表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才錬金術師の正体は影武者の私でした 〜私を捨てた姉の薬が効かなくなった頃、呪われた辺境伯様は私だけに懐きます〜  作者: P作


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/32

第17話 本物の一服

工房ではなく、広間の片隅に、即席の調合台が据えられた。


衆人環視の中で、薬を組む。逃げ場のない、公開の勝負。けれど私は、不思議と落ち着いていた。むしろ、心が躍っていた。


だって――私がずっと、影でやってきたことを。今、ようやく、誰にも隠さず、白日のもとでやれるのだから。


ヴェルンフェルトで集めた素材を、台に並べる。月光草。荒れ地の鉱石。北の苔。どれも、王都の高級店には並ばない、辺境のありふれた素材だ。ファルクが、それを見て、せせら笑った。


「そんな、その辺の草で? 笑わせる」


私は答えず、手を動かした。


素材の声を、聴く。今日の月光草は、乾きが少し強い。なら、水を一滴多く。鉱石は、昨日より湿気を吸っている。なら、火を入れる前にひと擂り余分に。ディートハルトの今日の呪いの深さ。脈の速さ。顔色。――そのすべてを、舌と指が、勝手に計算していく。


広間は、咳ひとつ聞こえぬほど、静まり返っていた。


やがて、立ちのぼる湯気が、薬草の清らかな匂いを運ぶ。ファルクの献じた薬の、香料でごまかした甘ったるさとは、まるで違う。混じり気のない、本物の匂いだ。


居並ぶ家臣たちが、いつのまにか前のめりになり、固唾を呑んで、私の手元に見入っていた。


できあがった一服を、私は、ディートハルトに差し出した。


「どうぞ。いつものより、少しだけ、深く効くように組みました」


ディートハルトは、私の目を、まっすぐ見た。そして、迷いなく、それを呷った。


数瞬。


彼の強張っていた肩が、ふっと落ちる。呼吸が、深く、穏やかになる。何年も彼を苛んできた痛みが、目に見えて、引いていく。


ディートハルトは、ゆっくりと息を吐き、はっきりと、広間じゅうに聞こえる声で言った。


「……効く。ファルク殿の“最高傑作”とやらより、よほど、な」


広間が、ざわめいた。

ファルクの顔から、血の気が引いていく。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

続きが気になったら、評価とブックマークで応援いただけると執筆の励みになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ