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第13話 カラス

「シャドム。子供たちを困らせてはだめよ」やさしい女性の声でカラスが話した。

――カラスがしゃべった!

「シルフィアか、久しぶりだな。邪魔するつもりか。やっと見つけたカギだぞ」

「まだその子たちは子供よ。時期を待ちなさい」

シャドムは、カイルがエレナの手を握っているのを見た。

「ああ、わかってるよ。こっちにもまだ時間が必要だ」

「あなたたち、ごめんなさいね」優しい声だった。

「でも、これだけは伝えておくわ。ディスコルドに気付かれたみたいなの」

「ディスコルドって、あの魔王のことですか?」

カラスは答えなかった。

「その女の子の力が狙われているの。在り処まではまだ知られていない。気を付けなさい」

「私の力を知っているんですか?」エレナが聞いた。

「ええ、知っているわ。あなた達の故郷もね」

――あなたたち?

カイルは戸惑った。

「いずれゆっくりお話ししたいわ」カラスが言った。

「そうですか、わかりました。でも、どうやって連絡をとればいいのですか」エレナが聞いた。

「このカラスは、私の使い魔です。カラスを使って、こちらから連絡をするわ」

「シャドム、この子たち安全な場所に送ってあげて。お願いね」

「あの、ひとつお願いしてもいいですか?」エレナが言った。

「なに?」

「手前の部屋にある二人の遺体を、正面の入り口まで運んでほしいんです」

「やさしい子ね……わかったわ。シャドム、それもお願い」

「なんだよ、俺は小間使いじゃないんだがな……やっておくよ」

「それとシャドム。その魔石は危険だわ。ルナフォールに出回っているものを回収してね」

「そうだな……俺のほうで何とかしよう」

カラスは、羽を広げ洞窟の中を飛び去った。


月の聖域――湖に浮かぶ神殿。水晶を覗く女性がいた。黒い衣。長い髪。

「ばかね」

水晶から光が消えた。


カイルは散らばっている黒い魔石を拾っていた。

「その魔石、持って帰るのか?」シャドムが言った

「はい。もったいないですから」

「さっきの話聞いてなかったか?」

「聞いてました。たぶん危険なのは、細かい光を発するもののことですよね。この魔石からは怪しい雰囲気はしません」

カイルは、適当なことを言ってみた。

――魔力ないから、全然わかんないけど。

「間違ってはいないな。それで、持って帰るのか?」

――むむ、しつこいぞ、シャドム……

「はい。こんな高魔素の魔石は多くはないですから」

「うーん。好きにしろ」

――よっしゃ~。

カイルは数個の黒魔石を手に入れた。

 

シャドムは裏口まで送ってくれた。

外に出ると、日が傾いていた。思ったより、長くいたらしい。

カイルは懐から龍脈盤を取り出して、蓋を開けた。

針が、ゆっくりと回って——止まった。緑の刻みが、光っている。

「……壊れてなかった」

「え?」

「いや。中で、変な動きしてたから」

カイルは蓋を閉じた。かちり、と音がした。壊れていたのは、道具ではなかった。


「大将~、居ますか~」カイルは沼に向かって叫んだ。

ブクブク、沼はゆっくりと隆起し始めた。

「わしはナマズ大将。わしをよぶのはだれだ……こぶんたち、もどってきた」

――誰にでも反応するのか? 大将。

「しゃどむ。なぜいる? わし、お前きらい」

「ナマズ、久しぶりだな。俺もお前が嫌いだ」

「おまえは乗せない、どうせ、しるふぃあさまにちょっかいだしてる」

「ケッ、俺も乗りたくねぇよ」

――知り合いだったのか。シャドム、来るとき俺の影に潜んでたんだな。シルフィアさんも知っているのか? 謎が多すぎる。

「お前ら、俺はここで分かれるぜ。遺体運びもあるしな」

「助けていただいて、ありがとうございます」エレナが丁寧にお辞儀をした。

「いいってことよ。俺は闇のプリンス様だからな」

――ダサい……どうやってシャドムにわからせようか。

「俺に会いたかったら、闇ギルドまで連絡しろ。じゃあな」

そういって、シャドムは、指からコインのようなものを弾いて飛ばした。カイルがキャッチして確認すると、ドクロの上に二本の鎌が交差した絵が描いてあるプレートだった。

――闇ギルド? どうやって連絡するんだよ。


ナマズ大将は、泥底村まで送ってくれた。

エレナは、帰り道でほとんど喋らなかった。

大ナマズをみたラザロは、腰を抜かした。

はじめての冒険はこうして終わった。

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