4話 104対1
ーー辺境地アズルにて
「に、逃げてください!」
ゴブリンに捕まっていた若い娘は、100体越えのゴブ共に囲まれている俺(聖剣)を見てそう叫んだ。
俺からもお願いだから逃げてくれないかなぁ。
「安心してくれ姫君よ、このゴブ共をすぐに始末してそこから解放するからな!」
『プシュウウウ』
俺(聖剣)がそう話すと、持っている聖剣から金色のオーラが吹き出した。
つか姫君とかやめろよ、そんなの俺の身体で言うなよなぁ、恥ずかしい。
「アークトゥルスよ、その力今示せ!」
『ズバァン』
そう言うと俺(聖剣)は、自身を中心とした円を描くように聖剣を振り抜き周囲にいるゴブ共を斬り伏せてしまう。
ていうか今この剣、振り抜く時にさらに大きくならなかったか?
「良い疑問だな使い手よ、その通りこのアークトゥルスは自在に剣の大きさを拡張できるのだ」
な、なんだって!?
「まぁでも拡大すればするほど、剣に纏わせたこの金色のオーラは薄くなるし、拡大できるのは一瞬だがな」
いやいやそれでも十分だろ!
だって今半径10メートルくらいの円を描く斬撃だったぞ!
「ふははは、いやいや情けない、本調子なら半径15メートルはいくのにな!」
半径15メートルって、つか今ので本調子じゃないのかよ。
『ちくしょう、あの野郎仲間50人を皆殺しにしやがったぞ』
『舐めやがって、ゴブリンの恐ろしさを教えてやるぞ!』
『ブオッ』
そう叫んで一斉に俺へと飛びかかってくるゴブリン達、ちなみに手には短剣やら長剣やらを持っている。
お、終わった……まぁでもこいつ(聖剣)ならどうにかできちゃうのかな。
「一斉に飛びかかってくるとは、無策なケモノよな、固有スキル”カノープス”」
『ザクッ』
俺(聖剣)はそう言うと地面に聖剣をブッ刺した。
「カノープスよ、地脈を揺らし大地の牙を示せ」
『ズバァン』
そうして地面から巨大な4つの溶岩の刃が顔を出す。
『な、何だこれは!』
『チャーリー、これは一体どういう事だ』
『わからねぇよジョニー』
『ギュオッ』
そうして溶岩の刃は空に舞うゴブリン達へと襲いかかっていく。
お前そんな事もできんのかよ。
「ふははは、まだまだ全盛期の三分の一ほどよ、本来ならここら一帯を火の海にだってできるさね」
ここら一帯って、この森丸ごとってことか?
「左様、なんせこの俺(聖剣)はその昔、天地をひっくり返すほどの大戦を勝利に導いた英雄の剣なのだからな」
『カチャッ』
そう言って俺(聖剣)は、持っていた聖剣を肩に乗せる。
「あのぉ、すみませーん」
その様子を見ていた若い娘が恐る恐る俺にそう話しかけてきた。
「どうした娘よ?」
「い、いえですね、そのぉ勘違いだったらすみません、もしかして貴方はメイナード?」
何だこの娘、俺の名前を知っているのか?
でもこんな子知らないけどなぁ。
「いかにも私の名前は大英雄メイナードだが?」
おい馬鹿野郎!何変な二つ名つけてんだよ。
「カッコいいだろ?」
カッコよくねぇよ!
「うーん、やっぱりメイナードか、ほら私だよ昔よく遊んでたニーナだよ!」
そう言って娘は自身の銀色に輝く髪の毛をくるっと揺らした。
ニーナだと、もしかして10年前に辺境に行った幼馴染のニーナ・ルナールか。
懐かしいなぁ。
「知らんなお前なんぞ」
おいアホ聖剣、この子は俺の友達だ!
もっと言葉選びを気をつけろよ。
「何だとこいつはお前の知り合いだったのか、それはすまん事をしたな」
『ペコッ』
そう言って頭を下げる俺(聖剣)。
あー最悪だよ、口調といい態度といい、恥ずかしすぎる。
でもどうしてここにニーナがいるのだろうか。
「ははは、なんかメイナード変わったね、でも貴方のお父さんから色々話は聞いてるから、会えて良かったよ」
「なんと俺の父上と知り合いなのか?」
「えーっと私ってよりは、私のお父さん……ステイガード団長かな?」
「ほう」
ちょっと待て、ステイガードってニーナのお父さんの名前だったのか!
全然気がつかなった……。
つか聖剣の野郎、早く身体を返せよな。




