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攫われたコーフ

カクヨム、アルファポリスで同時掲載

大幅に書き直しました。展開や登場人物に色々変更があります。読んだことある方もぜひ読み直して下さい。

※ Xにイメージイラストがあります

 ユリィ達は失踪現場となった建物へと集まった。その内部は雑然としており商品の管理がまともにできているのか怪しい。王都にも魔導学院の近くに似たような店は存在した。客が入る姿を見たことがないが潰れる気配もない。聞いた話では学院から発注された制服や文房具を仕入れ販売するのが主な業務。なので店頭での売り上げが僅かでも経営は成り立つ。しかしこの店はそういう事業形態ではなく単に主人がだらしないだけのようだ。


「アヤンは何も見ていないのか?」


「はい、チイヒさんが騒ぎ出してからようやくいないことに気づきました」


 チイヒの話ではコーフが失踪する心当たりが全くない。実際そうなら自主的に姿を消したとは思えない。


「補佐官殿が黙って出ていくとは思えない。だとしたら何者かに攫われたのか…」


「誘拐ってこと!?」


「今回は私が標的にはならなかったのですね」


 まだ決まったわけではないが、定番となった誘拐がこの街ではチイヒが餌食になってしまった。


「奥に動線があるな」


 客を入れる気がないのかのように積み上げられた商品を縫うような動線は存在する。カウンターで途切れていると思われていたが、その先があった。


「外から見た感じだと狭そうですよ。この先に隠れる場所があるのでしょうか」


 チイヒの指摘通りカウンターの向こうの空間は狭い。階段はあるが木製であるため登れば軋む音が聞こえてしまう。


「おい、外へつながる扉がある」


「え?あっ、暗いから気づかなかった」


 よく見ると開けっぱなしになっている扉がある。建物の内部になれば陽は入らず、その先は光が届きにくい狭小な通路であるため見落としかけた。うまくやれば音を立てずに連れ去るのも不可能ではない。


「この先に進むなら道案内が必要だな」


 ユリィとカチルが通路に戻ると何人かが目を覚ましていた。尋問した結果何人かは再び眠ることになったが、話の分かる人物を見つけられた。



 薄暗い一室に長細い布袋を抱えた男が入ってきた。


「失礼しやす。こいつが仲間です」


 男は脱がすように中身をあらわにすると縛られ猿轡をされたコーフの姿が現れた。コーフは息が荒く赤面している。抵抗が体力を消耗させ、頭部が覆われていたせいで酸欠になりかけていたせいだ。コーフは口が塞がれているため鼻から目一杯空気を取り込んだ。拘束により視界を奪われた恐怖と酸素不足が解消され一応は落ち着きを取り戻せた。


「見慣れない女。制服からすると王都の役人か」


 部屋にいた男はそう検分した。男は王政府から派遣された人間の顔は全て把握している。制服には役職を示す紋章がある。それからコーフの身元を洗ったようだ。


「王都からわざわざこんな場所に女が来るとは」


 横には女がおり、言った言葉には皮肉が込められていたが同時に多少ではあるが賞賛もしている。


「あんたも女だろ」


 当然の指摘に女は軽く笑った。自身もこの街の危険性は承知しており、女が来ていい場所ではない。一方コーフは膝を付き震え目を伏せている。


「おい、顔を見せな」


 女がコーフへと迫ると反射的に目を閉じた。猿轡を外されると顎の下に手を忍ばしてくる。女は強引に目を合わせさせようとしている。


「うっ…」


 このままでは同じ体勢が続くだけ。コーフは涙が出そうになったがなんとか堪え目を開く。そこに映った女の顔は部屋が暗いせいで鮮明ではない。目は合わしたくないが身体的な機能が焦点を合わそうとする。


「えっ?」


 目を疑ったコーフは反射的に瞼がかっ開かれた。


「あんた、まさか…」


 女も同じ反応をしていた。



 ユリィは協力者に従い進む。案内される場所にはコジリの言っていたこの区画を仕切る男がいる。そこに行けばコーフだけでなくあれば逃げた男と神殿から奪った何かの手がかりも見つかる。


「本当にこっちなんだな!?」


「本当だよ…」


 男の背後にいるユリィは手を掴んでおり、いつでも捻り上げられる体勢をとっている。少しでも怪しい態度を取ればそうするつもりだ。


「怪我をしてもこの女が治療するから、いい加減な事を言ったら遠慮なくへし折られるぞ」


「そんなことしたら可哀想よ。ユリィ君はそんな事をしないわ」


 本気か冗談かは不明だが釘を刺したカチルは笑っていた。だが男は抵抗しても無駄であることを理解しているため素直に案内している。しばらくするとある建物の前に辿り着いた。


「こ…ここだ」


「ふーん、いかにもって感じだな」


 平屋が多い中これだけは三階構造の家屋。無理矢理な建て増しをしているため見栄えは他と変わらないが、ここを仕切る人物がいそうな建物である。


「おい、誰か出て来るぞ」


 カチルの指摘通り半開きの扉から人の姿が見えた。


「おっ…親分」


 出てきた男がそのようだ。風貌は他の男達と似た感じだが貫禄はある。男は手下に目をやった。


「ジョオ、ヘタ打ったか」


「す…、すいやせんリンポの旦那!」


 ジョオという名の男は拘束されながらも頭を下げ謝罪する。部下が失態を犯したが頭領であるリンポは怒ってはいないようだ。


「あの…」


 先頭に立つユリィを押し除けるようにチイヒが歩み出て来た。


「コーフさん…、女の方を攫いましたよね?返してください」


 一刻も早く安否を確認したいチイヒが先走る。


「ああ、あの女ね」


 リンポの反応からは隠す気はないようだ。コーフはやはりここにいる。そう確信した直後、背後の扉から小柄で見覚えのある人影が見えた。


「コーフさん!」


 辿々しい足でコーフは建物から出る。見る限り外傷はなく暴行された気配はない。


「しっ、心配かけて申し訳ございません」


 チイヒは咄嗟にコーフの手を掴み引き寄せるとユリィの背後まで退避させた。


「大丈夫!?怪我はないようだけど」


「はっ…はい」


 無事であることを確認してチイヒは胸を撫で落とす。思わず気が緩みそうになった。しかし、これからが正念場である。コーフが戻れば解決するわけではない。チイヒは男を睨みつけ問いただした。


「攫ったのは何のためですか!?」


 私情もあるが聞き出さなくてはならない事案。


「それは私が答えるよ」


 声と共に背後から新たな女性の姿を見せる。


「こんな場所に女がいるとはな」


「それ私達がいる前で言う?」


 カチルは一般的な感想を言ったつもりだが、同行者の構成を考えればナギの返しは当然である。一方ユリィとアヤンは女を見て硬直している。


「へ?」


「ああ…」


 アヤンは怯えるようにナギの背後に隠れると顔を伏せた。その直後、女も何かに気づき同様の反応をした。


「もしかして…」


「あんたは…」


 次に出た二人の声が重なる。


「王都にいた奴だ!!」


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