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※不備を見つけた際は誤字報告受付まで。
適当で良いよ、多分ね。
中はやはり暗かった。
しかし、今度は啜り泣く様な声の音はしなかった。
代わりに、自身の思考を整理するかの様な、早口でぶつぶつと何かを言っている声がする。
どうせさっきのカーテンの裏だろう。
一応点けた懐中電灯で足元だけ照らしながら部屋に入って行く。
タルグも横に居るが、今度は何もする気がない様だ。
カーテンを適当に掴んで開け、裏を覗く。
私の予想通りの、椅子に座ったまま背を倒して寝ているいる指揮官が居らず、代わりに端末に向かって入力を繰り返す指揮官が居た。
これもサボりか?
貴方の言う右腕はどこに居るのか教えて頂けますか?と言う前に、指揮官の方が気がついた様だ。
忙しく動かしていた手を止め、こちらを見る。
「思ったよりも遅かったな。聞いていた話ではもっと早く帰ってくると思ったが、期待し過ぎたか?」
「どういうことですか?それと先ずは、貴方の言う右腕とされる方の居場所を教えて頂きたいのですが」
再び忙しく動かしていた手を止め、少し考える様な素振りを見せる。
そして、また再び忙しく手を動かして端末の相手を始めた。
今度はそんなに忙しいのか?
「私だ。そして無駄な会話は省くべきだ。して、右腕に何を聞きたい?」
「失礼ながら少佐、意味が分かりません。説明して頂けますか?」
指揮官兼自称右腕は端末の電源を落とし、積んであったファイルから何かを取り出すと、私達にそれぞれ渡してくる。
そして、振り返って操作盤から明かりの点灯とカーテンの移動を行わせ、椅子に座り直した。
明るくなった部屋の中で、渡されたファイルを開く。
中身は輸送機の飛行経路、日時、護衛機の内訳、哨戒範囲など、輸送機護衛に関するものだった。
しかし、これと彼の意図が不明な発言は関係が無い。
「任務の詳細は受け取りました。しかし、私の疑問は解決されていません」
「では、私の話が必要なのだな?」
「意図もなく、部下に基地を徘徊させる指揮官が居ますか?意味が分かりません」
指揮官兼自称右腕の私の頭痛の元は、まるで理解していない事を同意して示そうとしているかのように大袈裟に繰り返し頷く。
いつの間にか、啜り泣く様な声の音声が流れていた。
いつ変わった?
「僕にも気持ちくらいは分かるよ?君達には意味が分からないだろうからね。それと、タルグは予想がついているんじゃ無いかな?君は僕と似た匂いを感じるからね」
「全く意味が分かりません。悪戯と言うことですか?」
「ケルセク、それだと私が悪戯のことしか考えてないみたいに聞こえないか?」
タルグ、答える必要があるか?
殆ど悪戯だっただろうに。
「あー、どうやら勘違いしているみたいだ。仕方ないな、頭の悪いケルセクでも分かるように僕が説明してあげよう!特別サービスさ!」
「 . . . MP呼ばれたいですか?」
「ここまで冗談が通じないと真面目に言うしかないね。良いよ、説明してあげよう!」
そう言って大袈裟な身振り手振りを混ぜて、道化師かのように自称指揮官兼右腕の不審者は話し始めた。
はぁ〜。まったく、この調子では、大佐の時よりも私の身体が心配だ。
自称指揮官兼右腕の不審者道化師の話を整理する為に要約しよう。
彼は自称物凄く優れていた人物であった為、軍の実験部隊出身であり、詳細は不明だが試験中に事故に見舞われた。
その後、回復過程で脳に手術が必要と診断され、詳細は不明な方法によって一部を分離することになった。
結果、自己内面的にも分離が表層化した為に退役を指示されたが、精神コントロールの技術発展の為に犠牲になる事を選び、指揮官になったのさ。とほほ。
と。
ふむ。
情報規制を除いても、カバーストーリーに見えるな。
何処までが事実なのか、そもそも事実が含まれているのかすら判断不可能だ。
そういうやつとして、考えない事にしよう。
「なんと、大変な人生を!涙なしに受け取る事など出来ませんよこれは!」
「そうであろう!そうであろう!って訳だから、馬車馬の如く働いて欲しいね。僕の苦労を労ってさ」
「このタルグ、是非そうさせて頂きます」
こいつらだけで放置したら永遠に話してそうだな。
しかし、気になるのはタルグが似たような者であると言っていたことか。
何を抱えているんだ?大佐からの資料がまた足りてないだけか?
「あー、それと君達はこの話を口外できない。君達に伝えるようにって大佐からのお願いがあったから話したんだけどね?
君達が口外を行った場合には、第二級機密情報漏洩事案として、僕には即時の射殺が許可されているからね。
残念だけど、嫌でも従ってもらうよ?何せ、僕は君達が権限の無い情報を保有している事を知っているから、いつでもそれを理由にバンッ!ってして良い事になるからね」
. . . 大佐!何してくれてるんですか!
というか第二級って、戦略兵器運用計画レベルの機密じゃないですか!何をしてくれてるんですか本当に!
あぁ、なぜこんな事に。
思えばあの日、休日を返上してから運が最悪だったような。
「わぉ、ケルセク聞いたか?もうこれは、連帯責任だな!やっぱり私達は運命で繋がって居たのね、少佐さま?」
「やめてくれ。それ以上やられたら、私は暴行の容疑で連行されそうだ」
知ってしまった事は仕方ない。
任務に集中しよう。
詳細を読み直して、隊に伝達して . . .
やってられるか!なんで私ばかりこうなるんだ?
はぁ〜。大佐、死んでも仕返しに行きますからね!
覚悟して下さい!本当に!
「さて、説明は終わりだよ。任務に行ってきたまえ!僕の為に働きたまえ!さぁ、行った行った!」
部屋の入り口まで押し出され、扉を閉められる。
できるなら、10分前の私を殴って止めたい。
私はなんて事をしてしまったんだ。
横を見ると凄くニヤニヤしたタルグがこっちを見ている。
言いたい事はわかるぞ?凄く面白い事になったな、だろ?
ジャガットの言う通り、ジュト隊はお気楽なのかもな。
ここで突っ立って悩んでいても仕方ない。
ファイルの中身を隊に伝達する為、駐機スペースに戻ろう。
あの悪魔みたいな指揮官の顔を忘れるのに、1番確実な方法だ。
「よって、リヴァー隊は明日の0450時離陸に向け準備と休息を行なってくれ。質問はあるか?」
「随分と指揮官に会いに行くのに時間が掛かったみたいだが?なんかあったのか?」
ジャガット!!!
なんて事を聞くんだ!やめてくれ!
そんな事、どうでも良いだろ!そうだろ?そうだよな?!
はぁ〜。何か適当に言わねば。
「指揮官に会うのに苦労してな。次からは大丈夫だろう」
「そうなのか?まぁ、ここは前線ってことか。忙しいんだろうな」
そうだな、ジャガット。
これからもっと忙しくなるぞ。
はぁ〜。しかし、こんな隊長ですまないと思う。
周りに振り回されてばかりで情けないな。




