第22話 ともに王都へ
「ならば、私も行く」
ディートハルトが、そう言い出したのは、出立の前夜だった。
「何を、おっしゃるんです」私は驚いた。
「あなたは、呪いを抱えた体です。王都までの長旅は、無理が――」
「お前の薬がある」彼は、平然と言った。
「毎日、お前が組んでくれるのだろう。なら、問題ない」
「そういうことでは……」
「クロエ」彼は、私の言葉を遮った。その目は、いつになく、強い光を宿していた。
「お前は、私の領地を救った。村の子らを救った。何年も伏せっていた私を、外へ連れ出した。――その恩人を、たった一人で、狼の檻へ送り出せると思うか」
胸の奥が、熱くなった。
「それに」彼は、ふと、声を和らげた。
「辺境伯が、妻の潔白を信じて同行する。それだけで、王宮の連中は、お前を“ただの薬師くずれ”とは、扱えなくなる。私の名は、こういう時のために、使うものだ」
理屈でも、私を守ろうとしてくれている。
私は、こみ上げるものを、ぐっと飲み込んだ。
「……ありがとう、ございます」
馬車は、翌朝、王都へ向けて発った。
辺境から王都へ。かつて私が、捨てられて下ってきた道を、今度は、自分の足で証明しに、上っていく。あの時は、ひとりだった。けれど今は、隣に、私を信じてくれる人がいる。
道中、私は、ずっと考えていた。
王都に着く前に、彼に、話さなければならないことがある。ずっと、伏せてきたこと。半分しか、渡してこなかった真実。
――私が、ただの薬師ではないこと。あの「天才ヴィオラの薬」を、ぜんぶ作っていたのが、私だということ。
それを話さずに王都の検証に臨めば、彼は、何も知らされぬまま、私の戦いに巻き込まれる。それは、フェアじゃない。
馬車が、王都まであと一日、という宿場に着いた夜。
私は、ついに、覚悟を決めた。
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