366・“死都”に到着しましたが……
大迷宮を真っ直ぐ走り、光が射す出口に飛び込むと、外に出ました。
「ようやく、出られたね」
ナイジェルが肩で息をしながら、そう口にします。
「そうですね。それよりもナイジェル、疲れていないですか? 私達の走る速度に合わせるのは、きつかったのでは……」
「なんのこれしき。鍛えているからね。踏ん張りどころだってことは分かってるし、お荷物になりたくないよ」
そう言って、ナイジェルは腕を曲げて力こぶを作ります。
ナイジェル……本当に強い男ですね。
昔から神童と呼ばれていたのにも頷けます。
「おい、いちゃいちゃするのもいいが、今は“死都”だ──おそらく、あの門だろう」
別にいちゃいちゃしたつもりはありませんが……。
シキが溜め息を吐き、前方を指さします。
吹雪のせいで視界が悪いですが、そこには高い壁と大きな門が。
「本当に、“死都”に繋がっていたんですね」
築かれた壁と門は吹雪が当たってもびくともせず、そこに鎮座します。
とうとう目的の場所が目の前に迫り、自然と息を呑みます。
「早速入りましょう。門を──」
「待て」
門に向けて歩き出そうとする私を、シキが制止します。
「もしかしたら、罠が仕掛けられているかもしれぬ」
「考えすぎでは?」
「先ほど、まんまとヤツらに待ち伏せされたのにか? 小細工を弄しても我らを止められないが、万が一がある」
そう口にして、シキが門の方へ歩を進めます。
「まずは妾が行く。安全が確認出来たら貴様らを呼ぶから、それまでは待機していろ」
「ちょ、ちょっと、シキ──」
止めようとしますがシキはそれを意に介さず、力づくで門を押し開いて、中に入っていきました。
「もう……勝手なんですから。一人でなにかあったら、どうするおつもりですか」
「まあ、シキに任せておこうよ。未だに信じ難いけど、元魔王なんだっけ? いくら本来の力のほとんどを失ってしまっても、彼女ならなんとかしてくれるだろうから」
腰に手を当て溜め息を吐く私を、ナイジェルがニコニコと宥めます。
これでは、どちらが歳上か分からなくなりますね。
やがて、程なくしてシキが戻ってきます。
「どうでしたか?」
「…………」
問いかけてみますが、シキは神妙な顔つきで沈黙するだけ。
なにがあったんでしょうか?
「危険はなかった。だが……ここまでとは思っていなかった。ここから先は、貴様らの目で直接確かめるといい」
「……? 分かりました」
疑問に思いながらもナイジェルと共に、少し開いた門から街の中に足を踏み入れます。
「なっ……!」
目の前に飛び込んできた光景を見て、言葉を失います。
そこは──氷漬けになった、街の風景が広がっていたのですから。





