表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/41

目的を取り戻した落ちこぼれ

カクヨム、アルファポリスで同時掲載

大幅に書き直しました。展開や登場人物に色々変更があります。読んだことある方もぜひ読み直して下さい。

※ Xにイメージイラストがあります

「行くぞ」


 リンポが地面を蹴った。


 ドウッ!


 轟音と共に、その姿が掻き消える。

 曇天を裂く稲妻。

 そう錯覚するような動き。


「ぬっ!?」


 男は咄嗟に構える。

 すでにリンポは眼前まで迫っていた。


 深く腰を落とす。

 次の瞬間、回し蹴りが放たれた。


 バシィッ!!


 落雷にも似た閃光。

 中心には稲光が散る。


「くう…」


 男は必死の形相で蹴りを受け止める。

 その間には障壁が展開されていた。


「防がれたか」


 障壁越しでも衝撃は重い。

 もし直撃していれば、ただでは済まなかった。


「じゃあこれはどうだ!?」


 その次は拳。

 稲光を纏い次々と打ち込まれる。


 まさに電光石火。

 男は防御に徹するしかない。


「ぬっ……」


 男は両掌に全神経を注ぎ込む。

 しかし、障壁に亀裂が生まれていた。


「なっ…!?」


 気づいた直後。

 それは割れたガラスのように一気に広がった。


 パリン


 破片となって砕け散る。

 男は焦る。


 そんな中、リンポと目が合う。

 この隙を逃すはずがない。

 男は咄嗟に両腕を交差させる。


 それと時を同じくして、リンポの拳が唸った。


「ぐがぁっ!」


 男の身体が弾き飛ばされた。

 轟音と共に家屋へ激突する。

 木材が砕け、土埃が舞い上がった。


「ぐっ…」


 瓦礫の中で男が呻く。


 その腕は震えていた。

 拳を防いだせいか。

 激突の衝撃も強く、立ち上がれずにいる。


 その一方、ユリィらは唖然とした表情で傍観している。


「なんで!?」


 つい先程まで圧倒されていた。

 だが今は違う。

 男の方が完全に押されている。


「俺の動きの方が奴より速かった。それだけだ」


 リンポは背を向けたまま、そう答えた。


「いや、そうじゃなくて…」


 理屈はそうかもしれない。

 だが、求める答えはそれではない。


「あんたの中で何が起きているのか聞いているんだ!!」


 ユリィが迫りながら問う。


 魔力を纏いながら戦う。

 補助魔法による身体強化とは違う。


 全身を走る稲光。

 拳や蹴りに宿る雷。


 初めて見るはずなのに、そんな気がしない。


「おい、お前」


 カチルが肩に手をやる。


「……」


「あれが何か、もう分かっているんじゃないのか?」


「ああ」


 ユリィは頷いた。


「まさか、こんな所で会うとはな」


 カチルは苦笑する。

 完全に予想外だった。


「あんたはどこまで気づいていた?」


「魔力を抑えていると言っただろ。あれから精霊術特有の波長を感じた」


「でも、それだけじゃなかった」


「ああ」


 ユリィは遠目からリンポを見つめる。


「強い、そんな気はしていたけど…」


 カチルも見やった。


「いたんだな」


「まさか、こんな所で」


「ああ。爺さんの使いパシリにされたせいで、こんな展開になるとはな…」


 すでに失ったつもりでいた旅の目的。

 それと縁のある人物に遭遇した。


「あいつは、魔闘家だ」


 精霊術で属性を付与し、武術で戦う。

 リンポの戦い方がそれだ。


「メウダ寺院が閉鎖された頃、旦那とお前の歳の頃は同じくらい。だとしたら、元門下生でも不思議じゃない」


「だな」


 確証はない。

 だがそれしか考えられない。


 一方リンポは男の前まで迫っていた。


「うっ……」


 男の顔が引き攣る。

 満身創痍となった今、抵抗の手段はない。


「こいつか」


 リンポが胸元にある装飾品に掴みかかる。


「そっ…それは」


 男が焦る。

 だが構わずそれを奪い取る。


「なかなかの上物だな」


 リンポは施された宝石を太陽にかざし見定める。


「あれは…」


「何なの!?」


「魔力増強の魔石だ」


「そんな物があるの?」


「なるほど…。全てはこれのおかげか」


 圧倒的な魔力。

 そのカラクリはこの魔石にあった。

 男の魔力はそれで強化された


「そうか!身体能力までは変わらなかったのか!!」


 リンポの勝因はそれだった。

 力と素早さが上回っていたおかげだ。


「あれに気づけなかった俺も、まだまだだな」


 素の魔力ならカチルの方が勝っていた。

 だが肝心なことが見抜けず油断していた。


 リンポは値踏みを終えると、ジャラリと音を立てながら男の前にチラつかす。

 次に屈むと、視線を合わせた。


「これは俺がもらう」


 そのまま懐に仕舞い込む。

 リンポからの勝利宣言だった。


「ぐっ…」


 男が拳を握り締める。


「どうした…?」


 ふと男へ目をやる。

 その顔からは血の気が失われていることに気づく。


「うぅ……」


 その唇は震えていた。


「おい、ビビっているのか?」


 リンポは軽く肩に手をやる。


「心配するな。正直に話せば痛い思いはさせない」


 この後の処遇。

 それを恐れているとばかり思っていた。


 しかし。

 男の身体がビクンと跳ね上がる。


「なっ…」


 血走らせた目がカッひらく。

 そして吐き出すように言った。


「ルキ様!どうかご慈悲を!!」


 男はそのまま倒れた。


「おい!しっかりしろ!!」


 リンポは男を抱え上げ顔を叩く。

 動く気配はない。


 一方、ユリィたちは騒然となった。


「ルキだと!?」


「カリアンって奴が言っていた名前!!」


 ユリィとカチルは顔を合わせる。


「もしかしてこいつらって…」


「奴と繋がっているのか…」


 謎がさらに増える。

 その時だった。


「アヤンちゃん!」


 ナギの声が響く。

 腕の中のアヤン。

 その瞼が微かに震えていた。


「術が切れたか」


「じゃあ、目が覚めたのか!?」


 ユリィがアヤンの元へと駆け寄った。


「アヤン!!」


 必死に呼びかける。

 その声に応えるように、アヤンの目が徐々に開かれる。


「ううっ…」


 焦点の定まらない視線。

 まだ意識は朦朧としている。

 それでも、目の前にいる人物は誰だかわかった。


「ユリィ…さん」



 街は騒然となっていた。

 普段はろくに機能しない警備兵。

 この日ばかりは動かざるを得なかった。


「サカウオや!開けんかい!!」


 サアズの邸宅は総動員された警備兵に包囲されている。

 怒号と扉を叩く音が辺りに響く。


「壊したれ!」


 しびれを切らした警備兵が大槌を持ち上げる。

 振り下ろそうと構えた直後、扉が開いた。


「声がでかいんや」


 団員の一人が姿を見せる。


「おるんか。はよ出てこいや」


 警備兵が令状を掲げる。

 読み上げが終わるや否や、警備兵たちは雪崩込むように邸宅へと入って行った。


「どっちが団員なんだ?」


 ユリィは唖然となる。


「この街の警備兵はそういうもんだ」


 冷ややかにカチルが言う。

 そこへコジリが何食わぬ顔でやって来た。


「物々しいですな」


 その口調はまるで他人事のよう。


「ガサ入れしたところで何か出るのか?」


「さて、どうでしょう」


 表情を変えることなくコジリが答える。


 手がかりは欲しい。

 だが、これは当てになるのか。


「あの魔導士、結局何者なんだ?」


「旦那が回収した魔石の裏に『マーチュ』と書かれていた。奴の名だろうが、そんな魔導士は聞いたことがない」


「同業者のあんたも知らないのか。ルキと何らかの関係はあるんだろうな」


「多分な」


 二人が話に夢中になる中、こちらへと近づく男の存在に気づく。


(逃げ出した団員か!?)


 一瞬そう思ったが警備兵の姿をしている。


(この街の警備兵は本当にガラの悪い奴ばかりだな…)


 男はコリジの前で立ち止まった。


「お疲れ様です、庁舎長殿」


「おお、アンユ隊長」


 どうやらこの男が警備兵を仕切っている。

 捕まえる側だが、逆だと連想したくなる厳しい容貌。

 あえてそのような風貌の者を任命したのか。


「リンポはじきに釈放されます」


「うむ、奴はたまたま近くにいただけだからな」


「仰るとおりで」


 アンユは意味ありげに頷く。

 圧力を匂わせる会話。


 本来であれば、ユリィたちも事情聴取を受けなければならない。

 だがコジリの手回しにより、表向きには行われた事になっている。

 もっともらしい調書が後で作られる。


 その頃、邸宅からは拘束された団員が次々と連れ出された。


「悪人の親玉分かっているのに、何でほったらかしにするの?」


「上は指揮するだけで手は下さない。関わったという証拠がなければ警備兵は動けない」


「みんなが悪人だと分かっていても放置されるのか」


「だから悪人がのさばる。…おや、何かあったのか?」


 遠目からも分かるくらい、警備兵たちが慌ただしい。


「様子がおかしいね」


 警備兵の一人駆け寄り、アンユに耳打ちする。

 報告を聞くや否や表情を変える。


「失礼」


 アンユはそのまま足早に邸内へ向かう。


「何かあったのか?」


「どうやら、そのようだな」


 しばらくして、担架が運び出されてきた。


 乗せられていたのは小柄な髭面の男。

 意識がないのか。

 そんな状態でも存在感があった。


「ぬっ、あの男は…」


 コジリの顔色が変わる。


「あんた、知っているのか?」


「ああ…」


 その表情は険しい。

 ユリィは担架の男を見つめた。


「誰なんだ、あいつ?」


 コジリは一瞬口ごもる。

 そして、軽く間を空け答えた。


「…団長のサアズだ」

読んでくださってありがとうございます!

面白い・続きが気になると思って頂けたらブックマーク登録お願いします!

広告の下側にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして頂けると励みになります。

感想やレビューもいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ