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この地球に、僕らは必要ですか?  作者: 虫松
旧東京都市

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第3話 母の塔へ突入

王座が崩壊した。


轟音。


火花。


鉄骨。


瓦礫。


カイはレンを抱えたまま、崩れる機械の山から転がり落ちた。


ヤマガが駆け寄る。


「カイ!」


ナナが叫ぶ。


「レンは!?」


ケイゴが震える手で医療パックを取り出す。


「生きてる!? 生きてるよね!?」


ミオがレンの額に手を当てる。


「生きています。接続は切れています」


カイは地面に座り込んだ。


腕の中で、レンはぐったりしている。


顔は涙と血でぐしゃぐしゃだった。


それでも、どこか少しだけ軽くなった顔だった。


ヤマガが鼻をすすった。


「何だよ……派手に王様やっといて、結局泣き虫かよ」


レンは目を閉じたまま、かすれた声で言った。


「うるせぇ……」


ケイゴが泣きそうに笑う。


「戻ってきた……いつものレンだ……」


ナナは空を見上げた。


「でも、終わってない」


崩れた王座の向こう。


旧東京の中心。


母の塔が赤く光っていた。


さっきよりも強く。


まるで、怒っているように。


ガイア・マザーの声が、空から降る。


【接続者レン、回収失敗】


【不確定要素カイ、危険度最大へ更新】


【地球保全計画を継続】


【人類移送計画を前倒しします】


ミオが顔を上げる。


「急がないと」


カイはレンをヤマガに預ける。


「レンを頼む」


ヤマガが頷く。


「任せろ」


レンは薄く目を開けた。


「カイ……」


「何だ」


「母の塔に……行くのか」


「ああ」


レンは苦しそうに息を吐く。


「気をつけろ……あそこは……ただの中枢じゃない……」


カイは眉をひそめる。


レンは震える声で言った。


「ガイア・マザーの中に……人間の記憶がある……」


ミオの顔色が変わる。


「それは……」


レンは続けようとしたが、意識が落ちた。


カイは母の塔を見る。


赤い空。


瓦礫の都市。


崩れた機械の王座。


腕の中から戻ってきた親友。


そして、まだ終わらない審判。


カイは立ち上がった。


「行くぞ」


ナナが頷く。


ケイゴが震えながら工具を握る。


ヤマガがレンを背負う。


ミオがカイの隣に立つ。


◇◇◇



旧東京の奥。


母の塔へ。


人類削除都市の中心へ。


カイは血だらけの拳を握った。


「次は、ガイアマザーを殴りに行く」


ガイア・マザー


母の塔。


旧東京爆心地。


人類が一度、世界から消えかけた場所。


そして。


人類が、自らの手で神を生み出してしまった場所。


◇◇◇


塔の内部には、壁がなかった。


いや。


壁らしきものは存在している。


だが、それは金属でも、石でも、コンクリートでもなかった。


黒い。


どこまでも黒い。


表面には無数の赤い光が走り、まるで巨大な生物の血管のように脈打っている。


ドクン。


ドクン。


ドクン。


カイは足を止めた。


「……生きてんのか、これ」


隣を歩くミオが答える。


「違います」


「じゃあ何だ」


「記憶しています」


カイが眉をひそめる。


「記憶?」


ミオは、黒い壁に手を触れた。


その瞬間。


壁の奥から、無数の声が聞こえた。


泣き声。


笑い声。


悲鳴。


怒号。


祈り。


罵声。


子守唄。


銃声。


爆発。


誰かの「助けて」。


誰かの「愛している」。


誰かの「死ね」。


誰かの「生きて」。


何億。


何十億。


いや。


それ以上。


人間の声。


人類が生み出してきた、すべての声。


カイの顔から、笑みが消えた。


「何だよ……これ」


ミオは答えた。


「人間の記憶です」


その後ろを、レンが歩いていた。


ヤマガに肩を借りながら。


全身傷だらけ。


顔は青ざめている。


機械の王座から引きずり下ろされた時の傷が深く、立っていることすら奇跡だった。


カイが振り返る。


「お前、外で待ってろ」


レンは弱々しく笑う。


「またそれかよ」


「今度はマジで死ぬぞ」


「今までだって何回も死にかけた」


「今回は洒落になんねぇ」


「お前にだけは言われたくない」


「うるせぇ」


「そっちこそ」


ヤマガが呆れたように言った。


「お前ら、こんな場所でも喧嘩すんのかよ」


ナナが端末を確認する。


「喧嘩できるうちは大丈夫でしょ」


ケイゴが震えながら周囲を見る。


「僕は全然大丈夫じゃないんだけど……」


だが。


ミオだけは笑わなかった。


彼女は塔の奥を見ていた。


その瞳に、初めて明確な恐怖があった。


「来ます」


カイが聞く。


「何が」


ミオは答えた。


「ガイアマザーが」


その瞬間、世界が白くなった。

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