表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/41

謎を知れるかもしれない落ちこぼれ

カクヨム、アルファポリスで同時掲載

大幅に書き直しました。展開や登場人物に色々変更があります。読んだことある方もぜひ読み直して下さい。

※ Xにイメージイラストがあります

 警備兵と団員と野次馬。

 ただでさえ狭い通路がごった返す。


 人混みを縫うように担架が運び出される。

 やがてユリィたちの前を横切った。


 息があるように思えない。

 さらに、遠目では見えなかったものが分かった。


 白目が異常に血走っている。

 加えて、肌が黒ずんだように見えた。


 まるで恐ろしい目に遭ったかのようだ。


「何…でだ?」


「俺が聞きたい」


 カリニャが乗っていたはずの馬車。

 その代わりに現れた四人の魔導士。

 死の間際、マーチュが発したルキの名。


 それらの謎を明かす糸口が消えた。



 その後、ユリィたちは庁舎に呼び戻された。

 再びの応接室。

 アヤンたちはすでにいた。


「アヤン!」


 ユリィは声を上げた。


 特に変わった様子はない。

 単に眠らされていただけのようだ。


「心配をかけてしまい、すみません…」


 アヤンは深々と頭を下げる。


「無事でなによりだよ…」


 ユリィが肩を撫で下ろす中、扉が開く。


「失礼する」


 コジリに続きアンユの姿。

 そして、最後尾には釈放されたリンポがいた。


「あっ、あんたは…」


 ユリィが詰め寄るように近づく。


「落ち着け」


 肩を掴みカチルが制止する。

 魔闘家と思しき人間を遂に見つけた。

 実際はどうなのか。


 いの一番に聞きたいが、そういう訳には行かない。

 この街に来た目的はそれではない。


 カリニャの行方。

 その手がかりを得る事が最重要事項。


 予定通りであれば、今頃カリニャを神殿へ連れ帰っている。

 サアズとの間で何かがあったことは確かだ。


「冒険者一行様、お待たせしましたね」


 コジリは中央に立ち、説明を始める。


「挨拶はいい。あと、要約して頼む」


 カチルは急かした。


「と申されても、込み入った話が結構あるのですが…」


「じゃあ、サアズはどうなったか聞かせてくれ」


「死亡が確認されました」


「やはりか」


 予想はしていた。


「それと、魔導士も全員死亡していました」


「ぜ…全員って残りの三人も!?」


 ユリィが思わず声を上げる。

 マーチュは自ら命を絶った。

 だが他の三人は違う。


 ユリィが戦闘不能にした。

 しかし、致命傷を与えた覚えはない。


「待て」


 察したのか。

 慌てるユリィをカチルが制した。


「庁舎長。死因は何だ」


「分かりません」


「え?」


 ユリィは思わず固まる。


「コイツとの戦いが原因か?」


「その可能性は低いです」


「……」


 ユリィは思い出す。

 似た話が過去にもあった。


「検死の結果、急死だと判断されました」


「心臓麻痺だと言うのか?」


 あの時もそうだった。


(じゃあ、マーチュが最後に使った魔法は…)


 三人は口封じのために呪いを使った。

 魔力と体力は戦いで消耗されていた。

 そこで魔石の力を借り命と引き換えに発動させた。


「あと、倉庫に団員の遺体が多数ありました」


「どっ…どういう事だ!?」


「状況はどうでしたか」


 コジリの問いにアンユが答えた。


「サアズ同様、全員外傷がありませんでした」


「薬か何かが使われたのか。現在調査中です」


 死んだのはサアズだけではない。

 場が騒然となる。


「どいういう事だよ?」


「分からん!」


 カチルは状況を整理した。

 死んだのはサアズだけではない。


 御者は指示があったと言っていた。

 つまりサアズはそれまでは生きていた。


 魔法か毒か。

 まずは手下たちを殺害。

 その後サアズを脅す。


(それなら辻褄が合う)


 だが問題は、あの建物に外部の人間が入れたのか。

 何しろサアズは用心深い。


(何者かが手引きした…)


 もしそうだとしたら、サアズに近しい人間になる。



 カリニャの手がかりは警備兵に任せ、一行はリンポの邸宅へと戻る。

 道中のユリィは気が気でなかった。

 魔闘家本人から情報が聞ける。

 だが帰路での質問はカチルに制された。


「ふう、やっと戻れたな」


「お疲れだったね、旦那」


 部屋にはすでにケイシが戻っていた。


 拘留はされたが、半日で釈放。

 取り調べ室に通されはしたが、行われる事はなかった。


 一方ユリィはうずうずしている。


「ようやくですね、ユリィさん」


「う…うん」


 アヤンは軽く笑みを浮かべる。


「なるほど。武闘家になったのはこのためか」


 ケイシは腕を組み頷く。


「まあ、色々事情があったんだよ」


「確かに、話せば長くなる内容だったな」


 理解はしてもらえた。

 しかしユリィにはどうでもいい。

 それより、大事な話があるからだ。


「あんた」


 リンポに近づき目を合わす。


「話を聞かせて欲しいんだが…」


「おい」


 カチルが軽く止めに入る。


「質問は一つずつだぞ」


「うっ…うん」


 矢継ぎ早に質問を繰り返せば、相手の機嫌を損ねてしまう。

 そうならないよう、カチルは念を押した。


 ユリィは一旦落ち着く。


(よしっ)


 聞きたいことは山のようにある。

 だが、その前に確認しなくてはいけない。


「まず、あんたは魔闘家なのか?」


「ああ、そうだ」


 やはりそうだった。

 ようやく見つけた魔闘家。

 確証を得たと同時に、疑問が怒涛のように溢れ出す。


(次の質問は…)


 決められない。

 数ある中から捻り出さなければならない。


「えっと、いつから始めたの?」


 出てきたのがこれだった。


(こんなのでいいのか?)


 もっと聞くべき事がある。

 後悔の念に押しつぶされそうになった。


「確か入門したのは…、十歳だったな」


(十歳…)


 同じ歳のころ光景が頭をよぎる。

 孤児院の仲間と、今思えばバカな事で盛り上がっていた。


(いけない、いけない)


 思わず考えが逸れてしまった。


「それってメウダ寺院?」


「ああ、そこだ」


 そこが唯一の道場。

 やはり、門下生だった。


「何年くらい修行していたの?」


「道場が閉鎖された時までだ。それ以降は独学だ」


 ヤサカから聞いてはいたが、閉鎖は事実だった。

 理由までは聞けなかった。

 だが、それが明らかになりそうだ。


「なんで閉鎖になったの?」


「それなんだが…」


「……」


 ユリィは固唾を飲む。


「その時、俺は出かけていた」


「その間に起きたってこと?」


「ああ。戻った頃には警備兵が完全に封鎖していた」


「じゃあ、中には…」


「入っていない。私物の回収すら許されなかった」


 ユリィに嫌な予感がよぎる。


「師範や他の門下生はどうなったの?」


「全員行方をつかめていない」


「という事は、使いを頼んだ兄弟子も?」


「ああ」


 リンポの視線が僅かに下がった。


「それが例の“騒動”か」


「門前町の住人から多少は聞いた。夜中に騒ぎ声が聞こえたらしい」


「つまりその程度しか知らないのか…」


 遂に聞き出せた情報。

 しかし、それは中途半端なものだった。


「ところで、なんで出かけていたの?」


「それだが…。兄弟子に突然マイカタへ使いに行かされた」


「それって、どこだっけ?」


 ユリィは必死に王国の地図を思い返す。


「北の方ですよ。フキタの近くです」


「その辺にあったような…」


「嬢ちゃんは詳しいな。道場からだと十日はかかる」


「そんな遠くまで…」


「恐らく、俺を逃すためだったんだろう」


「なるほど」


 しばらくは帰ってこられない。

 危険を察し、そうしたと考えられる。


「それからしばらく俺は門前町に滞在していた」


「それで」


「ある日、道場にいた警備兵が別の奴らと入れ替わっていた」


「別の奴ら?」


「格式ばった鎧や制服を着ていた」


「格式ばった…。王都でそんなのがいたな」


「紋章をつけていたな。確か…」


 リンポの視線がある方向で止まる。


「あんたのそれだ!」


 その指はチイヒへ向けられていた。


「なっ…何ですか、急に」


「悪い。驚かせたな。それと同じものを付けていた」


「こっ…これですか?」


 チイヒは胸元の紋章へ視線を落とす。


「ああ。俺の記憶は確かだ」


 リンポはきっぱりと言い切った。


「は…、はあ」


 戸惑うチイヒの隣で、コーフが小声で呟く。


「その兵士って、治安部隊じゃないですか?」


「ええ。その可能性が高いわね」


 チイヒは静かに頷いた。

 王政府の要人が関わる事件や、反逆者の取り締まりを担う特殊部隊。

 一般の事件で動く組織ではない。


「あの寺院が国家転覆に関わったのでしょうか?」


「どうかしら…」


 チイヒは首を横に振る。

 しかし、治安部隊が内輪揉めで動くとは考えられない。


「つまり、その騒動は王国への反逆に相当する何かなのか」


「えっ…」


「あっ…」


 チイヒとコーフは同時に声を漏らした。

 声は押し殺していたが、カチルにはしっかり聞こえていた。


「その後、道場はどうなった?」


「役人たちに取り壊された」


「じゃあ今は…」


「跡地に誰も入れないよう、壁が作られた」


「壁が…」


 ユリィは息を呑む。

 意図は分からない。

 だが、これだけは言える。


「何かを…、隠そうとしているのか」



 リンポの邸宅の前に一人の警備兵が訪ねた。


「庁舎長からの言伝だ」


 見張りのジョオに封筒を差し出す。


「話は聞いている」


 封蝋が刻印されている。

 中身は確認できない。


「親分に渡しておく」


「以上だ」


「帰り道には気をつけな」


 だが今日ばかりは安全が保障されている。

 本来では徒党を組み行動する。

 使いの警備兵には手を出さないよう厳命されていた。


 警備兵を見送ると封筒を抱えリンポの部屋へと向かった。



 メウダ寺院の閉鎖。

 経緯は分かった。

 だが、核心には届いていない。


 部屋には重苦しい空気が漂う。

 そんな中、ユリィが口を開いた。


「そいういえばさ」


「なんだ?」


「あんた、何で助けに来たんだ?」


 リンポは軽くため息を吐く。


「…大きな不手際があってな」


「不手際?」


 気まずそうな表情を浮かべる。


「間者だ。そいつから情報を漏らされた」


「それでか」


「ああ」


 リンポは頷いた。


「誰か分からなかったんだな」


「そうだった。今は違う」


「分かったのか!?」


「ああ」


 リンポの表情が険しくなる。


「誰なんだ?」


「俺が送り込んだ間者のルハだ」


「え!?」


 ユリィは目を丸くした。


「あんたの間者と敵の間者が同じ!?」


「二重間者だ」


 カチルが補足した。


「じゃあ、襲撃の計画を話したのか?」


「いや。察したんだろう」


 この日、運行される馬車の状況を聞いてきた。

 すると積荷に興味を持った。

 そこから、強奪する計画があると推測した。


「そのルハって奴は?」


「姿をくらました」

読んでくださってありがとうございます!

面白い・続きが気になると思って頂けたらブックマーク登録お願いします!

広告の下側にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして頂けると励みになります。

感想やレビューもいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ