第十七章:勝利の報告と、至近距離の熱
伸也が徹夜で見つけ出した証拠を持ち、拓海はインターン先へと乗り込んでいった。
昨夜、伸也が徹夜で拓海から事情を聞くうちに、ふと胸に引っかかった違和感があった。
それは、拓海が陥った「不祥事」があまりにも出来すぎたタイミングと、その背後にうっすらと見え隠れする一真の影だ。
「まさか、インターン先の件まで、あいつの差し金なんじゃねえだろうな……」
伸也は寝不足で重い頭を振りながら、最悪の可能性を思考の隅に追いやる。だが、この疑念は、その後の本家との戦いにおいて、彼にとって重要な「武器」になることを、この時の伸也はまだ知らない。
すべてが終わった夕方、伸也は自室のベッドで泥のように眠っていた。
「……伸也。起きて」
耳元で、低くて甘い声がした。
「……ん……」
重い瞼を開けると、そこにはスーツ姿のままベッドに手をつき、伸也を上から覗き込んでいる拓海の顔があった。いつもは爽やかなシトラスの香水に、ほんの少しだけ外の熱気と汗の匂いが混じっていて、妙に男らしくてドキリとさせる。
「勝ったよ。お前のおかげだ」
拓海はそう言うと、伸也の額にかかった黒い前髪を、長い指でゆっくりと梳いた。その手つきが、普段の「からかい」とは違う、ひどく熱を帯びた優しいもので、伸也の背筋にゾクゾクとしたものが走る。
「……よかったな。これで俺の専属シェフはクビ回避だ」
伸也は照れ隠しで憎まれ口を叩きながら起き上がろうとしたが、拓海の腕が伸也の腰に回り、再びベッドに引き戻された。
「……っ、おい! 何すんだよ」
「伸也。俺、今日確信したよ」
至近距離。拓海の長いまつ毛の影が伸也の頬に落ちる。彼の瞳の奥で、静かな、けれど熱い炎のような感情が揺れていた。
「伸也。俺、わかったよ。俺を完璧な王子様として見る連中の中にいても、心は死んでたのに……お前のために必死になってる時だけは、すごく息がしやすかった。俺の弱さを全部見せられるのは、世界で伸也だけだ」
拓海が、伸也をソファに押し込むようにして距離を詰める。至近距離で見つめ合うと、拓海の瞳の奥にある独占欲が、隠しきれずに溢れ出していた。
「……お前の全部が欲しい。相棒じゃなくて、俺の『特別』になってよ」
歩くパワースポットが見せた、不器用で、ひどく切実な男の顔。
伸也はもう、自分の気持ちをごまかすことができなかった。いつも自分を振り回すこの男のことが、とっくに好きになっていたのだと。
「……俺も、お前がいない生活なんて……もう想像できない。責任取れよ」
伸也は真っ赤になった顔を隠すように、拓海のネクタイを乱暴に引っ張り、その端正な唇に自分の唇を重ねた。拓海が驚いたように息を呑み、次の瞬間、伸也の後頭部を強く引き寄せて、深く、溶けるような熱いキスを返してきた。




