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※不備を見つけた際は誤字報告受付まで。
適当で良いよ、多分ね。
デモによる交通規制を避ける必要があったことで、普段より遠回りする事になる。
20分もの間、車を走らせ続け、20分もの間、交通規制に阻まれて迂回したものの、郊外まで来る事ができた。
そこから先では、阻まれる事なく目的地へと到着する。
閉ざされたゲートの前で一度車を停め、窓を下げる。
直ぐ様、1人の門番が端末を操作しながら駆け寄り、後から2人が、人の背丈と変わらない機材をそれぞれ持ってくる。
「IDを提示してください」
端末を持った門番の良く通る声に従って、身分証を渡してIDを確認してもらう。
直ぐに返却され、受け取ったと同時に次の指示が来た。
「生体認証を行います。端末の上に手を置いてください。次に、こちらを覗いてください」
言われた通りに端末に手を置き、何処からか取り出されたハーモニカのような形状の箱を覗く。
5秒ほどで、良いと言われ、姿勢を戻す。
「では、そのまま待機してください」
車の周りを、機材を持って回っていた2人がそれぞれハンドサインを出したのを確認してから、端末を持った門番が再度、指示を出す。
「ゲートを開けます。A-5を経由してから、C-3に停めてください」
「分かりました」
A-5からC-3に。頭の中で復唱しながらゲートが開くのを待つ。
ゆっくりと片側だけが開いた後、中へと進む。
A-5から駐車場へ入って、C-3に移動し、空いている枠に適当に停めた。
荷物をまとめ、私服からさっと着替える。
身分証を首から下げて服の内側へ入れ、軽食は食べきってしまう。
最後に、残っていた飲み物を一気に空にしてから、荷物を全て持って車から降りる。
小走りで入口まで向かって行った。
「全員居るな」
「起立、敬礼」
「よい。直ぐに始めるぞ」
座り直した所で、今入ってきた大柄な男はその手に持っていた紙束を台に置く。
そして一枚だけ手にしてから、黙読し、即座にシュレッダーへ送る。
無慈悲な裂断音だけが部屋に響く。
そして、大柄な男は大きな溜息をついてから言う。
「単刀直入に言う。お前らは全員戦地送りだ」
「どういう事ですか?大佐」
「言葉の通りだ。それ以外ではない」
唐突な内容だが、いつものことである。
質問者を放置して、大佐と呼ばれた大柄な男は続ける。
「ここに居る者は既に知っての通り、ナージェン共が難民受け入れの停止を発表した。
これを受けて政府は、今まで以上の頻度で難民受け入れを継続する事は困難であると判断し、
事態の解決を図る為、7年に渡る内戦を未だ続けるサーガジス大陸連邦に対して、
国家連合軍を派遣し、その内戦が継続不可能な打撃を与える事とした」
「そして、貴様らはその任務に従事する事となった。
各部隊は、連合派遣軍として再編成され、現地へ向かう。
あぁ、それとこの作戦にはナージェンを始め、複数の国家間で取り決められた合意を基に派遣されるため、現地での衝突は国家間の問題となると思って慎め」
大佐はそこまで言い切り、紙束を一枚手に取る。目を通してからシュレッダーへ投じ、ヘリ部隊の小隊再編内容を伝えた。
紙束から一枚手にしては、シュレッダーへ。次の小隊に指示をしてから、次の紙へ。
私の小隊の再編内容が伝えられた。
私が所属していた小隊は解体され、バラバラに配属先が振られていた。
特に驚いたのは、私が小隊長として抜擢されたことだ。
それに伴って、私は階級を一つ上げ、少佐になるという。
それと、隊の構成員はこの後資料を受け取りに来いと。
非番から呼び出され、戦地送りで昇進とは、いやはや . . .
運は悪いが、悪い方に振れ過ぎていると、私は思うね。
全ての紙がシュレッダー行きとなった後、大佐は解散を宣言した。
私は、自身が指揮する事となった隊の構成員の資料を受け取るため、大佐に付いて歩いていく。
特に話す事も無いので、抜擢された事について聞いてみることにした。
「ひとつ、質問をして良いでしょうか?」
「なんだ?」
私は、言葉を慎重に選びながら、質問を紡ぐ。
「なぜ私を小隊長に?」
「なぜ、か」
大佐が無言で立ち止まって身分証をかざし、部屋のロックを解除する。
扉を押し開けた大佐は、入るように顎で促す。
私が中に入った後、大佐が手を離すと扉は勝手に閉まり、ガチャッとロックがかかる。
「なぜと言われても、私は知らん。私は基地の指揮者であって、編成を決める側ではない。
だが、言える事があるのは事実だ。聞きたいかね?」
私は少し迷う。絶対にありえないが、聞いたことにより、この部屋で口封じされるシーンが脳裏を過った。先週に見た、映画のせいだろう。
言える事があるという言い方は、伝える必要は無いが、伝える気はあるという内容なのは理解できる。
なら、答えがあるかもしれない。
「聞かせて貰えるのなら」
「良いだろう。君は参謀本部から直々に指名された。以上だ」
自分から聞いておいて、こう言うのも違う気がするが、何を言っているのか分からない。
私は相当間抜けな面をしていたのだろう。大佐は、資料を用意しながらこちらを振り返ると、溜息を吐いてから続ける。
「自分の経歴を振り返ってみろ。入隊から5年、平和な日々を送っただろう。
次の年で何があった?」
「スクランブルに従事した際に、撃墜されてます」
苦い思い出だ。あの時の事は、嫌でも鮮明に思い出せる。
あの日、領空に入り込んだ不明機に対して、UAVが先行して誘導を行っていた。
しかし、突如撃墜された事を受けて、当時の小隊長と私は共に、訓練飛行から移行して対処へ向かった。
そして、不明機を視認し、警告を行って誘導を始めた所で、後方上空から格闘戦を仕掛けられたのだ。
奇襲攻撃の対象だった小隊長は、キャノピーを貫通した機銃弾によって即死。
ブレイク機動を取ったものの、誘導の為に速度を落としていた私も、そのまま被弾して機体は墜落。
どうする事も出来ないまま、空に撃ち出され、黒煙を吐いて地に帰る自機を見届けた。
あの時の無力感は、今でも付き纏っている。
「しかし、それと何が関係するんですか?撃墜した等なら、腕を認められたとか、分かりやすいんですけど」
「分からないのか?はぁ~ . . .
撃墜されたというのは、現代では稀だ。そもそも戦闘が起きにくい時代に、戦場の空気そのものを知っている。それが今、評価されているという事だ」
不名誉な事だが、言われた事は理解できる。
ただ、納得は出来なかった。
「これだ。内容はよく覚えておけ」
そう言って大佐は、用意した資料を一つにまとめたファイルを渡して来る。
受け取って直ぐに、開いてざっと確認する。
私についての資料は除くと、他3人の経歴が書かれたものに、担当の整備班の経歴についてだった。
「まぁ、なんだ?不名誉な”撃墜された隊長”と言われないように、精々頑張るんだな」
そう言って大佐は、私の肩を軽く叩いてから、部屋を去る。
私は、ファイルの中身を熟読する為に席に着く。
まだ暫くは、この部屋から出られない事だろう。




