第二章 新たな王
村長は深呼吸した。
そして語り始める。
「実は、この世界は魔王軍と竜王軍に支配されているのです。」
影虎と白虎は黙って聞いていた。
「かつて、勇者という存在がいたのですが、手を組んだ魔王と竜王に敗れてしまい、今は、この有り様であります。」
村長は荒れ果てた村を見回した。
草木は枯れ果てている。
畑には何も実っていない。
家々は崩れかけていた。
痩せ細った子供たちが不安そうに二人を見つめている。
「勇者を倒した魔王と竜王は今では敵対しており、毎日のようにその争いに我々は巻き込まれております。」
「死者もすでに何人も出ており、もう限界なのです。」
「小さい子供は腹を空かせ、それでも食べ物はない。」
「ですが、敵対している今こそがチャンスなのです。」
村長は拳を握った。
「そう思い、我々の一年分の魔力をつぎ込み、勇者召喚の術を使ったところ――あなた方二人が現れたのです。」
村人たちも頭を下げる。
「お願いします!」
「助けてください!」
村長も深々と頭を下げた。
「我々の魔術ではそう何度も使えるものではありません。」
「一度が限界です。」
「だから――」
「必死の思いで呼び寄せたあなたたちには、我々のために戦ってほしいのです。」
「というより、救っていただきたい!」
静寂。
村人たちは祈るような目で二人を見つめていた。
そして。
白虎は刀に手をかけた。
「話はすんだか。」
村長。
「え?」
白虎。
「よし、始めるぞ影虎。」
村長。
(あれ?)
(さっきまでの話聞いてなかったのかな……?)
影虎は首を横に振った。
「勝負はお預けだ。」
白虎。
「何?」
影虎は村人たちへ目を向ける。
「まずは、この者たちを助けてからでもよいだろう。」
村人たちが顔を上げる。
影虎。
「俺たちのもともとの仕事はなんだ。」
「世の悪を断ち、民を救うことだ。」
村長。
(やっぱり勇者様だ……!)
しかし。
影虎は口元を少しだけ緩めた。
「それに。」
「もっと面白いものを斬れるかもしれぬぞ?」
村長。
(やっぱり勇者様じゃない気もする……。)
白虎は笑った。
「確かにそうだな。」
そして村長を見る。
「竜王とやらの場所を案内してくれぬか?」
村長は慌てて山の方を指差した。
「あの山の奥に見える、あの大きな城が竜王軍の城です!」
白虎は頷く。
「そうか。」
影虎が首をかしげる。
「お前が行くのか?」
「当然だ。」
白虎は笑う。
「強そうだからな。」
影虎も苦笑した。
「そうか。」
「では、俺も行くとしよう。」
「……。」
そして白虎へ視線を向ける。
「お前も来るのだろう?」
「……二人仲良く行けってか?」
「行かぬのか?」
白虎は即答した。
「お前とは行動しない。」
影虎。
「そうか。」
「では俺一人で行く。」
村長。
「え?」
「ひ、一人で行かれるんですか?」
「二人で行った方が……。」
影虎。
「一人で十分だ。」
次の瞬間。
影虎の姿が消えた。
村人。
「き、消えた……。」
村長。
「本当に勇者なんだな……。」
すると白虎が口を開いた。
「なら俺は魔王軍とやらのところへ案内してもらおう。」
「どこだ?」
村長は反対側の山を指差す。
「あ、それは反対側の山奥に見える、あの大きな城です!」
白虎。
「ほう。」
そして歩き出す。
村長。
「ま、待ってください!」
白虎。
「なんだ。」
村長。
「できれば……世界を救う方向でお願いします……。」
白虎。
「知らん。」
村長。
「ですよねぇぇぇ……。」
そして白虎も姿を消した。
静寂。
風が吹く。
残された村人たちは不安そうに遠くを見つめていた。
村人。
「あの二人……大丈夫でしょうか……。」
村長も同じ気持ちだった。
だが、もう後戻りはできない。
「信じるしかあるまい……。」
「我々の一年分の魔力をつぎ込み、召喚した者たちなのだから……。」
「もう、任せるしかないだろう……。」
村長はそう言って空を見上げた。
(胃がいてぇ……。)
その時はまだ知らなかった。
数時間後。
自分が人生最大の後悔をすることになるとは――。




