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※不備を見つけた際は誤字報告受付まで。
適当で良いよ、多分ね。
暗い部屋を慎重に進む。
確かに啜り泣く様な声がするが、その姿は見えない。
明かりを点けることも考えたが、暗い上に部屋の作りも分からないため、諦めた。
「どうだ?居たか?わお、これは暗いな」
「その上、姿も無しだ。啜り泣く様な声は聞こえるんだが」
タルグは胸元から懐中電灯を取り出すと、辺りを照らして確認する。
そのまま少し見回していたが、一箇所に向けたまま口を開いた。
「このカーテンの裏だな。3-2-1で行くぞ?」
「ちょっと待て、殴り込む気か?それこそ、やっちゃうぜ!案件になるだろう。さっきも言ったが、私が行く」
「なら、任せるか。ちょっと突入部隊の真似をしてみたかっただけだしさ」
ちょっとやってみたいくらいの気持ちで指揮官に止めを刺すのは辞めてくれ。
それにまったく、この指揮官も何を泣いているのやら。
「リヴァー隊及びジュト隊、ただいま着任しました。
指揮官 . . . ?」
私が何も言わなくなった事に反応したのか、タルグが横から覗き込む。
そして懐中電灯を取り出してライトの向きを指揮官に合わせた後、声を張り上げてライトを付けた。
「動くな!MPだ!貴様に怠惰の容疑が掛かっている!」
「っ!?わぁぁ!」
ガタンと音を立てて椅子から転げ落ちる指揮官。
コイツやりやがった。いや、止めなかった私も悪いが、本当にやるのか見てみたい気持ちが勝ってしまったのだ。
飛び起きて転げた指揮官は顔に当てられたライトを眩しそうに遮りながら、両手を上げている。
「冗談抜きでMP呼ばれかねないぞ?タルグ」
「なら、同罪だな。ケルセク」
「君達は . . . あー、分かったよ。今日来る予定だった小隊だね?」
指揮官が手を下ろして後ろを振り返りながら何かを触ると明かりが一斉に点灯する。
同時に、遮っていたカーテンも部屋の端に大人しく控えた。
そして、指揮官は未だ啜り泣く様な声を発している端末の電源を切り、こちらを向き直す。
「ようこそ、我が基地へ。君達の合流を歓迎しよう!と言っても、何もおもてなしは出来ないけどね。何せ、ここは前線。
あれもない、これもない。何も足りていない。さぁ、君達の人手を借りる事にしよう!」
なるほど、大佐とは違った方向の胃が痛くなりそうだ。
しかし、あの啜り泣く様な声の音声は何だったのか。
完全に聞くタイミングを逃してしまった。
まぁ、そのうち聞く機会があるだろう。
とりあえず、指揮官の求める握手に応じた。
「詳しい話は僕からする必要はないね。ここで大事なのは3つさ。
1つ、僕の階級が低い事を理由に言う事を聞かない人を見たら報告すること。
2つ、僕の命令には従うこと。
3つ、任務から必ず生存して帰ること。
これだけ。簡単だろう?僕は1と2が簡単じゃないけどね」
そんなに命令に従わせるのに難儀するのか?
噂通りなら、階級は少佐の筈。特別飛び抜けて低い訳ではないが . . .
何か別の理由があるのか?
「確か、少佐だと聞いてますよ。因みに、こちらのリヴァーリードも少佐です少佐。少佐、どうします?」
「耳は良いようだね?しかし、君は従う気がある。ただ、遊んでいるだけだと考えているよ」
「少佐には本当にそう見えるのかしら?」
「面白い特技だね!どれくらい出来るのか、後で教えてくれるかな?」
私を抜いても勝手に話が進むのは良いのだが、意気投合か、共鳴に近い反応に見えるのは気のせいか?
ただ、精神が強過ぎるだけの可能性もあるか。
いずれにせよ、話を先に進めるべきだろう。
「この後の行動について確認したいのですが、両隊は輸送の護衛に従事し、整備班の到着を待ってから作戦に参加するという認識で良いでしょうか?」
「真面目だね。基本的にはその認識で問題ないよ。ただ、基地の存続が危ういと考える時はその限りじゃないのは覚悟してほしいね」
つまり、スクランブルは回って来るぞということか。
ジャガットは喜びそうだが、その分だけ目が離せないな。
「では、詳しい事は誰に聞けば?」
「あー、僕の部屋に行くと良いよ。そこに僕の右腕と言うか、本体が居るからその人が全部説明してくれるかな。さぁ、行った行った!僕はもう少しここで寝ているからね」
自らサボる事を宣言するとは、思ったよりも分かりやすい人かもしれないな。
部屋を遮り始めたカーテンを見ていても仕方が無いので、彼の右腕兼全身に会いに行くとしよう。
私が扉に向かって歩き始めた瞬間、タルグがわざとらしく大きな声で言った。
「結局、MPは呼ばれなかったな?無罪放免って訳か」
「簡単なことさ。僕はMPを呼べない。呼んでしまうと事情確認の為に部屋の記録にアクセスされて、僕がここでサボっていることが全てバレて僕もお世話になってしまうからね。
つまり、お互い様という訳さ」
余りにも理由が指揮官らしくない返しに頭痛がする。
しかし、この基地を任されるほど本来は優秀である筈なのだが?
私にはその片鱗が全く見えないな。
特に返さずに、私は部屋を後にした。
建物をいくつか渡って指揮官の部屋なるものを探し歩く。
タルグも同行しているが、何かを思案している様で、何も言わない。
次の悪戯でも考えているのか?
「あの指揮官、上手くやっていけそうだ。ケルセクもそう思うよな?」
「専用の軍医を雇いたい気持ちだよ。それと、案内人も必要だな」
「そんなにか?分かった、命令の案内役が必要的な話か。なら関係ないな」
いや、そういう意味じゃないんだが?
まるで人を命令を聞かないつもりの奴みたいな扱いは非常に困る。
「案内役は今欲しいだけだ」
「と言いますと?」
「完全に迷子だ。2人ともな」
「案内役は . . . 見当たらないか。引き返すか?」
下手に粗探しするより、一度戻るべきか。
部屋の位置を聞かなかったのが悪かったな。
それを踏まえて考えると、あの指揮官には妙にペースに乗せられて話を終わらせられた気がして来る。
「戻ろう。あの指揮官、妙に引っかかる」
「なら決まりだ」
すぐに第一情報室に向かって走っていく。
また、あの指揮官を叩き起こす事になりそうだが、仕方ないだろう。
情報に不備があったのだから。
少し戻ると人を見かけるようになる。
非常時と間違われても困るので、走るのをやめて歩きに変える。
建物を一つ戻った時点で、活気を感じる程度に人が行き来している。
誰一人として居なかったあの場所は何だったのか?
更に戻った私は今、少し前の記憶に見覚えしかない扉の前に立っている。
第一情報室。
扉の横にはそう書かれている。
また暗いのだろうか?
私は右手に懐中電灯を用意してから扉を開けた。




