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※不備を見つけた際は誤字報告受付まで。
適当で良いよ、多分ね。
さて、無駄に時間をかけてはいられない。
私はスクリーンに端末の画面を飛ばしながら、機体の図面を分離させる。
分離した図面の一つから、左側のカナードの付け根に位置するパネルを選び、取り出す。
露わになった内部図面から、2枚のパネルを選んで外す。
代わりに、剥がした2枚とほぼ同じサイズのパネルを選び、被せる。
規格の同じ留め具部分だけを固定し、操作を終える。
「全ての機体に、この変更を行ってくれ。作業が終わり次第、私に知らせるように」
「失礼ながら、少佐。正気ですか?こんな事をしたら、良くて異音。最悪墜ちますよ!?それに、意図的な不整備の指示なんて、了承出来ません!」
整備班長の言う事は正しい。
意図的に機体に間違った整備を行う等、あってはならない事だ。
しかしこれは、私が大佐に許可を得た訓練飛行の内容である。やって貰わなくてはいけない。
「大佐の許可は得ている。これは命令だ班長。そして、大佐からの言葉も預かっている。
“いつも万全で飛べると思うな。死んで来い"だそうだ」
「しかしこんな、頭のネジが外れてるとしか . . . 」
整備班長が難色を示す以上、整備班は動けない。
しかし、命令と飲み込むまで待つ時間もない。
未だ首を縦に振らない整備班長には、説明が必要だろう。
「この訓練の目的は、判断だ。異音を感じ、帰投するのか、制限した上で続けるのか、無視するのか、気のせいだと思うのか。
全ての選択を取って良い変わりに、全て自己判断させる事だ。
そして、変更部分の試算は既に行われ、訓練において、異音以上の事態は引き起こさないと結論が出されている」
整備班長は沈黙している。
彼女の中では相当悩ましいのだろう。気持ちは分かる。
仕方ない。プランBに変更しよう。
「従えない様だな班長。仕方がない事だ。訓練内容を変更する」
「 . . . 本当ですか?」
「本当だ」
私は、一つのチップを取り出して端末に読み込ませる。
ダウンロードされる様を見て、整備班長が聞いてくる。
「これは、何をしているのですか?」
「私の指示で小隊機のエンジン停止を行えるよう、オーバーライドを実施している。片エンジンのみで行う帰還訓練だ。
安心してくれ班長。このチップは新人の飛行訓練で用いられる教官用の物を借りて来たに過ぎない」
半分が嘘である事は伝えない。
実際には、エンジン停止以外にも色々と引き起こすつもりだ。
異音がダメだと言うのなら、警告音で置き換える。
他の隊でも、殆どこの方法を用いる事になっているし、本命はこちらだ。
「何故最初から、正規の訓練を用いらないのですか?最初からこちらで良かった筈です」
「実際に異音が生まれる様な状態での判断と、制御によって生まれた状態での判断には差があると考えるからだ。
インストールと挙動の確認を行ってくれ。私はA-LR-15に向かう」
整備班長が了承した事で、やっと訓練飛行の条件を整えられる。
彼女には悪いが、これから先、数多くの難題を押し付ける事になる。
格納庫から出た私は、迎えに来させていた車両に乗り込んだ。
寄り道を挟んで目的地へ着く。
扉を開けて入ると、適当な席に全員が着いていた。
姿勢を正した動きから察するに、かなり会話は弾んでいた様だ。
羨ましい。
手にしていたファイルを置き、スクリーンに向かって端末の画面を飛ばす。
いくつかに分けられた空域と、基地が映し出される。
「先ずは異動、ご苦労。そして、ようこそリヴァー隊へ。
早速で悪いが、この後、訓練飛行が予定されている。よって、いくつか決める事がある」
そこで一度区切り、ファイルを開く。
中から紙束を人数分取り出し、その中から一枚をひらひらと見せる。
「TACネームの申請書だ。すぐに決めてくれ」
「前のままでも良いのか?」
「構わない。なお、申請は即時行うので、弾かれた場合は諦めて考えてくれ」
紙束を手渡したところで、1人の情報士官が入室してくる。
彼が申請をこの場で受理する事で、訓練飛行前に手続きを間に合わせる算段だ。
私は既に通してある為、飛行ルートの表示を用意する。
情報士官と隊員のやり取りを聞き流しながら、スクリーンへと飛ばす。
「ゴルサ」
「 . . . 承認された。これで全員の申請が通ったので、私は失礼する。申請書は纏めて管理員に渡してくれ」
そう言って情報士官は退出した。
そして隊員の1人、先ほど格納庫に来ていたミガーが違和感を口にする。
「少佐、今決めたのは私達だけです。少佐は申請していません」
「 . . . なぁ、隊長。あんたはなんて通したんだ?」
ミガーの疑問に、さっき到着したばかりのジャガットが続ける。
私は後で伝えるつもりだった。
ただ、ちょうど良いので今伝える事にしよう。
「ケルセクだ。先に申請は終わらせてある」
「随分と洒落た付け方だ。イーサ出身じゃないってのを皮肉ってるのか?」
「どうだろうな。管理員が受け取りに来る前に、申請書は書き上げてくれ。それと、各自のコールサインを伝達する」
私は小隊長である為、自動的にリヴァー1である。
ミガーは小隊長の経験がある経歴から、リヴァー3に。
リヴァー3の僚機として、ゴルサをリヴァー4に。
「リヴァー2はジャガットだ。私のウィングマンとなる」
「俺はエレメントリードじゃないのか。ま、いいさ。俺に遅れるなよ?隊長さん」
これをミガーに押し付けるのは悪いと思ったからだ。
次は飛行ルートの説明をする。
リヴァー隊が割り当てられたのは、基地から北東に位置するエリアC。
「都市部を避ける為、空域には西から入る。この際、ポイント2を通過したタイミングで地上からUAVが射出され、ポイント4で合流する事となる」
「UAVは都市部を突き抜けてくるのか?」
「いや、空域に近い空き地から射出展開される。詳しい場所は伏せられているが、都市部を避けた配置である事は確かだ」
続けて、空域の高度規定、機体速度制限を指示する。
途中、整備班からの作業が終わったという報告を受けながら、ポイント4到達後の流れを説明した所で、全体に関わる事を伝えた。
「それと、指定された空域を跨いでアグレッサー部隊が巡回中だ。彼らに捕捉された場合、即時模擬戦闘へ移行。撃墜判定を貰った機は空域を離脱し、ポイント3で待機となる」
「乱入ありってことか」
質問が無ければ、と言いかけた所で管理員が申請書を受け取りに来る。
纏めて渡してから聞き直す。
「質問はあるか?無ければ格納庫へ向かい、機体の確認を行う」
「少佐、アグレッサーは何機参加していますか?」
「不明だ。他に質問はあるか?」
「アグレッサーに撃墜判定を取ったら、隊長が奢ってくれるのか?」
そんなものはない。
他に質問も無かったので、この場を解散する。
私はファイルを届ける為に寄り道してから格納庫へ向かった。




