7
※不備を見つけた際は誤字報告受付まで。
適当で良いよ、多分ね。
模擬空戦の記録を前後させながら確認する。
UAVは実質、意味のない訓練用の曳航機だった事を加味しても完敗だ。
そもそも、アグレッサーを務めた彼女らはUAVを用いていなかったのだから、言い訳にもならない。
どこから切り出したら良いだろうか?
どこから切り出したとしても、ジャガットが声を荒げる未来しか見えない。
本当に私がこの小隊を引き連れる事ができるのだろうか?
弱音を吐いても、意味は無いので諦めよう。
「先ず、この隊として初の訓練飛行ご苦労だった。
そして、短い時間ながら、同席を快く承諾してくれたシャシャ隊に感謝する」
「全然良いよ〜。あと、私らは余所者だから堅苦しくなくて良いからね〜」
「ちっ」
そういうのが1番扱いに困るんですよ!
あと、ジャガット!今舌打ちしたの聞こえてたからな?頼むから機嫌の悪い思春期の甥っ子みたいな事は止めてくれよ?頼むから!
「了解した。では先ず、全体の動きを双方の記録と検証しながら、あの時何が起きていたかを俯瞰して知る必要がある」
私はアグレッサーのAWACSとして飛んでいたスターリードのデータリンクを映し出し、再生する。
「見ての通り、空域に入った時点で両隊は西と北から空域の中央に対して交差点を置いて飛行していた。
その後、双方間の距離45キロ地点にて、スターリードからシャシャ隊へ交戦許可が伝えられる」
その後、程なくしていくつかの矢印や線がシャシャ隊から伸び、リヴァー隊に向かって動く。
一度映像を止め、線を書き込みながら続ける。
「ここでリヴァー4および3は反転し、回避機動に入る。リヴァー2はシャシャ1へロックを試み、シャシャ2が回避した後方から追撃しているが、シャシャ2はリヴァー隊から発見されていない」
キル判定を取られたリヴァー3がグレーアウトし、リヴァー2がシャシャ2からの攻撃線を回避した事でシャシャ1が距離を詰めた。
「そして、シャシャ2は東から回り込んで、回避後リヴァー2の援護に回ろうとしていたリヴァー4の真後ろへ。この際の移動もリヴァー隊からは発見されていない」
奇襲されたリヴァー4にシャシャ2がほぼ被ったまま、旋回を始める。
しかし、すぐにリヴァー4がグレーアウトした。
リヴァー2は詰めたシャシャ1から追われており、私はポイント4で旋回し、加速中。
「この時点でリヴァー隊はシャシャ2を確認するが、その後ロストしている。リヴァー1がシャシャ1に攻撃を行うが、リヴァー2と同じ方向へ回避しているな」
そして、追撃の為に私が詰めた所を、シャシャ2は後方で反転して待っている。リヴァー2とシャシャ1が被ったまま動き、その後交差を繰り返す。すぐにまた被り、リヴァー2がグレーアウトした。
「後方からシャシャ2が追撃し、リヴァー隊は全機ロストだ。全体の流れに対して質問はあるか?」
「ひとつ良いか?」
ジャガットが挙手する。
最悪、殴り合いにならないかと滅茶苦茶悩んだが、許可した。
「データリンクがこっちの物と違うみたいだが、何処のやつだ?」
「それは私から伝える。これは我々の運用する物よ。知らなくて当然。本来、他国には共有されないから」
シャシャ1が即座に返してしまったので、言う事がなくなった。
仕方ないので、今回のアグレッサー部隊の情報については軽く説明する事にした。
「聞いての通り、シャシャ隊は外部の部隊だ。今回参加していたアグレッサー部隊の約半数は、傭兵や外部組織に依頼されている。アグレッサーの情報が事前に伏せられていた理由だ」
まぁ、私も後から知らされた事なので、実を言うとそれ以上の事は知らない。
他に全体に対しての質問はなかったので、1番嫌な時間に入ろうと思う。
「ここからは、今回の内容をシャシャ隊に指導して貰う。任せたぞ」
「やっと出番だね。先ず、私はシャシャ2こと、シーラよ。リヴァー隊も、他の隊と同じように機体に制限を付けた上での訓練だったのは前提として話すわね」
どうか無事に終わりますように。
シーラの説明が良かったのか、時間が空いた事で冷静に考えられたのかは分からないが、何も起きなかった事は良かった。
単純に実力の差を理解した事で噛み付かなかっただけかも知れないが . . .
とにかく、提示された方向性や問題点は非常に分かりやすく、なぜ依頼だけでやって行けるのかが納得できる内容だった。
最後にインテークに描かれたマークを弄られたのだけは納得いかないが。
シャシャ隊はしばらくアグレッサーとして訓練に参加するそうなので、また交える機会があるかも知れない。
その時にもっとマシな結果を得られるよう、邁進せねば。
「お!いいねいいね、そこ!あぁ〜!待って、やるじゃん!」
「何故それが通るのか分かりません。これが才能ですか?」
「ちょっと待って、ゴルサ助けて〜!よしよし、やっちゃぇ!」
ふむ、どうやら私は幻覚症状があるらしい。
30分の休息を与えて、自負を抱きながら軽食を買って戻ったらこの様だった。
100歩譲って、休息だ。何をしても構わないが、一体何処からそのゲームを持って来たんだ?
一応、持ち物は確認されている筈なんだが。
それと、この盛り上がりの中でジャガットはよく爆睡できるな!
シャシャ隊の隊長も全く気にせず読書とは、いやはや。
しかし、何処かで見た様な柄の表紙だが気のせいか?
まぁ、残り20分程度の時間くらい、好きにくれてやろうじゃないか。
私は何も見ていないからな。
何度か訓練飛行を繰り返し、分かった事がある。
今、この小隊には問題があるということだ。
どういうことか?それは、慣れだ。
最初の数回はオーバーライドの効果に対応する目的を達成出来ていた。
しかし、次第にパターンを理解したり、何となく感じるのだ。
明らかに対応の仕方が変わっていた。
結果、それらは無視されるラインが出来てしまった。これでは意味がない。
ただオーバーライドを実施するだけではなかったのだが、人間の慣れとは恐ろしい。
きっと慣れてしまえば、容易に翼を失いながら帰ることも達してしまうかもしれない。
私はそんな事に慣れたくはないが。
「というのが我が隊で起きている問題になります」
「つまり、どの隊もおおよそ同じ常態化が起きていると?」
「そうなります。大佐」
大佐はしばらく顎の下を触っている。
また私に全てを振るのだろうか?
何故だろう?訓練飛行を行った面子がゲームで盛り上がっていた部屋の幻視が見える。
大佐は立ち上がり、私の前に立つ。
そして、私の肩に手を置いた。
「ならば、彼と模擬戦をさせてみよう。アグレッサーとは違う刺激になる。どうだ?」
は?つまり、私にアグレッサーをやれと?
流石に冗談ですよね大佐。
「しかし、大佐。いち小隊長にアグレッサーとして全てを任せるのは、荷が重いのでは?」
「何、直接である必要はない。彼に行動計画を作らせると言う話だ。これなら負担も少ないだろう」
あぁ、ダメだ。一瞬希望を抱いた私は愚かだった。
いや、未だだ。諦めるな。良い手がある筈だ。
「では、各小隊長が計画したものを、入れ替えて実行する。これでどうでしょう?」
「と彼は言っているが、どうだね?小隊長の諸君」
全員巻き添えだ!私だけが作るとか正気じゃない。
私も正気じゃない!
しばらくガヤガヤと言葉が交わされていたが、静まる。
「いっそのこと、小隊長抜きで飛ばしてみては?小隊長が何を仕掛けるかが感覚的に分かってしまうのであれば、小隊長が不在なら、メタ的な感覚による推測は通らないでしょう」
同席していたアドバイザーの1人である指揮官がそう言った。
なんて眩しい投影機の光!まるで後光のようだ!
「良いだろう。次の行動計画は小隊長を除く事とする。各小隊長はアグレッサー部隊と協力し、事前訓練を受けろ。小隊長不在の行動計画でアグレッサー側として参加させる。異論はあるか?」
思った巻き込み方とは変わったが、私1人に全てが来なかったので良しとしよう。
アグレッサー部隊との事前訓練は諦めるしかない。
「異論はないか。では、アグレッサー部隊の割り当ては明日伝える。解散」
まったく。担当がどの部隊になるか、楽しみだ。
確実に私自身が扱かれるだろう。
あぁ、楽しみだ。
専属の軍医を希望しようかな?




