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【連載版】加護なしの第八王女は、前世が社畜だったので王宮生活がイージーモードにしか見えない  作者: 茨木野


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121/138

121.


 ミシェルは聖王国への処遇、今後の流れ、それらをティルとギデオンに指示する。

 ティルはメモをしっかりと取り、冷徹妃の命令を、忠実に実行できるようにする。


 ……一方で。


「ギデオン」

「フッ……なんだミシェル」


「貴方、さっきから私のことばかり見て……メモを取ってないようですが、大丈夫なのですか?」


 ミシェルの冷たい視線がギデオンを射貫く。

 ギデオンは「問題ない」と自信たっぷりに答える。


 ミシェルは「そうですか……」とスルーしてしまう。

 ここで、ティルは思い出した。


(そういえば……こないだの会議の時、ギデオン陛下はミシェル様の話を聞き流していたような……)


 つまり、この問題ないという発言には、問題しかない、可能性が大いにあった。


「あ、あのぉ~……」


「なんです、ティル?」


(ここで言わなかったら、それこそ、てぃるはミシェル様に怒られてしまうのですぅ~……)


 ティルは我が身かわいさゆえの発言をする。

 先日の演習前の会議において、ギデオンはその内容をまったく聞いていなかったと。


「ほぉ……軍議を……へえ……そう……」


 ミシェルはつぶやくと……笑った。


(ひぎぃい! な、なんておっそろしい……!)


 まるで猛獣が牙を剥いている。

 そう、想起させるような凄絶な笑みを、ミシェルが浮かべていた。


 ギデオンは「なんと美しい笑み……!」と何やら喜んでいる様子。


(この馬鹿皇帝……まさかミシェル様が本当に嬉しくて笑ってる、って思ってるんですぅ!? 馬鹿すぎやしないですぅ!? アホすぎないですぅ!? 間抜けにも程があるですぅ! さすが、無能の血ブラッド・オブ・ノアカーター!)


 心の中で罵倒しまくるティルを余所に、ギデオンはうっとりした笑みを浮かべている。

 ミシェルは猛獣の笑みを浮かべながら「ティル……?」と話しかけてきた。


(ひぃ! こっちにお鉢が回ってきたぁ……!)


「おまえ、いつまでそこにいるのです。さっさと部屋を出て自分の仕事をなさい」


「はひぃいん!」


 残像が見えるほどの速さで、ティルは部屋から退出した。

 このあとに何が起きるのか……なんて火を見るより明らかである。


(嵐が来る前にてぃるはさるですぅ~!)


 ぱたん、とティルが部屋の扉を閉める。

 ティルは振り返らず、真っ直ぐに、部屋から出て行く。


「ひぃ……くわばらくわばら……」


 師である賢者ピクシーから習った呪文を唱えて、ティルは部屋から逃げる。


「ちる……?」


「あ、カイウス様!」


 ミシェルの義理の息子、カイウスが、てこてこと廊下を歩いていた。

 ティルを見つけると嬉しそうに、走ってきて、抱っこを要求してくる。


 ティルはカイウスを抱き上げる。


「こんなところで何をしてるですぅ?」

「みえう、ぎでおん、あいにいこーと」


 ティルはにっこりと笑う。


「そんなことより、てぃると遊びましょう?」

「うん! ちると、あしょぶー!」


 ……大嵐の中に、この可愛い王子を、放り出すわけにはいかないのだった。

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