コンパニオン・ガールとフタマタ
昭和から平成へと時代が変わった年、大学生の僕は横浜万博の警備のバイトに応募する。この経験が自分の人生に大きな影響を与えるとは知らずに。第四話、コンパニオン・ガールとフタマタ
4月から6月まで僕は学校があり、週に一回か二回くらいしか24時間のバイトができなかったが、7月になり、再び週3回のペースでシフトにはいった。ところがこの7月下旬から8月は記録的な数の台風が日本を横断した。ほぼ毎週台風が上陸し、入場者数は予想から半減し、平日も休日もパビリオンは閑古鳥が鳴いていた。
パビリオンのコンパニオンや警備員は暇でよかったが、我々の24時間ゲートの警備は悲惨なことになった。この東口ゲートは高島埠頭の港のトラックと万博のトラックが通過するので常にゲートに立っていなければならない。通行書をチェックするために、台風で雨が降ろうが、強風が吹こうがゲートの外に立たなければいけない。レインコートは配られたが、夏で蒸れてたまらない。
「真っ直ぐ立ってられましぇーん」と結城さんはずぶ濡れになって言ってるし、
「俺、飛ばされるかと思った」と住吉さんも言っている。ひどい時はバケツの水を頭から一気にかけられるような雨が僕たちを襲うのだ。トラックの運転手は窓も開けず、窓越しに通行書を見せて、笑って通過していく。台風のテレビ中継で、レポーターが飛ばされそうになりながらレポートしているが、僕たちは24時間それに耐えていた。
でも、この悪天候が幸いしたのかは分からないが、僕と結城さんのナンパは絶好調となった。きっと、コンパニオン・ガールたちはパビリオンが暇だから何か刺激的なことが欲しかったのかもしれない。
結城さんは狙いの子をほぼ決めていた。ソバージュのポニーテールの子だ。いつもミニスカートで目立つ。夕方ついにその時が来た。
「おつかれさまでーす」と彼女が通り過ぎ、結城さんが「お疲れ様です」と返事。
その後、10メートルくらい彼女が足を進めた時、結城さんがダッシュで走り寄り、何か会話をした。1分くらいして結城さんが戻って、いつもの警備のポジションに立った。僕はゲート横の詰め所でそれを見ていたがすぐに外に出て、結城さんに聞いてみた。
「どうだった?」
「ふふ、今度ご飯行きませんかって聞いたらいいよって!よっし!」
「電話番号聞いたの?」
「いや、とりあえず明日の夜、待ち合わせした」
「名前は?」
「分からん。けど、明日、いろいろ聞く」とまあこんな感じで、結城さん、その後、デートし、ご飯を食べたのだ。そして、名前や電話番号を聞き出すのに成功したのである。
「名前は洋子ちゃんて言うんだ。すげー可愛いんだよ。年は二つ上の22だった。アメリカ・パビリオンでコンパニオンしてるんだつて」
「いいな、年上か!で、次はどうするの?」と僕は聞いた。
「今日の夜、10時に電話することにしてる。だから、ごめん、よる10時から1時間は抜けさせて、お願い!」
ゲートから見える電話ボックスが僕らの電話だ。結城さんは10時になるとテレフォン・カード持って電話ボックスに入る。それから彼は座ったり、立ったりして、受話器を頭と肩に挟んで話している。両手を上げ下げし、忙しそうに何やら話している。僕と住吉さんは呆れてそれを見ていた。でも、そんな結城さんの気持ちは電話で伝わったのだろうなと思った。
1時間すると受話器を置き、結城さんがぐったりとしてゲートにやってきた。
「ありがとうございました、これから2時間俺1人で、ゲート立つから、休憩して」
「で、どうだったんだよ?」と住吉さんが聞くと、
「今度、フィアットでドライブ行くことにした。こないだ、写真見せたら乗りたいって言ってたんだよね」と結城さんは僕が『写るんです』で撮ってあげた写真を自慢げのようにひらひらさせた。住吉さんは若いやつは勝手にしろという顔をしてた。
次は僕もと思い、気になる子に声をかけてみることにした。小柄で美人の子だ。断られたらかっこ悪いと思ったが、結城さんに負けられないと思っ、声をかけてみた。
「あ、お疲れ様です。あの、今度ご飯一緒に行きませんか?」
「え、これナンパ?」
「あ、いや、それは・・・」と無言になってしまった。そう来るとは想像してなかったが、
「いつ?」
「えっ」
「い、つ?」
「あ、えーと、明日の午後は暇ですけど」
「じゃあ、明日、バイト終わるの5時だから、それでよければ?」
「ほ、本当ですか?じゃ、明日、ここで待ってていいですか?」
「うん、じゃ明日の5時半くらいにここで待ち合わせでいい?」
「うん、お願いします」
「じゃ、お疲れ様です」
え、明日?本当か?彼女の姿が人混みに消えていった。すぐゲート前の警備に戻った。結城さんが近寄ってきた。
「どうだった?」
「明日、ご飯行くことになった」
「おー、すげーじゃん、どこのパビリオン?名前は?」
「聞いてない」
「ま、いいか!」
次の日の朝、彼女の出勤時に挨拶しようと思っていたのだが、彼女を見かけることはなかった。自分の休憩時間に出勤しちゃったのか?それとも今日は休みで、昨日の約束は嘘で、今日は空振りになるのかと心配した。昼に警備が終わると僕は崎陽軒の詰所で17時まで横になったがほとんど興奮して眠れなかった。本当に現れるかも半信半疑だった。
17時半に約束の場所で待っていると彼女が現れた。浮かれる気持ちを隠し、ご飯どこ行こうかと話しかけた。彼女はどこでもと言うから、ぼくがよく行くアウトドアという名のカフェバーに行った。そこはカウンターで2人が横に並んで座れる店でぼくのお気に入りだ。ぼくらはビールとピザを食べながら会話した。
彼女の名前は小林直子、3歳年上のフリータで、万博で、ある企業のパビリオンの受付をしていた。これまで高校の同級生と付き合ったことはあったが3歳年上は初めてだった。不思議と話は途切れず、お互いを紹介し、バイトの愚痴とかを言い合って、時間はあっという間に過ぎた。いつも思うことは女の子たちは楽しそうに僕の話を聞いてくれる。いや、直子さんは聞き上手だと思った。年上だからか?そして、何というか、時間を忘れさせてくれる。いつも思うが何度かデートするとそれも薄らいでいくのだが、キスをしたり、その先に進むと、また時を忘れるような時間がやってくる。僕たちは電話番号を交換し、次に会う約束をしてその日は別れた。声をかける勇気をくれた結城さんに感謝だ。
「よし、もっと声かけようぜ!」と結城さんが調子に乗って、言う。
「絶対ばれないし、うまくいけば二股、三股かけれるぜ!」
「はー?同じパビリオンの子たちだったらまずいでしょ」と僕は心配顔で言った。
「平気だよ、あとちょっとで万博おわりだぜ」
「おーめら、東口ゲートの警備員がナンパしてくるって評判なったら、クビだぜ」と住吉さんが言うが、
「消防活動するし、ダフ屋を退治するって評判いいはずですよ」と結城さんに迷いはない。
結城さんは住吉さんの助言を無視して、第二弾のナンパをしたのだ。いつも派手な服を着た背の高い子が次のターゲットだった。結城さんが声をかけ、少しして戻ってきた。
「最初無視していて、最後はごめんなさいって走っていったよ」
と今回はうまく行かなかったようだ。
「やっぱ、モテそうな子は高ピーでだめだな、ちょっと地味で真面目な子が狙いめだな」
と言って、第三弾のナンパをした。化粧の薄いかわいい子だ。派手ではない。驚いたことにデートの約束がとれたのだ。結城さんは洋子ちゃんのことなんかすっかり忘れて、次の子のデートでどこ行こうか考えだしていた。
僕は直子さんともっと仲良くなろうと考えていて、第二弾のナンパはせず直子さんに電話をした。夜10時、ゲート近くの電話ボックスで。いつも女の子の家に電話する時、親が出ないでほしいと祈る。電話する時間を決めて親が出る前に出てと約束もする。それでも、なかなか出ないと、あー親が出るかもと緊張するのだ。直子さんは3コールで電話に出てほっとした。
出会ったばかりの女の子と話すと話題が尽きず、楽しい。高校3年から付き合っている彼女、久美とはこうはいかない。まぁ、会うと落ち着くし、エッチするのは楽しいのだが。
直子さんが映画が好きと分かって、今度映画を見に行くことにした。久美と見た映画と被っても知らな振りをしようと思った。直子さんとの電話は30分で切り上げ、久美にも電話した。台風の中の警備の話を僕はした。久美は夏休み中に旅行に行きたいと言うので、僕はバイト代が入るので、新島に行こうと言った。久美は喜んで、今度会う時に予定決めようと言って、次に会う日と時間を約束をした。うまく二股をしていこうと思った。鉢合わせさえしなければ絶対バレないと思った。そして、自分勝手とは分かってはいるが、久美には浮気してほしくないし、直子さんには彼氏いても不思議はないかなぁとも思った。
「大学生の兄ちゃんはその後うまくいってのかよ?」と住吉さんが聞く。
「えーと、こないだ映画行きました」
「けっ、大学生ってだけでモテるんだろう、言い身分だぜ」
藤井さんも「ふんふん」と同意しているようだ。
「住吉さんも声かけてみればいいのに」
「おれはそんなこと出来ねえよ、おまえらみたいにチャラくないんだよ、な、藤井さん?」
「ふんふん」
こんな会話をしている裏で僕は直子さんと次はどこに行って、どうやってエッチのチャンスを作るかを考えていた。そして、久美との新島旅行も楽しみにしている。結城さんの二股をよくやるよなんて言ってられないなとぼくは、ぼく自身のことを思った。
読んでいただき、ありがとうございます。毎週火曜日に続編を投稿する予定です。
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