第21話 銃
カイルは、鍋と魔法の短剣を求めてルナフォールへ向かった。もともと、鍋だけラザロに頼み、魔法の短剣は自分で探すつもりだった。しかし、ラザロがあの調子なので、両方カイルが探すことにした。
まずは、よろず屋のラッファのところへ向かった。
「ラッファさん、どんな魔法でもチャージできる短剣と……巨大な鍋ってあります?」
「うーん、今、短剣はないかな。たまにしか出ないからね、あれ。鍋も冒険用の鍋しかないよ」
「ですよね。魔法屋さんは高いし、どうしようかな?」カイルが考えているとラッファが助け船を出してくれた。
「そうだな。商人ギルドに行けば、いろいろ教えてもらえると思うけど、紹介しようか?」
――商人ギルド……そう言えば、当てがあるぞ。たしかお礼をくれるって言ってたような。
「なるほど。商人ギルドなら心当たりがあります。場所だけ教えてもらえませんか? もし、外れたら、ラッファさんの名前を出させてもらいますね」
カイルは、ラッファから商人ギルドの場所を聞いた。
商人ギルドは、王宮前のメイン通りから一つ外れた裏通りにあった。
木造の建物の入り口は、両引き戸で戸は開けられていた。左右には縦に並べた木格子。古さから趣があり、他のギルドと同じように壁から看板をぶら下げていた。天秤のマークだった。
――ここだな。
中に入り、カウンターに向かった。一人の獣人女性がカウンターにいた。
「いらっしゃいませ」
「すみません。ストールさんかグラスさんという方はおられますか」
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
「えっと、東の洞窟で……」
どう説明すればいいんだと考えていると、奥から人が出てきた。
「カイル君じゃないかい?」ストールだった。
ストールは、カイルを応接間に案内した。絨毯にソファとテーブル、その上には花瓶と花が置かれていた。四方を囲む棚には、高そうなツボやガラス蓋の付いた木の見せ箱。箱の中には魔法の剣や弓、魔石など沢山のものがあった。壁には絵なども飾られていた。
――すごいな。全部高価そうなものばかりだ。商人ギルドなのに、武器が多い気がするな……
カイルは、ソファに座った。正面の壁に、奇妙な黒い鉄の棒が立掛けられていた。よく見ると、下半分は肩に当てるためか、緩やかな傾斜を持った木盾に覆われていた。黒光りする鉄筒はそこからまっすぐに突き出ており、根元には指が掛かるほどの小さな鉄の爪のようなものが付いていた。
獣人の受付嬢がお茶を持ってきてくれた。
「今日は、来てくれてありがとう。カイル君。エレナさんは、今日一緒じゃないのかい?」
「エレナは、家にいます。買い出しのときは一緒にくるんですが、今日は一人です」
「町になにか用事でも?」
カイルは少し考えたが、率直に話すことにした。
「実は、大きい鍋と魔法をチャージできる短剣を探していました」
「大きい鍋?」ストールの目が少し開いた。
――治癒ポーションのことは言わないほうがいいか……
「ええ、村の近くで蛇の皮が大量に取れたので、自分用の革のバッグを作ってみたくて、それで、大きい鍋が必要なんです」
「そうですか……」ストールの目がまた元に戻った。
「そういう話でしたら、うちの商会から鍋をお貸ししましょうか? 魔法の短剣もあります。短剣については、お礼もかねてお譲りします」
「いいんですか。ありがとうございます」
――お礼が魔法の短剣と鍋か……もう少し何か粘ってみよう。
「あの、そこの壁に掛かっている鉄の棒はなんですか?」
「はい?」ストールは振り返った。
「ああ、これですか。これは、この地方では珍しいものなんですが、銃と言われるものです」
「じゅう?」
「ええ、これは、魔法の短剣とか、そう言った魔道具とは別のものです。昔、北の大陸の貴族の間で、魔法を使わずに狩りをするゲームがありました。この銃を使って、狩りを競うのです」
「狩りですか」
「はい。これは、火炎キノコの胞子を使って動くものです。小さい鉄の玉と胞子を入れて、着火石で飛ばす仕組みです。威力も高く、殺傷能力がありますので危険です」
――殺傷能力! 物騒だな。というか、爆轟竹と似ている……
「でも、今は使っている人は、ほとんどいません」
「なぜですか?」
「もともと、この銃というものは、西北の大陸のドワーフ族が作っていたものです。西北の大陸の運搬手段がなくなり、技術を受け継いでいた北の職人たちも今はいないようです。これも百年前くらいに北の大陸の職人が作ったものです」
「西北の運搬手段がないのは、なぜですか?」
「知りませんか? まだお若いですものね」ストールは立ち上がり、銃に近づきながら話を続けた。
「西北の地は、千年前からいけなくなっています」
「ええ、そうなんですか?」
「千年前のディスコルドとの戦いのあと、西北大陸では二つの呪いが確認されました。一つは、ここから陸続きの霧閻山脈です。呪いで魔素が強くなり、誰も山を越えられなくなりました。もう一つは海路です。西北の大陸の周りは、こちらも呪いにより、強烈な嵐が吹き荒れるため、誰も海を渡れなくなっています」
「そうなんですか。霧閻山脈は知っていますが、海については、知りませんでした」
銃を見ていたストールは、振り返って言った。
「この銃が、気になりますか?」




