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第22話 闇ギルド

ストールは、ソファに座りなおした。少し笑みを浮かべ、カイルを見つめた。

「この銃は、まだ動きます。肩に当てる木盾も交換しました。魔法を使う我々には、見向きもされませんが、魔法を使いたくないときには、優れた武器となります」そう言ってストールは、少し間を置いた。

「もし、魔力を使えない人がいるなら、貴重な武器になりますね」ストールはそう言って、胸ポケットから、小瓶を取り出した。

「そして、この間、頂いたこのポーション。これも魔法を使えない人にとっては、非常に強力な回復薬となるでしょう」

ストールは、カイルの前に、ヴァルナスペシャルの空き瓶を置いた。

カイルは、何か試されているような気がした。この世界で魔力を使えない人は、そうそういない。カイルも自分以外に会ったことはなかった。

――なぜ、この人は、自分が魔力を使えないと知っているのか……

「すでに、調査済み、ということでしょうか?」

ストールは、笑顔になった。

「ええ、このポーションは、今、ルナフォールで話題の商品です。少し、調べさせて頂きました。ヴァルナスペシャルを売っている少年が、実は魔力を一切持たない孤児であることもね」ストールは、笑顔を崩さなかった。

「もし、よろしければ、こちらの商品と銃のような武器を我々と一緒に共同開発いたしませんか?」

――どうしよう。このままでいくと、商談になりそうだな……今の話し方だと、エレナが関わっていることは知らない気がする……

「この商品は、神の奇跡であるラザロの祈祷の力があってこそです。まずは、ラザロに相談してからになりますね。ラザロも悪い返事はしないと思います」

――うーん。この場は誤魔化したい。なにか話題を変えよう……

「ところで、ストールさんは、闇ギルドというのはご存じでしょうか?」

苦し紛れにカイルが質問した。すると、ストールの表情があっけにとられた顔に変化した。

「なぜ、闇ギルドの話を?」ストールは戸惑っている。

「ちょっと知り合いから紹介を受けたもので……その人は、困ったら闇ギルドへ来い、とか言ってたんですが、闇ギルドがどこにあるか教えてくれなかったんですよね。なんか抜けているというか……商人ギルドの方なら知っているかと思いまして」

「抜けている、困ったら来い……その方のお名前は?」ストールは明らかに動揺している。

「シャドムという人です」

「ま、まさか……」ストールは額に汗をかいている。

「自分のことを闇のプリンスとも言っていました」

さらにストールが目を見開き、驚きの表情になる。

「その方は、どのような容姿でしたか?」

「えっと、白紫の髪で白いマントとマスクを着けていました」カイルは腰のポーチの外ポケットから、シャドムから貰ったプレートをだした。

「カイル君は、ひょっとして私たちのことをご存じで?」

「はい?」カイルは何を言われているか分からなかった。

「間違いない。このプレートは、闇ギルド員の証です。シャドム様にお会いになったのですね。うらやましい……」

「うらやましい??」

「シャドム様のご意思とあっては、お話ししないといけませんね」ストールは急に改まった。

「私は、闇ギルドのメンバーです。どうぞ、こちらへお越しください」


カイルは、ストールに連れられ、地下の部屋へ入った。そこは倉庫のようで、樽と棚がたくさん置いてあった。ストールは一番奥にあった棚まで向かった。

「このことは、くれぐれもご内密にしてください」そう言い、棚に置いてあった袋をどかした。棚の隙間には、レバーが隠されていた。ストールはレバーを下げた。

棚の横が動き出し、隠し扉が開かれた。

「さぁ、こちらへ」

――今更、引き返せない。ついていこう。

隠し扉に入ると、壁についていた魔法のランプが灯った。中は広く、テーブルと椅子、沢山の武器が並べられていた。部屋の奥には、石の祭壇が作られていた。左右に紫のスフィアが飾られ、中央には怪しい像が置いてある。

――これは……間違いない。闇のプリンス像だ。

像はマントをたなびかせていた。片手を腰に当て、もう片方は、人差し指を天に向けていた。顔は斜め上を見上げている。天井から光が舞い込み、像を煌びやかに照らしていた。

――うーん。シャドムは、こんなポーズするのだろうか? そういえば、自己紹介のときに腕組みしてたな。似たようなもんか。

台座に、文字が彫られていた。

「闇を統べるもの 我らがプリンス その名はシャドム!!」

――うん。ダサい上に臭い。間違いない、あのシャドムだ……

「立派でしょう」ストールが言った。

「……はい。素晴らしいです」

「稀にこの像からシャドム様の声がするのです」

「声、ですか」

「はい。シャドム様は、この像を通して、我々に命令を与えます。私も一度だけ聞いたことがあります」

――何を言っているんだ? どういうことだろう?

「命令ですか……闇ギルドの仕事か何かでしょうか」

「いえ、シャドム様は、日常的な仕事の話はしません。来るべき時のための命令ですね」

「来るべき時……」

「我々は、暗殺、窃盗、工作、密輸など、お金さえ頂ければなんでも行っています。しかし、それは、資金調達の手段でしかありません。私たちの真の目的は、別にあります」

カイルは、以前ラザロが話していたことを思い出した。シャドムは魔族を連れてディスコルドと闘ったが、魔族に裏切られて敗北したと言っていた。

――なんだか、面倒な話になってきたな。早く逃げた方がよさそうな気が……

「ひょっとして、ディスコルドの討伐とかですか……」

「そこまでご存じでしたか、同志よ!」

――まずい、同志認定された。逃げよう。

「ストールさん、今日はもう帰らせてもらってもいいでしょうか。つい遅くなってしまいました。ラザロ達が心配します」

「そうですか。シャドム様のお話を聞きたかったですが、いずれまた、お話しできるときにしましょう」ストールは、少し残念そうだった。

「鍋と短剣は、商人ギルドの方から、孤児院へ届けさせます。銃のほうは、闇ギルドの同志として、お譲りしますね」

――やっぱり同志なのね。

カイルは、なんとか逃げ切り、無事、目的の品を手に入れることに成功した。


鍋と魔法の短剣は、翌日に孤児院に届いた。この対応の速さからすると、カイルはストールに完全に目をつけられてしまったようだ。

――俺は、あのうさん臭い組織のメンバーなんだろうか?

カイルの悩みは深まった。

――まあ、考えても仕方がない。

それより、エレナに説明しないといけないことがあった。

商人ギルドのお礼をカイルだけで使ってしまったので、闇ギルドの件を含めて昨晩エレナに事の経緯を話した。

「貸し一つね♪」エレナは、笑顔で言った。

――エレナ、それ誰に教わったの?



ズリズリズリ……小さい黒い影が、孤児院に向かって動いている。その黒い影のような物体には、目玉が二つ付いていた。

そこに、白猫が現れた。白猫の目が、一瞬、青く光った。

猫は、目玉の影を襲った。目玉は潰され、黒い影となった物体は、空気に溶けて霧散した。

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