第七章 最強の勇者
荒野。
轟音が響く。
勇者の聖剣が振り下ろされた。
巨大な斬撃。
大地が割れる。
山が吹き飛ぶ。
影虎と白虎が左右へ飛ぶ。
勇者は笑った。
「どうした!」
「その程度か!」
聖剣が再び閃く。
爆発。
衝撃波。
荒野が削られていく。
影虎の肩から血が飛んだ。
白虎の頬が裂ける。
勇者は笑う。
「そうだ!」
「これだ!」
「これが勇者の力だ!」
次々と放たれる斬撃。
影虎も白虎も避け続ける。
しかし完全には避けきれない。
傷が増えていく。
再び勇者が聖剣を構える。
影虎と白虎も刀を構えた。
荒野に風が吹く。
誰も動かない。
次の瞬間だった。
ドンッ――!
地面が爆発した。
勇者が消える。
影虎。
「速い!」
直後。
キィィィン!!
凄まじい金属音が響いた。
影虎の刀と聖剣が激突していた。
衝撃波が荒野を吹き飛ばす。
影虎の足元が大きく沈む。
勇者は笑った。
「もう終わりか?」
「期待はずれだな。」
聖剣が振り抜かれる。
巨大な斬撃が放たれた。
山を真っ二つにするほどの斬撃。
影虎は横へ飛ぶ。
斬撃は遥か彼方の山脈を切り裂いた。
白虎。
「ほう。」
勇者。
「避けたか。」
その背後。
白虎が現れる。
刀が閃く。
勇者は振り向きもせず聖剣を振った。
ガキィィン!!
白虎の身体が吹き飛ぶ。
数十メートル先で着地。
勇者は笑う。
「少しはやるみたいだな。」
白虎は口元の血を拭う。
そして笑った。
「面白い。」
勇者の眉が動く。
影虎も笑っていた。
勇者。
「何がおかしい。」
影虎。
「いや。」
「ようやく斬りがいのある相手に会えた。」
勇者。
「斬りがいだと?」
次の瞬間。
影虎と白虎が同時に消えた。
左右から迫る二つの斬撃。
勇者は聖剣を横に構える。
轟音。
火花。
大地が砕ける。
三人の姿が消えた。
見える者は誰もいない。
衝撃音だけが響く。
ガキン!
ガキン!
ガキィィィン!!
荒野が崩れる。
岩山が吹き飛ぶ。
空には裂け目のような斬撃跡が残る。
勇者は笑っていた。
影虎は口元を吊り上げた。
白虎も獰猛に笑う。
これほどの強敵と斬り結ぶのは久しぶりだった。
強者同士の戦い。
そこには恐怖も迷いもない。
あるのは殺意だけだった。
勇者が叫ぶ。
「いいぞ!」
「そうだ!」
「これだ!」
「これこそ戦いだ!」
勇者は確信した。
こいつらは強い。
だが、それでも俺には届かない。
なぜなら俺は――勇者だからだ。
勇者は笑った。
「ここまでだ。」
「今まで俺と戦えたことを誇るんだな。」
「俺を倒せる者など存在しない。」
聖剣が黄金に輝く。
「これが、勇者の力だ。」
膨大な魔力が解放される。
荒野全体が震えた。
影虎。
「来るぞ。」
白虎。
「ああ。」
勇者が聖剣を天へ掲げる。
空が光に包まれた。
そして――。
巨大な光の柱が落ちる。
世界そのものを焼き払うような一撃だった。
――続く。




