協力者を得た落ちこぼれ
カクヨム、アルファポリスで同時掲載
大幅に書き直しました。展開や登場人物に色々変更があります。読んだことある方もぜひ読み直して下さい。
※ Xにイメージイラストがあります
「親分、失礼しやす」
「ジョオか。どうした」
「庁舎長からの伝言です」
「おお、届いたか」
分からず仕舞いで終わったサアズたちの死因。
何か分かれば、連絡すると取り決めがあった。
ジョオから受け取ると、すぐに封蝋を割った。
「旦那、何が書いてある?」
「急かすな。なになに…」
報告書に目を通すリンポ。
しばらくすると、その表情が険しくなった。
「サアズと手下の死因、他殺の可能性は高いが今現在不明」
「なんだ。結局成果はないのか」
カチルはため息を吐く。
「待て、続きがある」
リンポは読み進める。
「検死のため血液を調べた」
「何かわかったのか」
「全員の血液が異常に黒ずんでいた」
「黒ずんでいた…」
「皆それが原因で肌の色が変わっていたらしい」
「肌の色が…」
その直後、カチルの脳裏にある光景が浮かぶ。
「おい、お前!」
「なっ、何だよ急に…」
話を振られ、ユリィは戸惑う。
「担架に運ばれていたサアズを覚えているか!?」
「えっと、目が赤黒く充血していたね。肌も地黒とは違う黒っぽい色をしていた」
「やっぱりそうだったか…」
カチルが黙り込む。
「心当たりがあるの?」
「ああ。あれに似た状況を見たことがないか?」
「あれと似た…?」
「つい最近だ」
ユリィは必死に記憶を探る。
「…リッチャか!」
「そうだ」
闇属性を付与され、汚染された肉体。
血液は毒々しい色に変色し、それは肌の色へと伝播していた。
「じゃあもしかして…」
「サアズたちは暗黒魔法で殺された」
状況を見ればあり得る。
そうだとしたら、暗黒使いが関与している。
「じゃあ、カリアンがやったのか!?」
「分からん」
ナバの神殿を襲撃した首謀者。
それが今回も関わっているのか。
だが疑問は残る。
カリアンがサアズと近しい関係とは思えない。
「続きがある」
「ああ、続けてくれ」
「三人の魔導士には呪いの紋があった」
「やはり呪い魔法か」
予想通り、マーチュは命と引き換えにそれを発動させていた。
「その紋の写しも描かれているな」
「え、どんなの?」
紋の存在は聞いていたが、どのようなものかは知らない。
ユリィは報告書を覗き込んだ。
「あれ…」
ユリィの表情が険しくなる。
「どうした?」
「これ、どっかで見たような…」
ユリィは記憶をたどる。
「そうだ!」
声を上げながらケイシに目をやった。
「あんたの背中に同じ模様があった!」
「わっ…私に!?」
ユリィの意図が分からず、ケイシは戸惑う。
「ほら、王都で」
「王都…」
「逃げようとしたあんたを呼び止めようとした時」
「ああ、そんなことがあったな…」
説明と共にケイシの記憶が徐々に呼び戻される。
「そしたら破いちゃったでしょ」
「破いた…」
わずかな間。
ケイシは当時の状況を完全に思い返す。
「…!!」
それと当時にケイシの顔が真っ赤になった。
「あの時、よくも!!」
「えっ…あっ…」
ケイシは怒りユリィへと詰め寄る。
「ちょっと!やめなさい!!」
チイヒが止めに入る。
「何があったの?」
「コイツに街中で服を破かれたんだよ!」
「まっ…街中で服を!?」
チイヒは声を上げる。
「そうだよ!そのあと大変だったよ」
チイヒの表情が消えた。
無言のまま二人の間に割り入る。
「ちょっと、ユリィ君」
ユリィへと向けられた視線。
それは怒りに満ちていた。
「なっ…何?」
恐怖のあまりたじろぐ。
それはケイシから向けられたもの以上だった。
「どこまで見たの?」
「見た…?」
「服、破いたんでしょ?」
「まあ、そうだけど…」
「どうだったの?」
「見えたのは…、背中だけだよ」
「本当に?」
嘘は許さない。
視線からそれが伝わる。
「うん、本当」
「なんだ、そうだったの」
「……」
「それくらいなら…」
チイヒはほっと胸をなでおろしかける。
「全然よくないわ!!」
再び怒りの表情に戻る。
ユリィはケイシではなく、チイヒからたっぷり叱られた。
「つまり、この人の背中に同じ紋を見たのね」
ユリィは頷く。
一方、チイヒの機嫌は相変わらず悪い。
「じゃあ、誰かが私を呪い殺そうとしているのか…」
あれから一月以上経ったが、何事もなく過ごしている。
ケイシは半信半疑だった。
「だったら確認しましょう」
「頼むよ」
「コーフさん。手伝って」
「あっ、はい」
「わ・た・し・と・コ・ー・フ・さ・ん・の・二人でやります。こちらへ」
チイヒはケイシを別の部屋へ誘導する。
棘のある言い方。
同時にユリィへ冷たい視線が向けらえていた。
バタン
扉の閉まる音。
今日はその音が鼓膜を圧迫した。
チイヒが去っても気まずさが消えない。
(そういえば)
この部屋にはアヤンがいることを忘れかけていた。
(アヤンの出来事だった)
現場に居合わせたが、知ったのは今が初めて。
ユリィに悪意がなかったことは理解しているだろう。
それでも気まずさが消えない。
「あれは事故よ。そうよね、ユリィ君」
「……」
ナギはそう言ってくれたが、ユリィは黙り込む。
それ以降沈黙が続くことになった。
「お待たせ」
三人が部屋に戻る。
「どうだったんだ?」
沈黙を破るようにカチルが聞く。
「二人で何度も確認したけど、何もなかったわ」
「念のため、背中の辺りまで確認しましたが…」
「ビビ、それ以上言うな」
ケイシの鋭い一声に、コーフは慌てて口をつづんだ。
「おかしい…」
あの時は刺青だと思った。
それが妙に引っかかり、記憶に残った。
だがそれは見つからなかった。
「いや、見間違いじゃないと思う」
カチルは話を続けた。
「施したのはウカだ」
「あのリッチ…。そんな術も使えたのか!」
「確か、その術者は死んでいるんだな?」
「うん、俺が倒した」
「そうなると、術を発動させる者はもういない」
「つまり…」
「術者本人が死んだことで、紋そのものも消滅したんだろう」
呪いは術者が死ねば消失する。
ユリィは学院の授業でそう教わったことを思い出した。
「そうか…」
ケイシは俯き、小さく息を吐く。
「結局、奴は私を駒としか思っていなかったんだな」
「残念だが、そうだろうな」
失敗すれば口封じ。
それが奴らのやり方。
「じゃあ俺が倒していなかったら…」
「術が発動されていた」
他の者は術の餌食に。
本来ならケイシも同じ運命をたどっていた。
不幸中の幸い。
だが、場の空気が重い。
「ハハッ…」
ケイシは突如笑い声を上げる。
「私に人を見る目がなかっただけだよ」
利用したつもりでいた。
だが実際は完全に利用されていた。
裏社会で成り上がるための後ろ盾を得た気でいた。
しかし、ウカにそのつもりなどない。
使い潰し、最後は消すつもりだった。
「だけど」
ケイシの声が気丈になる。
「今私が生きているのは、あんたのおかげだ」
「えっ?!」
ユリィへと視線を向ける。
「私はあんたに借りを返すよ」
「借りを…」
「ああ、全力であんたを助ける」
「そっ、そう?…それは頼もしい」
さっきまであった気まずさが少し和らぐ。
「ふう、これで収まりそうだな」
「一時はどうなるかと思ったわ」
カチルとナギが安堵する。
しかし、その横ではチイヒが呆然となっていた。
「ユリィ君はあの人にとっては命の恩人…」
チイヒの顔が青ざめる。
「命の恩人なら、特別な感情が芽生えてもおかしくない…」
冷や汗が溢れ出す。
「恩を返すうちに距離が縮まって、その後は…」
チイヒの脳内では、話がどんどん膨らんでいく。
「ああっ!!」
耐えきれず悲鳴を上げた。
「チイヒさん!?」
頭を抱えてしゃがみ込むチイヒに、コーフは慌て駆け寄る。
一方、騒々しいと思いながらもカチルは話を続けた。
「あんたの敵討ちはまだ終わっていない」
「ああ、そうだな」
追うべき人物はカリニャ。
その手がかりを完全に失った。
「報告書にまだ続きがある」
「何が書かれている?」
カチルが覗き込む。
「急かすな。ええっと…」
リンポの表情が変わる。
「どうした?」
「取り調べた団員によると、集荷の管理をするルハという名の男の行方が分からない」
「ルハだと!?」
「また、ルハがカタギと思われる男と行動するのを見た者もいる」
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