14 日本能力会合
「ただいまより、日本能力会合を執り行う...。」
その言葉に丹波だけでなく周りも緊張した面持ちになり、全員が豹洲崎の方向を向く。場が厳かな雰囲気に満たされる中、先ほどから奥の方でニヤけていたマジシャン風の男が豹洲崎に向かって叫ぶ。
「ところで、ナンバーワン....僕たち、日本のトップ10が呼ばれたんだ。この議題はそれに値するものなんでしょうね?」
豹洲崎はマジシャン男の発言に少し困ったような顔をするも、横から出てきた丹波が豹洲崎の肩を叩くと代わりに説明しだす。
「申し訳ございません....ナンバーセブン様。ここからは豹洲崎に変わりまして、この丹波が説明をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「ん〜.....大丈夫さ。丹波ちゃんは可愛いからね。」
「ご理解ご協力、まことに感謝申し上げます。」
丹波が深々とマジシャン男に顔を下げた後、卓を囲んでいる全員に資料を配り始める。
「.....?...会長。ナンバーテン様はどこにいらっしゃいますか?」
ふと、手を止めたのは『10位』と書かれた札が貼られてある椅子。そこにいるはずのナンバーテンがいないのだ。
「あぁ.....知らないな。たぶん修行とかで山に篭ってんじゃない?あとで俺から連絡しとくよ。」
「では、ちゃんとしてくださいね....会長。」
不適な笑みで見つめられた豹洲崎は額に汗を滲ませながら、グッドポーズで即座に応戦する。だが、そんなことをしている最中に、丹波は素早い手つきで全員に資料を配り終える。
「では、皆さん....資料をご覧ください。」
丹波その声に全員の視線が資料へと向けられる。
「今回の議題は......能力取得における危険事案です。」
豹洲崎も含めて全員が意味がわからなそうな顔をしているため、丹波が少し砕きながら説明をしていく。
「まず、論点1の画像をご覧ください。」
丹波の言う通り、豹洲崎は論点1の画像を見る。画像には白い錠剤のようなものと、東京駅が映っていた。
「この錠剤のようなものは錠剤と言い、ある一定の能力を結晶化したものです。」
「能力を結晶化ぁ?」
丹波の言葉に引っかかったのか、ガンマンの格好をした男が机を叩きながら叫ぶ。その顔は何か得体の知れないものに触れて恐怖しているように見える。
「はい、その通りです....ナンバーナイン様。」
「待て待て....その通りってことはその錠剤の中には能力が秘められてるんだろ?そんじゃあ、それを食ったら能力を得られるってことか!?」
ガンマン男のその言葉に場にいる全員の息が詰まる。この世界では固有の能力を意図的に変えたり、不適切な能力取得は能力使用等違反や国家転覆罪で最悪死刑になる可能性がある。
「だ、誰だよ....そんなことをしてる奴は...。」
「ただいま調査中ですので、情報が入り次第報告させていただきます。」
静かに諭すように発せられた丹波の声は再度みんなの冷静を取り戻させる。驚きつつもどこか楽しそうにしている豹洲崎は、丹波に質問を投げかける。
「う〜ん.....丹波、どうやってこの情報を仕入れたんだ?」
「それに関しては適任者がおります。」
そう言うと、丹波は部屋の奥の方に向けて手招きをする。それに応じて出てきたのは、黒いスーツに身を包んだ目のクマが目立つ男。
そうーー
神代が東京駅で会った夜勤明けのサラリーマンだ。
「では、説明を。」
「....はい。」
めんどくさそうに会議室の前方へと足を進める男。そして、みんなの視線があたるところまで行くと、ゆっくりと喋り出す。
「えぇと、あれは私が業務を終えて帰るタイミングでしたね....。私はいつも東京駅を利用するのですが、いつも乗る電車のホームに向かっていたんです。そこで奇妙な現象が起こりまして....」
「.....奇妙な現象?」
「はい、いきなり少年に話しかけられて困惑していたところ、いきなりバックに手を突っ込んできたんです。」
「そりゃあまた......窃盗ですか?それは実にナンセンスですね。」
「いや、窃盗ではないです。....その少年がバックに手を突っ込んだらーー。」
「ーー身に覚えのない、錠剤のようなものが出てきたと.....そういうことかな?」
豹洲崎が予測していたように口を開くと、それに驚いた男が豹洲崎へと顔を向ける。見つめ返されるのは全てを悟ったような瞳と表情。男が微弱な恐怖で肩を震わすと、また資料へと向き直って喋り出す。
「は、はい.....そして、気になった私が捜査系統の能力を使用して、そのときに分かった内容を資料にまとめております。」
「ありがとうございます。」
丹波が深々と頭を下げると、男は片手を軽く上げて去っていった。会議室に再び訪れた静寂は重く、簡単に破れそうな雰囲気ではなかったが...
「いやぁ....大変なことになってるね。」
それを破ったのは言わずもがな豹洲崎だった。彼はおちゃらけたような表情でみんなを見渡すと、最後に丹波を見る。
「えっ、その錠剤っていうのは一個だけなの?」
「会長....前から思ったのですが、こういうときは資料をよくご覧になってから発言してください...。」
「あっ、めんご...。」
両者の間に気まずい何かを感じる中、それを振り切って今度は丹波が喋り出す。
「.....先ほどは捜査系統の能力を使ったと報告いたしましたが、全てを知れるわけではないのでご容赦ください。」
「チッチッチー.....これくらいあれば大丈夫だよ、丹波ちゃん。」
不意に声を上げたマジシャン男が資料のある部分を指さす。丹波が自分の物でその部分を確認すると、そこには次に発生する錠剤の場所と秒単位の時刻まで書かれていた。
「もし、狙おうっていう輩がいるなら、俺らが先に奪うか、大事になる前に殺せばいいんじゃない?....まぁ、誰がやるかの問題になるけどーー。」
「ーー俺に行かせてくれ。」
突如、低く野太い声が会議室に響く。
全員が音源を辿っていくと、その先には片手を上げたガンマン男がいた。
「確かに....ナインなら安心かもね。」
豹洲崎が安堵した表情を浮かべる。それに応えるように、ガンマン男も小さく首を縦に振った。その様子からその場にいた全員もガンマン男を認め、場は再度静かになる。
「じゃあ.....今から74時間5分4秒後に白川郷だな...?」
「はい、その通りです。」
そこまで会話をすると、ガンマン男は何かを決したようにゆっくりと席から立ち上がる。そして、確実な足取りでドアの前まで行ってノブに手をかけたとき、後ろからある一声がガンマン男の耳に届く。
「ナイン.....油断すんなよ?」
「当たり前だ、ナンバーワン。俺をなんだと思ってるんだ...?」
ガンマン男が言い終わると共に、辺りには重い扉の音が響き渡った。
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