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異世界少年と謎の物体と研究室の仲間たち〜森で拾った箱の向こうは現代日本でした〜  作者: gachapin2223


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第42話 正式なお尋ね

# 第42話 正式なお尋ね


村長の家の居間に、ノアとハンナ、そして村長の三人が座っていた。


机の上には、昨日の荷馬車が置いていった書状が広げられている。


「読み上げるぞ」


村長が、低い声で言った。


「『リント村における、先の疫病収束の経緯について、領主メルヴィン様が直接お聞きになりたいとのこと。ついては、当該薬師──ノア、および村の代表者一名を、来る満月の日までに、街の館へ出頭させること』」


読み終えて、村長が書状を、机の上にそっと置いた。


「出頭、というのは──」


ノアが、つぶやいた。


「呼び出しだ。断れる類のものじゃない」


村長の顔は、いつもより硬かった。


ハンナが、静かに口を開いた。


「時間を稼ぐことは、できないのかい」


「稼いだところで、来るものは来る。それに——これ以上遅らせれば、逆に怪しまれる。何か隠しているのか、と」


村長が、ノアを見た。


ノアは、膝の上で手を握った。


箱のことだけは、絶対に知られてはいけない。それだけは、はっきりしている。


「箱のことは、絶対に言いません」


「わかっている。誰も、それを疑っていない」


村長が、頷いた。


「お前は、薬師見習いだ。祖母から知識を継いだ、それだけの人間として行く。それ以外は──村長である私が、何とかする」


ハンナが、ノアの手に、自分の手を重ねた。


節くれだった、あたたかい手だった。


「母さんも、あんたも──ずっと、そうやって、この村を守ってきた」


「私も、いつも守られてばかりだよ」


ハンナが、小さく笑った。


「今度は、あんたが、その番だ」


◇


その夜、ノアは境の樹に向かった。


箱を開くと、クドウとミオの顔が、枠に映った。


ノアは、書状の内容を、順を追って伝えた。


話し終えると、しばらく、誰も何も言わなかった。


「そうか」


クドウが、先に口を開いた。


「外の世界が、動き出した。これは——もう、止められない流れだ」


「箱のことは、絶対に言いません」


ノアが、繰り返した。


「それは、わかってる」


クドウの声は、いつもよりずっと落ち着いていた。


「だが、お前一人でどうにかできる話でもない。相手は、領主だ」


ミオが、少し身を乗り出した。


「ノア、怖い?」


ノアは、少し迷ってから、答えた。


「怖い」


正直な言葉だった。


「でも──逃げても、解決しない」


ミオが、じっとノアを見つめた。


「うん」


「僕は、行きます。村長さんも、一緒に来てくれる」


「一人じゃないんだね」


「はい」


クドウが、腕を組んだ。


「向こうで何を聞かれても、迂闊なことは言うな。知らないことは知らないと言え。それだけ守れば、大抵のことはしのげる」


「わかりました」


ミオが、少し声を落とした。


「私たちは、ここからじゃ何もしてあげられない。それが、悔しい」


「ミオたちがいてくれるだけで──僕は、大丈夫です」


枠の向こうで、ミオが、目元を拭うような仕草をした。


◇


境の樹から村へ戻る道、ノアは、月を見上げながら歩いた。


満月まで、あと数日。


その日には、街へ向かわなければならない。


家に着くと、まだ灯りがついていた。村長が、外で待っていた。


「決めた」


村長が、短く言った。


「私が、お前と一緒に領主のもとへ行く」


-

第三部、始まります。


疫病を乗り越えた村に、今度は「外の世界」がやってきました。ノアにとって、村を出て街へ行くのは初めてのこと。次話から、村長と共に、初めての旅が始まります。



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