第五章 再会
村。
広場は大混乱だった。
「どうするんだ!?」
「魔王が変わっただけじゃないか!」
「いや、竜王も変わってるぞ!」
「前より悪化してないか!?」
村人たちが騒ぎ立てる。
村長は頭を抱えていた。
「そんな馬鹿な……。」
「勇者として召喚したんだぞ……。」
「なぜ魔王と竜王になっておるのだ……。」
その時だった。
一匹の伝書バットが再び飛んでくる。
村長は嫌な予感がした。
恐る恐る手紙を開く。
読む。
固まる。
村人。
「今度は何です?」
村長。
「両軍が……。」
村人。
「はい。」
村長。
「戦争を始めた……。」
村人。
「ですよねぇぇぇぇぇ!!」
村長。
(……終わった……。てかこれわしのせい?)
竜王軍領。
巨大な軍勢が集結していた。
何万という竜人。
飛竜。
魔獣。
その先頭に立つ影虎。
側近が頭を下げる。
「竜神様。」
「準備が整いました。」
影虎。
「そうか。」
側近。
「魔王軍を滅ぼしますか?」
影虎は少し考える。
そして答えた。
「そうだな。」
「まずは魔王軍を片付ける。」
「終わったら、お前たちは自分の故郷に帰れ。」
側近。
「は?」
影虎。
「行くぞ。」
それだけだった。
同じ頃。
魔王軍領。
魔族たちが整列していた。
こちらも大軍勢。
玉座から立ち上がった白虎が歩き出す。
幹部が尋ねる。
「魔王様。」
「なぜ今から竜王軍と戦うのですか?」
白虎。
「決着をつける。」
幹部。
「誰とです?」
白虎。
「影虎。」
幹部。
「影虎?」
白虎。
「俺の獲物だ。」
幹部たちは顔を見合わせた。
誰一人理解できない。
だが。
誰も逆らえない。
数時間後。
両軍は荒野で向かい合っていた。
竜王軍。
魔王軍。
数万の兵士。
数百の魔獣。
空を埋め尽くす飛竜。
大地を揺らす魔物。
その中央。
影虎と白虎が前へ出る。
久しぶりの再会だった。
影虎は笑う。
「やはりお前か。」
白虎も笑う。
「当然だ。」
影虎。
「お前まで魔王軍の長になっていたとはな。」
白虎。
「当たり前だ!」
「貴様こそ竜王軍の長をしているではないか!」
二人は少しだけ笑った。
そして。
同時に刀へ手をかける。
周囲の兵士たちは緊張した。
誰も動けない。
空気が張り詰める。
白虎。
「存分に楽しもうぞ!」
影虎。
「ああ。」
白虎。
「決着をつけよう。」
影虎。
「望むところだ。」
その瞬間。
両軍が歓声を上げる。
「行けぇぇぇ!」
「魔王様ぁぁぁ!」
「竜神様ぁぁぁ!」
戦争が始まる。
魔法が飛ぶ。
炎が上がる。
悲鳴が響く。
だが。
影虎と白虎は周囲を見ていなかった。
互いしか見ていない。
魔法が飛び交う。
飛竜が空を舞う。
魔獣が荒野を駆ける。
竜人と魔族が激突する。
そして――
一時間後。
荒野は静まり返っていた。
無数の兵士たちが倒れている。
魔族も。
竜人も。
飛竜も。
魔獣も。
気づけば戦場に立っている者は二人だけだった。
二人の足元には無数の屍。
つい先ほどまで、 影虎と白虎の斬撃だけが戦場を切り裂いていた。
影虎。
「やはり最後に残るのは俺たちのみか。」
白虎。
「そうだな。」
影虎。
「これで邪魔者はいない。」
白虎。
「ようやくだ。」
二人は刀を抜く。
そして踏み込もうとした。
その瞬間。
空が割れた。
轟音。
誰もが動きを止める。
巨大な光が降り注いだ。
そして。
一人の男が姿を現す。
白い鎧。
聖剣。
全身から溢れる圧倒的な魔力。
男は笑った。
「まさか。」
「ここまでやってくれるとはな。」
影虎。
「誰だ。」
白虎。
「知らんな。」
男は笑う。
「俺か?」
聖剣を肩に担ぐ。
「勇者だよ。」
荒野が静まり返った。
「勇者……?」
死んだはずの英雄。
世界を救うはずだった男。
その勇者が。
そこに立っていた。
勇者は満足そうに笑う。
「魔王軍も。」
「竜王軍も。」
「全滅じゃあないか。」
「感謝するぜ。」
「俺の計画通りだ。」
「いろいろと手間が省ける。」
影虎と白虎の表情が少しだけ変わった。
勇者は続ける。
「さて。」
「全部話してやるよ。」
不気味な笑みを浮かべながら。
――続く。




