第3話 レッドノイズ
レッドノイズメンバー
【名前】ヤマガ
レッドノイズの特攻隊長。
カイの喧嘩仲間。
【外見】
大柄で筋肉質。赤いバンダナを巻いている。短髪。顔や腕に喧嘩傷が多い。
いつもニヤニヤしているが、怒ると目が据わる。
【性格】
単純。豪快。
喧嘩が好き。
難しいことは苦手だが、仲間への情は深い。
カイのことをリーダーとして心から信頼している。「カイが行くなら行く」というタイプ。
【口癖】
「最高にバカだな」
「殴れば分かるだろ」
「俺が前に出る」
【名前】ナナ
レッドノイズの情報屋。
違法ネット、監視カメラ改ざん、都市システムの抜け穴探しを担当。
【外見】
短い黒髪、または青みがかった髪。
細身で身軽。片耳に古い通信端末をつけている。目つきは鋭く、いつも何かを疑っている。
【性格】
冷静。皮肉屋。
感情的なカイやヤマガに呆れている。
だが、なんだかんだで最後まで付き合う。
口では「死んでも知らない」と言うが、誰よりも仲間の生存率を計算している。
【口癖】
「それ、死亡率高いけど」
「馬鹿なの?」
【名前】ケイゴ
レッドノイズの整備担当。
違法改造バイクとアナログ機械の天才。
【外見】
小柄で細身。油で汚れた作業着。
ゴーグルを頭に乗せている。髪はぼさぼさ。いつも工具を持っている。
【性格】
人と話すのは苦手。
機械と話す方が得意。合理的だが、AIは嫌い。その理由は、AIが管理する機械は「正しすぎてつまらない」から。
古いエンジン、手動制御、壊れやすい部品を愛している。
【口癖】
「それは無理。たぶん」
「機械に根性はない」
「でも、改造すれば何とかなる」
その夜。
ネオ東京に、人工の雨が降っていた。
ガイア・マザーが大気中の微粒子濃度を計算し、午後十一時三十分から午前一時まで降らせると決めた雨だった。
雨量も。
風向きも。
気温も。
すべてが管理されている。
街路樹の葉に落ちる水滴の量すら、都市環境維持プログラムの計算通りだった。
だが、その雨の中を走る五台のバイクだけは、計算から外れていた。
湾岸高架。
赤いテールランプ。
濡れたアスファルト。
警告灯。
遠くで光るネオ東京の摩天楼。
そして、前方に広がる暗黒の封鎖区域。
カイは赤い違法改造バイクにまたがり、アクセルを握っていた。
背後では、レンの青いバイクが雨を切って走る。
ヤマガの重装バイクが地鳴りのような音を立て、ナナの黒い軽量バイクが蛇のように車線を縫う。
最後尾では、ケイゴの小型バイクが工具箱をガタガタ鳴らしながらついてきていた。
無線にナナの声が入る。
「監視カメラの誤作動、残り二分」
ケイゴが続ける。
「ゲート突破用の電磁パルスは一発だけ。失敗したら、全員そこで終わり」
ケイゴが叫ぶ。
「電磁パルス、準備完了。でもロックが旧型じゃない。半分くらいしか開かないかも」
ヤマガが笑う。
「いいねぇ。失敗したら終わりって響き、燃えるぜ」
レンが低く言った。
「燃えるな。普通に怖がれ」
カイは笑った。
「怖がって止まるくらいなら、最初からFランクなんかやってねぇよ」
「Fランクは職業診断の結果であって、生き方じゃない」
「俺にとっては、もうチーム名みたいなもんだ」
レンはため息をついた。
「本当に、最悪のリーダーだよ」
だが、その声はどこか楽しそうだった。
前方に、巨大な遮断ゲートが見えてきた。
旧東京封鎖区域。
かつて東京だった場所。
2050年の新型爆弾によって消滅し、国家が地図から消した死の領域。
ゲートには、赤い警告文字が浮かんでいた。
【旧東京区域】
【永久封鎖】
【無許可侵入者は救助対象外】
【引き返してください】
カイはその文字を見て、鼻で笑った。
「救助対象外だってよ」
レンが言う。
「つまり、死んでも誰も助けに来ない」
「最高じゃねぇか。これで誰にも邪魔されねぇ」
「そういう意味じゃない!」
ナナが割り込む。
「カイ、無駄話してる時間ない。監視網復帰まで一分」
ヤマガが吠える。
「半分開けば十分だ!」
カイは前傾姿勢になる。
雨粒が顔を叩く。
心臓がうるさい。
恐怖はある。
だが、それ以上に胸が震えていた。
ここから先は、AIの管理区域ではない。
就職診断もない。
社会貢献期待値もない。
危険分子レベルもない。
誰も帰ってこなかった道。
つまり、誰もまだ見たことのない世界だった。
カイは無線に向かって叫んだ。
「レッドノイズ!」
全員がアクセルを握る。
「この街に、俺たちの音を聞かせてやれ!」
ケイゴがスイッチを押した。
青白い電磁波が雨の中を走る。
ゲートの警告灯が一瞬、乱れた。
【異常発生】
【異常発生】
【ロック機構再起動中】
巨大な遮断ゲートが、ほんのわずかに開く。
人ひとりなら通れる。
バイクなら、無理やり通れるかもしれない。
カイは叫んだ。
「突っ込めぇぇぇぇ!!」
五台のバイクが、雨を切り裂いてゲートへ突入した。




