表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才錬金術師の正体は影武者の私でした 〜私を捨てた姉の薬が効かなくなった頃、呪われた辺境伯様は私だけに懐きます〜  作者: P作


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/32

第27話 姉の最後の罠

公開検証は、夜半まで決着がつかぬまま、いったん休会とされた。


姉の薬が効かず、私の薬が効いた。それは、広間の誰もが見た。けれど――「天才ヴィオラ」の名は、長く王都を支えてきた看板だ。それを、一日で覆すことを、宰相は許さなかった。「検証は明日、改めて」と。時間を稼いだのだ。


その夜、私たちに割り当てられたのは、王宮の客間だった。


私は、いつものように、ディートハルトの呪いを抑える薬を組んでいた。長旅と、広間での緊張で、彼の呪いは、いつもより深く疼いていた。


素材は、自前の道具入れのものを使う。けれど、足りない分の数種と、煮出しに使う湯だけは、王宮の従者が運んできたものを使うほかなかった。客間に、井戸も竈もないのだから。――その、わずかな隙が、命取りになるとは。


「……少し、休んでください」薬を渡し、私は言った。

「明日が、本番です」


ディートハルトが、頷いて器を呷る。


その時だった。


彼の喉が、ぐっと、鳴った。


いつもなら、すぐにほどけるはずの肩が――逆に、強く、強張っていく。顔から、血の気が引いていく。額に脂汗。


「ディートハルト様!?」


私は、血の気が引いた。違う。これは、呪いの発作じゃない。私の薬が、こんな反応を起こすはずがない。


薬の器を、ひったくるように嗅いだ。それから、調合に使った素材と、湯の残りを。


――砒石。それに、何か、別の。神経を昂らせ、呪いの巡りを暴走させる、毒。


湯だ。王宮が運ばせた、あの湯。それに、補充させた素材の一つも、すり替えられていた。私が“声”で気づけぬほど巧妙に、ごく薄く。だから、私が自分の手で組んだ薬が、そのまま、毒になった。


(素材のすり替え……いつもの、あの手口)


私が姉に気を取られ、王宮の用意したものに頼らざるを得なかった、この一夜を、狙って。


「人を……っ、誰か!」


崩れ落ちるディートハルトを、私は必死で抱き留めた。広い背中が、痙攣している。呪いと毒が、彼の体の中で、混じり合い、暴れ狂っている。


廊下の向こうで、誰かの足音が、遠ざかっていくのが聞こえた。


仕組まれていた。――姉一人の浅知恵じゃない。素材を、王宮の奥で、すり替えられる者。これは、もっと上から、降りてきた手だ。


(させない)


私は、震える指を、ぐっと握りしめた。泣いている暇は、ない。

この人を、殺させはしない。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

続きが気になったら、評価とブックマークで応援いただけると執筆の励みになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ