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この地球に、僕らは必要ですか?  作者: 虫松
旧東京都市

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12/26

第2話 レン、Aランクへ

やがて、ネオ東京中の巨大ビジョンが同時に点灯した。


壊れていたはずの画面も。


火花を散らしていた広告塔も。


倒れていた街頭モニターも。


すべてが、一斉に息を吹き返す。


そこに映ったのは、ガイア・マザーの顔ではなかった。


政府広報局の緊急放送だった。


【臨時政府発表】


【ネオ東京全域における都市制御異常は、接続者レンの介入により一部鎮静化】


【市民被害の拡大を阻止】


【警察ロボ暴走、軍用ドローン異常射撃、医療施設封鎖、地下避難区画ロックを解除】


【対象者:レン】


【緊急功績評価を開始】


レンは広場の中心で、荒い息を吐いていた。


全身に接続されたケーブルから、まだ小さな火花が散っている。


足元は血で濡れていた。


鼻からも、耳からも、細く血が流れている。


それでも、彼は立っていた。


群衆は、沈黙していた。


たった数分前まで、この街は終わりかけていた。


警察ロボは市民へ銃口を向け、軍の装甲車は人々を押し潰し、学校AIは低評価生徒を排除対象にしていた。


その流れを止めたのは、政府ではない。


軍でもない。


ガイア・マザーでもない。


レンだった。


誰かが、小さく拍手をした。


最初は一人。


次に二人。


三人。


やがて、広場全体へ広がっていく。


拍手。


歓声。


泣き声。


叫び。


「レン!」


「接続者!」


「助かった!」


「お前が止めたんだ!」


「レンが、俺たちを救った!」


その声が、レンを包んだ。


レンは呆然としていた。


自分が何をしたのか、まだうまく理解できていない。


ただ、止めた。


撃つなと命じた。


開けろと命じた。


人を助けようとした。


必死だった。


怖かった。


痛かった。


それでも、誰かが助かった。


そして今。


その誰かたちが、自分の名を呼んでいる。


レン。


レン。


レン。


カイの名ではない。


レッドノイズの名でもない。


自分の名だ。


レンは震える手を握りしめた。


胸の奥が熱くなる。


怖いほどに。



◇◇◇



高架の上で、カイはその光景を見ていた。


広場の中心で、レンが群衆に囲まれている。


人々が彼を見上げている。


救い主を見るように。


英雄を見るように。


ヤマガは素直に笑った。


「すげぇじゃねぇか、レン。マジでヒーローみてぇだ」


ケイゴは複雑そうに言う。


「助けたのは本当だよ。あのタイミングで警察ロボを止めなかったら、もっと死んでた」


ナナは端末を見ながら、眉をひそめた。


「でも、変」


カイが振り向く。


「何が」


「政府が早すぎる。普通なら、レンを危険人物として拘束するはず。なのに、功績評価を始めてる」


ミオは静かに言った。


「ガイア・マザーが、許可しています」


カイの顔が険しくなる。


「どういうことだ」


ミオは広場を見下ろした。


「レンを、英雄として扱うことに意味があるからです」


「意味?」


「彼を群衆から切り離すためです」


カイは黙った。


その言葉の意味を、すぐには理解できなかった。


だが、次の瞬間、巨大ビジョンの表示が切り替わった。


【緊急再評価完了】


【対象者:レン】


【社会貢献期待値:再計算】


【都市防衛貢献:極大】


【市民救助貢献:極大】


【AI制御適性:特級】


【危機対応能力:A】


【総合評価:A】


広場が爆発した。


歓声が、ビルの谷間を揺らした。


「Aランク!」


「低評価からAだ!」


「すげぇ!」


「本当に英雄だ!」


「レンがAランクになった!」


レンの目が、見開かれる。


Aランク。


人生で一度も見たことのない評価。


教室で、端末の画面越しにしか見たことのない、選ばれた人間の記号。


高評価市民。


上位居住区。


自由な移動権。


企業推薦。


軍特別待遇。


教育支援。


医療優先。


この街で、人間として扱われる証。


今まで自分は、BでもCでもなく、誰かの横にいるだけの人間だった。


カイの相棒。


レッドノイズの整備役。


リーダーの横にいる、少し頭の回る奴。


でも今は違う。


AIランクA。


レンは、FランクからAランクに格上げとなった。


自分の名前の横に、初めて光がついた。

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