきたんじゃないのか?」


「ひ、ひ、ひいぃい!」


 後ずさるシンシャーを、ギデオンが見下ろしている。


「それに……一部の反乱者が勝手にやったことというのなら、おまえもそこに含まれているだろう。立案者の中に入ってるんだってな」


「!? な、なぜそれを……」


「俺のミシェルを侮るな。アレは、全てを見通す聡明な女なのだ」


 ……書類上、シンシャーが今回の件に関わっていないことになる。

 だが、ミシェルは、あの冷徹妃は、書類に書かれていないことから、真実を見つけ出したという。


「馬鹿どもの首で今回の件は許してやろう」


 ギデオンは持っていた剣を、シンシャーの前に放り投げる。


「ほら、早く首を切れ。切って見せろ。本当に、俺たちに申し訳ないと思っているのならば」

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― 新着の感想 ―
たぶんこいつ普段は複雑怪奇な政治の過程を理解しようとしないだけで敵と思えば最終的に抑えねばならない要点は直感的に分かっちゃうヤツだぞ 逃げ道を1つ1つ塞いで罠に追い込み仕留めるタイプなのがミシェルで …
なんだ思ったよりわかってたのか。
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