表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才錬金術師の正体は影武者の私でした 〜私を捨てた姉の薬が効かなくなった頃、呪われた辺境伯様は私だけに懐きます〜  作者: P作
第2章「辺境の竈に火を入れる」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/65

第7話 痩せた土地の理由

弟の熱が下がった翌日から、私の評判は、奇妙な速さで村を駆け抜けた。


「館の奥方様が、ただで子どもの熱を診てくれた」。それだけのことが、この土地ではよほど珍しかったらしい。朝、工房の戸を開けると、痩せた村人が数人、おずおずと列をなして立っていた。咳の止まらない老人。膿んだ傷の猟師。乳の出ない母親。


順番に診て、ありあわせの薬を組む。礼にと差し出されるのは、卵が一つ、干した木の実がひと握り。それで構わない。むしろ、その卵一つを差し出す手の、節くれだった痩せ方のほうが、私には気がかりだった。


(みんな、根っこのところで、栄養が足りていない)


風邪も、傷の治りの悪さも、乳の出ない体も、もとを辿れば同じ場所に行き着く。この土地が、痩せている。


だが――おかしいのだ。


ヴェルンフェルトの土を、この数日、何度も指先で確かめていた。痩せてはいる。けれど、死んではいない。本来なら、麦の一つくらい育つはずの土だ。それが、ここ数年で急に、実らなくなったという。


「ねえ、ゴットフリート」その夜、家令に尋ねた。

「この土地の不作は、いつから?」


「三年ほど前から、急に、で」老人は記憶を辿った。

「それまでは、貧しいなりに、麦も豆も穫れておりました。それが、ある年を境に。井戸の、水が変わってから」


「井戸の水が」


ちりっと、舌の奥が痺れた感覚を思い出す。村へ続く道の、あの古い井戸。


「水が、どう変わったの」


「味が、です。少し苦くなった、と。気のせいだろうと、皆そのまま飲み続けて――その頃から、畑が枯れ、家畜が痩せ、人も病みがちに」


私は、立ち上がっていた。


「その井戸へ、案内してください。今すぐ」


これは、当主の呪いとは別の話だ。もっと単純で――もっと、人の手の匂いがする。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

続きが気になったら、評価とブックマークで応援いただけると執筆の励みになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ