↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/24

第23話 総指揮官

孤児院の裏庭で泥底村の住人が整列している。魔力タンク制作のためにカイルが早朝からみんなを呼び集めたのだった。

「時は来た! 準備はいいか! みんな一列に並びなさい!」カイルは元気よく言った。

「ハイ!」リリィとテオは、ビシッと姿勢を正し、敬礼した。

「えぇ、何やってんだよ。とっとと作ろうぜカイル兄ちゃん」だらっとした姿勢でテッサクが言った。

「魔力タンクとかいうのを作るのに、なぜ号令が?」眼鏡をくぃっと上げながらハンスが言った。

「ねむい……」ラウタはあくびをしている。

「ハイハイ、早くやるわよ」エレナがいつもの調子で話し始めた。

「ラザロとガン爺、テオは、煉瓦でかまど作りと鍋の準備をしてください。ハンス、テッサク、ラウタはナル婆と一緒に蛇の皮を剝いで。私とリリィ、ロザ、ベルトは、薬草を整理しながら、皮の剥ぎ終わった蛇肉を細かく切ります」エレナがばっちりと指示をだした。

「ハーイ!」みんなが元気よく返事をした。

――俺の立場はいったい……

「ところで、カイル兄ちゃんは何するの?」テッサクが聞いた。

「兄ちゃんは、監督です。みんなに指示出しだね」

「何もしないってことですね」ハンスが言った。

「兄ちゃん、またサボりか~」ラウタが呼応した。

「兄ちゃんはな~、今回の計画の総指揮官なんだよ」

「計画があるのか兄ちゃん! よくわかんないけどすげぇな!」テッサクが目を輝かせて言った。

「新発明のお披露目と一緒に発表だ。楽しみにしとくように」


煉瓦を積み上げる酔っ払いたち、まともに動けてるのはテオだけだった。それにしても、テオは謎が多い。話は通じるし、指示するとしっかり働くこともできる。それなのに発する言葉は、いつも不思議な言葉になる。何か予知夢のようなものが見えているようだが、しっかりと説明して言葉にできないようだった。ふと、カイルは、二年前のことを思い出した。

ある日、突然、テオは、泥底村に現れた。

  「泥の底から手が伸びる~

   北の鴉が火をおこし~

   世界が歪む、世界は歪む~

   みんな~逃げろ~♪」

最初は、歌っているのか、話しているのか、さっぱりわからなかった。歌いながら話している、そう表現するのが正しいのかもしれない。

「こりゃ、魔素中毒の症状じゃな」テオを初めて見たガン爺が言った。

「ここら辺は、霧閻山脈から近い。昔から強い魔素に当てられて気が触れる人がいるんじゃ。おそらく、この男も高純度の魔石を求めて霧閻山脈に入ったのじゃろう」

行く当てのないテオは、そのまま孤児院の空き家に暮らすことになった。一緒に生活し始めて気付いたが、テオの言葉には、何か意味があった。

――一体テオに何があったのだろう。

カイルがテオをみて思い出していると、ガン爺が早くも、地べたに座って酒を飲み始めた。

「ガン爺、まだ飲むには早いですよ。今日は蛇肉パーティーですから、それまで、我慢してください」

「水くらい飲ましてくれぃ」

「しょうがないなぁ。って水じゃないし」一応、ツッコミをいれた。

「ところで、例のものはできてますか?」

「うん。おぅ、忘れとった」ガン爺はポケットから数枚の薄いプレートを取り出した。

「一応、膜の魔法は掛けといたが、何に使うんじゃ、こんなもの」

「それは、今日のパーティーのお楽しみです」カイルは、そう言ってプレートを受け取った。


「ヒヒヒ、こうして皮をむくんじゃ」ナル婆が手慣れた手つきで大蛇の皮を剥いでいく。やはり、悪い魔女にしか見えないとカイルは思った。

「うぅ……なんか気持ち悪いですね」ハンスは手が震えている。

「えぐれ、そう、刃をそのまま下げるのじゃ」

ピクッ、蛇が動いた。

「ヒィィ、動いた。いま動きました!」

「死んどるわ。頭がないじゃろ」

「でも、絶対動きました」

「筋じゃよ。筋を切ると動くんじゃ」ナル婆がガハハと笑った。

「うぉおお、動くぜ! ハンス兄ちゃん、ほら、動くぜ~!」テッサクはぴくぴく動く蛇肉をハンスに近づける。

「ほら」

「やめろ、やめてくれ~」

テッサクは、ハンスを追いかけまわした。

「できた! おもしろい」

「そっちは丁寧じゃな。皮は破れたら台無しじゃ」

「はーい」

ラウタは、また黙々と皮を伸ばし始めた。

――こいつ、一番働いているぞ。

ナル婆は、口は悪いが、子供たちの面倒見がいいとカイルは思った。


エレナたちは、順調に薬草を切り分け、皮をむいた蛇肉をベルトが切っていた。リリィとロザは切り分けながら話をしていた。

「ロザ、ガン爺がこのあいだね、わしの体は、九十九ぱーせんと、あるこーるでできているって言ってたの」

「そうだったのね。ガン爺の体はアルコールでできていたのね。今度、ガン爺に向かって火の魔法を使ってみましょう」

「どうなるの?」リリィが聞く。

「爆発するわ。ボンってね。ボンよ、ボン!」ロザは、両手の平を上に向けて爆発の仕草をした。

「すごーい! ボンするのね」リリィが笑顔になった。

「ロザさん、適当なこと教えないでください」エレナがツッコミを入れていた。

ロザは普段無口だが、子供の相手は、しっかりするようだ。

――言っている内容がすごいけど……

任せておいても大丈夫そうだな。カイルは、プレートをもって自分の部屋へ戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。