正直な話、魔神相手にどうすべきかさっぱりわからん。模索中だ
『聖印の騎士』レックスの死に比べれば、想像の範疇にあったのだろう。シェリーは却って冷静さを幾分か取り戻したようだった。
「……そうですか。やはりとは思っていました。あなたの目的は『エルバラース』の封印を解き、魔神を完全に復活させる、とそういうのですね?」
シェリーが敵意を新たにする。俺は一笑した。
「最後まで聞けよ。もしそのつもりだったら、俺はもう少しうまくやるぜ。ここを攻略するだけなら、軽く十通りは思いつく。俺はな、お前らとやりあうために来たわけじゃあねえ。むしろ逆。俺は魔神を滅ぼそうとしている立場だぜ?」
シェリーはばっさりと切り捨てた。
「魔族が魔神を討つ?戯言を。あり得ない話です」
「確かに信憑性に欠けるな。ちなみに一つ訊いていいか、シェリー姉ちゃん」
シェリーが身を震わせた。
「やめてください。あなたにそう呼ばれるのは怖気がします」
「じゃあ、シェリーで」
シェリーが嫌々頷いた。俺は隙あらばシェリー姉ちゃんと呼ぶことに決めた。
「シェリーは魔族をどこまで知っている?」
「……角とか尻尾とか生えている悪魔」
シェリーが自信なさそうに言って、俺はぷっと噴き出した。
「ははっ。少年が言ったのとほぼ同じとは傑作だ。ははは腹、痛てえ……!ごほっ、げほっ、がはっ!マジ痛いな、クソが……」
祝福がうざったい。油断すると肺が焼かれちまう……!
小ばかにされ、羞恥で顔を少し赤らめるシェリー。俺はようやく見せた年相応の反応に頬を緩めた。
「まあ見た目のところは置いといてだ。魔族にも事情がある。全員が全員、魔神信奉者じゃあねえ。派閥があってな。魔神に対しては大きく二分している。魔神復活派とその反対派。俺はその反対派ってわけだ」
「……仮にそうだとしましょう。結局あなたは何しに来たというのです?さっきから回りくどいですよ」
「ああ、そうだった。無駄話は俺の悪い癖だ。」
俺は反省して、一言で答えを言った。
「『エルバラース』で再び魔神を封印する」
「は……⁈」
思わずと言った様子でこれまで大人しかったクリスが叫んだ
「ど、ど、ど、どういうことだよ、おじさん!エルバラースは既に魔神を封印しているんだよね?それでもう一度封印って、そんなことできるの⁈」
「さあな。だが、魔神の復活は近い。討伐する術がなければ過去の遺物に縋って封印するしかない。全く、腹立たしいことだよな。よりにもよってあやふやな伝説に救いを求めるなんて。けど、分かってほしいのはそれだけ魔神は強力だってことだ。このままだとどうしようもない」
「……」
「可能性があるならいくらでも乗ってやる。ただその遺物は千年も前のものだからな。希望になりうるかどうかまずは見ないことには始まらねえ。まずは、その聖剣とやらを見定める。俺はそのために来たんだ」
ただ俺は自分の状況を弁えている。ここで暴れようが何しようが、生殺与奪の権利は目の前の少女にあるということを。
俺は傲慢な態度で少女を試すように言った。
「どうする、シェリー?俺を殺すかどうか。お前に任せるよ」




