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※不備を見つけた際は誤字報告受付まで。
適当で良いよ、多分ね。
――――――
「受け入れを停止しろ!」
「「「停止しろ!」」」
「雇うのは俺たちにしろ!」
「「「俺たちにしろ!」」」
「税金を払ったのは!?」
「「「俺たちだ!!」」」
「職を失ったのは!?」
「「「俺たちだ!!」」」
「ただちに退去せよ。この集会は事前に提出され、許可されていないものである。繰り返す、ここに集う事は許可されていない。ただちに退去せよ」
「俺たちには発言の自由がある!」
「「「そうだ!!」」」
「許可のない集会は、国家緊急治安維持追加条項、第6項2文によって、公共の秩序を乱すものとして、一時的に拘束し、取り締まる権利を持っている。ただちに退去せよ。これは許可された集会ではない」
「自由の侵害を許すな!」
「「「許すな!!」」」
喧騒と調律の入り混じった外界に起こされ、私は眉をひそめる。連日、よくもまぁ飽きないものだと関心しつつも起き上がり、時計を見る。
時刻は6時を回った所だった。
外は既に明るいし、いつもの広場でまたやっているのだろう。
起きてしまったことは仕方がないと、ぼんやりとした頭を振って着替える。
久しく袖を通す私服は、今日が非番である事を実感させ、少しだけ穏やかな心持ちとなる。
簡単に朝食を用意し、テーブルに置く。内訳は、昨日の残りのパンをトーストし、昨日買い足したチーズとトマトを切り分けて挟み、先ほど焼いたソーセージを加えた非常に簡素なものだ。
しかし、そんな簡素なものでも、妙に食欲だけは刺激されるのだから興味深い。人間は空腹に抗えないということか。
渇きを潤せと言う体に従って、冷蔵庫を開く。半年は放置されていたワインが、我を飲むのか?と、主張しているものの、非番だからと飲んでしまう訳にもいかない為、諦めて水を注ぐ。
さて、私の目下の卓上には、今日のメンバーが全員揃った。
見回して満足した私はテレビを付け、サンドにかぶりつく。
トマトの控えめな酸味と、チーズの独特なコク、そこにソーセージの暴力的な旨味が広がり、一口で目が覚める。
ここは天国か?
テレビに目をやると、朝から行われていたデモの報道だった。
連日、首都では繰り返しデモが発生し、拘束者も出ている事。国家の暴走だと言う参加者へのインタビューが終ったかと思えば、政府の呼びかけとして、不要な外出は控えて自宅待機せよと言うメディア。
はぁ~。まったく、どいつもこいつも飽きない事だ。
手にしていた最後の一口を食い納め、コップに注いだ水を一気に飲む。体に悪い事は知っているが、この冷たい喉越しが、一気に押し寄せる感覚はやめられないのだ。
特に目的もなく、ただ、流れるがままにニュースを見続けていた。
久しく享受する時間を、こんな事で消費し切っては勿体ないと思ったのは、30分程経ってからだった。
何をするでもなく、何かある訳でもない日を過ごすことを、私はいつの間にか下手になっていたらしい。
何かしら、やりたいことくらいあるだろうと思い、最近の出来事を思い返す。
特に何もなかったなと、何とも言えない気持ちになったが、少し前に流行り始めたと周りで騒がれていた小説を買ったまま、封すら開けてない事を思い出した。
他にやる事もないし、読んでみるか。
テレビを消す為にリモコンへ手を伸ばしたその時、丁度速報の知らせが入った。
急ぎの用では全くないし、速報は見てからにするかと座り直す。
ついでに聞き逃さないよう、少しだけ音量を上げた。
「今入ったニュースです。先日より行われ、本日午前7時頃に再開していた、ナージェンフォルテ共和国連邦の、難民受け入れ停止に関する審議において、同法案が賛成多数で可決されました。
これを受け政府は、緊急会合を開き、今後の対応について協議を始めたとのことです」
私は耳を疑う程に受け入れられなかった。画面に喰いついていたのを、後から自覚する程にだ。
正式に受け入れを開始してから5年間、最大の受け入れ先の一つとして扱われていたナージェンがそれを辞めたというのだから。
何度か議論されていた事は知っているが、影響を踏まえて、最終的には必ず受け入れ続ける方針を取っていた事も知っている。
「現地から中継が繋がっています。そちらの状況をお伝えください」
「はい。まず私は、審議が行われていた議場の位置する、首都北西、ロフクス通りに来ております。
ここでは先日から、難民受け入れ停止を求めるデモが行われており、議場付近の規制線に合わせて、いくつもの集会場が設置されていました。
現在は、受け入れ停止を勝ち取ったとして、デモに参加していなかった方々も集まって来ており、当局によって複数の拘束者は出ているものの、これまでで一番の盛り上がりを見せています」
そう言って映し出された先には、盛り上がる人々と遠めに見ても分かる程の熱狂があるように見える。
規制線を境に、装甲車なども止まっており、いつ暴発しても良い様に構えられた水銃がその口を空に向けて開いている。
恐らく現地では、隣の人と会話すらまともに出来ないほどの大騒ぎとなっている事だろう。
「―――では、本日可決された法案は、半年後から有効になるという事ですか?」
「はい。通例であれば、半年の間に執行されます。ただし、今回の場合は、即時停止であるのか、段階的または、時期を定めた停止であるのかは不明であり、情報官によって会見が行われるまで分からないというのが実情です。その為、即時に国内に影響があるのかは、不明となっています」
「わかりました。ありがとうございます。ここからは、国内での影響について、連合の労働者受け入れに詳しい―――」
その後は聞かなくても分かる。他の受け入れ先が見つかるまで、最も大きい受け入れ先でもあり、最寄りであるこちら側に流れて来るだろう。
こちら側だって、既に限界であるにも関わらずだ。
自称専門家の話はどうでもいい。さて、読もうとしていた小説はどこに置いてあったかと、テレビを消して立ち上がる。
記憶を頼りに未開封の包を探し、受け取り書きを確認していく。3つ目の包が書籍だった。
恐らくこれだろう。題名は何だったかな?などと、少しだけ期待とも言えるわくわく感を楽しみながら、開封して中身を取り出す。
緩衝材を外した所で、肌身離さず持っていた呼び出し端末が不意に鳴る。
爆音を止めながら、呼び出しに応じると、今すぐ来いとだけ言われ、切られる。
非番なのにと思いながら、直ぐに荷物をまとめて、向かう用意をする。
休日は返上になるかもしれないなと予想しながら、開けるだけ開けた残骸はまとめて捨てる。
着替える間も惜しいと、手荷物に突っ込み、軽食と飲み物を鷲掴んで確保する。
開けるだけ開けた本は仕方なく、適当な棚に突き刺しておく。
最後に車の鍵と貴重品の確認をして、直ぐに出る。
自宅の鍵はロビーで預け、急ぎ足で自家用車へ向かう。
預ける際に、忙しいねぇ~と言われたが、人相よく苦笑いするしかなかった。
まぁ、オーナーも分かっているので、それ以上何も言わないのだが。
車のドアを閉めた時にふと、結局あの小説の題名はなんだったのか?と思ったが、次の瞬間にはそんなもの関係ないと、走り出す。
様変わりする景色の流れる速さは、急ぐ心を示しているのだろう。




