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第四章:共存の宣告

そして現在。目の前の広間では、三年前と同じように、才能や実績を値踏みする品評会が続いている。


「一真は仕事で表彰されたそうだな。拓海もインターン先で評価が高いと聞いているぞ」


祖父の機嫌の良い声のあと、予測していたように、今度は伸也へと流れ弾が飛んできた。


「伸也。お前は、また単位を落としたそうだな」

一真が神経質な性格そのままにまるで告げ口をいうかのように言う。向かいに座る拓海が、わずかに反応するのが伸也の目に入った。


「……一単位だけです」


「一単位もゼロも同じだ! お前も少しは拓海を見習え!」


祖父の激しい雷が落ちる直前、またしてもあの声が間髪入れずに割り込んだ。


「お祖父様も一真兄さんも、伸也を責めないであげてください」


拓海は、コップを置く音一つ立てず、会話に割り入る。彼の存在そのものが、伸也にとっての盾であった。


「伸也はね、実は俺の大学の課題、裏でずっと手伝ってくれていたんですよ。こいつ、調べ物のセンスがめちゃくちゃ良くてさ。俺が無理を言ったせいで、寝不足にさせちゃったんだよね。……な、伸也?」


ウインク付きの、人を心底から魅了するキメ顔であった。


……実際は、何も手伝っていない。その完全な虚構に、伸也は言葉を失った。


しかし祖父は「拓海がそう言うなら……」とまたしても簡単に騙され、座敷には一時的な平和が戻った。拓海のあまりにスマートすぎる立ち回りに、伸也は感心するのを通り越して、かすかな嫌悪感すら覚えていた。この男は、その完璧さゆえに、いつか人を欺く術に長けた詐欺師にでもなるのではないか。


しかし、真の悲劇は、その直後に宣告された。


「ねえ伸也。拓海くん、春からのインターン先がうちの近くなのよ。だからね、半年間、うちで下宿してもらうことに決めたの」


伸也の母親が、満面の、しかし伸也にとっては恐ろしい笑みで、爆弾を投下した。


持っていた箸が、カタンと、虚ろな音を立てて皿に落ちた。


「……は? 下宿、ですか」


「伸也も、拓海くんが一緒なら心強いでしょう?」


有り得ない。聞いていない。これは一方的な宣告であった。


伸也が顔色を失い、蒼白になっている前で、拓海は心底から申し訳なさそうな、それでいて光の量を120%に上げた笑顔で頭を下げた。


「叔母さん、本当にありがとうございます。伸也には迷惑をかけると思いますが、家事でもなんでもやるので、どうかよろしくお願いします」


お開きの時間。玄関で親族を見送る伸也の肩を、拓海がポン、と叩いた。


「春から楽しみだね。よろしく、伸也」


誰にも聞こえない声で、拓海はまるで楽しむかのように囁いた。


「俺が一緒なら、君の大学生活も、少しは気が楽になるだろう? お互い、新しい生活を楽しもうじゃないか」


拓海の、熱を持った手が離れた後も、伸也はまるで石像のようにその場で動けずに固まっていた。彼の平穏な、暗がりでの引きこもり生活は終わりを告げ、光の権化との波乱に満ちた同居生活が、これから幕を開けることになったのである。


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