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【連載版】加護なしの第八王女は、前世が社畜だったので王宮生活がイージーモードにしか見えない  作者: 茨木野


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106/139

106.


 グレースの所有する、鑑定眼を使った、適性検査が行われる。

 それを、口悪く言う保守派大臣たちもいた。


「鑑定眼持ちを置いたらしいぞ、あの冷血な妃気取り」


 大臣達は集まり、誰にも聞こえないように会話する。

 私室にこもってしか、上司の悪口が言えなかった。


 それくらい、ギデオンとミシェルが恐ろしいのである。


「鑑定眼があれば、あの妃はもう用済みなのではないか……?」

「そうだ、加護なしのクズより、鑑定持ちSランカーのほうが有用なはず」


「保守派に働きかけ、妃の不要性を訴えるのはどうだろうか。さしものギデオン皇帝も、多数からの意見には耳を傾けざるをえないだろう」


 なるほど……と皆がうなずく。

 彼らにとっての頭痛の種は、ギデオンおよびミシェル。

 ギデオンはまだ武力だけで、頭が弱い。

 御しやすいのがどちらかは明白である。


 ミシェルを排除すれば、また我らの天下。

 ギデオンなど脳みその残念な筋肉だるま。


「さて……何か言い残すことはありますか?」


 数日後。

 ミシェルの執務室にて。


 保守派大臣たちは、ミシェルの執務室に集められていた。

 大臣たちは滝のような汗をかいている。


 彼らの前に座るミシェルの手には、録音用の魔道具が握られていた。


「と、盗聴器なんて……ぷ、プライバシーの侵害だっ!」

「ふむ、だから?」


 全員がミシェルの目を見やる。

 冷たいまなざしにまるで動揺は見られない。


 彼女は本気で思っているのだ。

 プライバシーを侵害してるが、何か問題があるのかと。


「ぎ、ギデオン皇帝陛下におかれましては、ど、どうお考えかっ!」


 年配の保守派大臣が、ギデオンに尋ねる。

 そのギデオンはというと、ミシェルの横に立っていた。


 彼は大臣をひとにらみする。


「ミシェルはこの国の皇妃。皇妃とは俺の半身だ。その半身の言葉はすなわち、俺の言葉と同義」


 ギデオンはゆっくりと、年配の大臣のもとへ近づく。

 彼の方が大臣よりも……というより、この場にいる誰よりも背が高い。


 そして、その鋭いまなざしから発せられる、強烈な圧に、大臣達はおののく。

 極寒の地にいるような錯覚に襲われ、また、目の前には凶悪なモンスターが居るような気さえしてきた。


 ぺたり……と大臣がその場に膝をつく。

 血の気は完全に引いており、刃向かう意志は完全に砕かれていた。


「とはいえ」


 ギデオンはしゃがみ込み、ぽん……と大臣の肩を叩く。


「下々の悪口を理由に、いちいち斬首していては、皇帝が狭量と思われてしまう」


「へ……?」


「それにおまえ達が、ぶつくさ文句を言いながらも、仕事をしていることもわかっているさ」

「へ、陛下……!」


 ギデオンは立ち上がると、全員に向かって……微笑む。


「今回の件は、ミシェル、どう裁く?」

「陛下のお気に召すままに」


 ミシェルは書類に目を落として、仕事に移っている。

 もはやこの会話に、何の興味もなさそうだ。


「だ、そうだ。ならば俺が言おう。貴様らの企みについては不問とする。だが今日のことは忘れるな。よいな?」

「「「は、はい……!」」」


 大臣達は皆、泣きながらギデオンに感謝し、部屋を出て行く。

 その表情からは、国家への反逆心はなかった。

 むしろ、ギデオンが最近優しい、大人になられた……と口々に言う。


 誰も居なくなった頃合いを見て、ギデオンがため息をついた。


「ミシェルの計画通りになったな」


 そう、全ては事前に決めておいた、プラン通りなのだ。

 馬鹿な大臣どもの首を切るのではなく、脅し、助けることで、帝国の忠誠心を高める。


「恐ろしい女だ」

「ありがとう、褒め言葉として受け取っておきます」


「ふっ……何を言う。褒め言葉ではないか」

「はいはい」

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