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神殿の隠された目的

カクヨム、アルファポリスで同時掲載

大幅に書き直しました。展開や登場人物に色々変更があります。読んだことある方もぜひ読み直して下さい。

※ Xにイメージイラストがあります

 ヤサカの指令を受けた一行はシナリニへ向かった。ユリィら冒険者に加えチイヒとコーフには本部から監視を命じられ同行することになった。


「最悪だ」


「そうですね」


 またしてもユリィは巻き込まれた。だが今回は国の暗部に触れるような事態。今までのように事情聴取を受けるだけでは済まない。本来であれば王都に連行され軟禁という形で拘束を受けることになるが、ヤサカの小間使いになる形で猶予してもらうことになった。


「それにしても、あの爺さんって手を回せれる程の力があるんだな」


 温情というより良いように使われている感じがある。それに関しては癪だが拘束されずに済んだことについては多少感謝の念はある。


「お前、あの神殿を見てどう思う?」


 強制的に同行させられたカチルは自身で答えを導き出させようとさせ始める。


「どうって…随分と立派な建物だね」


「そうだ、地方都市には不釣り合いな位にな。これを不思議だと思わないか?」


「言われてみればそうだね…。地元の有力者からの寄付があるのかな?」


「あったとしても相当必要になる。そもそもの話だ、精霊術士に特化した術士は術士の中でも母数が少ない。その養成機関があんな規模の建物を所有している」


「確かにおかしい」


 カチルに指摘されて気づいたがそう考えると不可解である。王都の聖堂ほどではないが建物の規模は大きく内外には豪勢な装飾が施されている。明らかに場違いとしか言いようのない。


「考えれらる出所は一つ。王政府だ」


「なんで王政府が!?」


「あそこには暗黒魔法の研究施設があるからだ。もっともヤサカの爺さんは認めていないがな」


「なるほど、そういうことか!」


 暗黒魔法の研究には国家規模の後ろ盾が必要だと聞かされている。王政府が主導の元で研究しているのであれば資金は潤沢。この豪勢な建物があることに合点がいく。転移魔法で地下から侵入したが、地下施設を建造するには相当な労力と費用がかかる。そこの大部分は神殿内の者でも限られた人物しか入ることが許されていない場所らしい。おそらくそこも研究と関係があるのであろう。


「あの神殿は研究の隠れ蓑として造られたと考えて間違い無いだろう。そこにカナマヤ家の当主が神殿長に就任して今の姿になった」


「なんと…。ナバの神殿にはそのような役割があったのですね」


 確定的な証拠はないが状況的にはこの推測通りであろう。そうとは知らずここへ想いを馳せていたアヤンは明らかに落ち込んでいる。


「そんな場所の神殿長であれば同時に王国の暗部に大きく関わっている事になる。それ程の人物なら王政府に便宜をはかれる人脈を持っていてもおかしくはない」


「闇が深すぎる…。ということは今だと爺さんが面倒見てくれているけど、引退したら王政府の監視下に置かれるのか?」


「最悪そうなる」


「軟禁だとしても牢獄暮らしと変わらないよ…」


 ユリィは落胆した。拘束はされなくても制限のある生活を無期限で送らなくてはならなくなる。


「やはりそうなりそうなってしまいそうですかな、調査官殿?」


 敬語で言われたカチルの問いには口調に皮肉があった。


「私の一存では何とも」


 与えられた業務をこなしているに過ぎないチイヒはそう答えるしかなかった。チイヒは反射的に目を伏せてしまう。チイヒに比はないが後ろめたく感じる。ふとユリィの方へ目を向けると落ち込んだ表情を続いていた。


「はぁ…」


 ユリィは語彙を失い心の内をため息で表現している。


「ユリィ君」


 チイヒが声をかけ近づく。


「何?」


「確かに新人の私には何の力もない。でも父は司法関係に顔が利くから何とかならないか掛け合ってみるわ。それに私も功績を上げられたら手助けできる地位に付けられるかもしれない。だから希望は捨てないで」


「本当にできるの?」


「ええ!使える手段は全て使うから私に任せて!!」


 チイヒは胸を叩いた。それが届いたのかユリィに多少の笑みが見えた。


「役人さん、少し進展したんじゃない?」


 意味ありげにナギが言った言葉にチイヒは慌て出した。


「なっ、何を言っているんですか!?わっ、私は学院の先輩として理不尽な目に遭った後輩をなんとかしてあげようとしているだけです!!」


「へぇ〜」


「そっ、そうです!他意はありません!!」


「頑張りなさいね。あと、私の知る限りアヤンちゃんとは本当に何もないみたいだわ」


「なんでそこでお嬢さんの名前が出てくるのですか!!」


 チイヒの必死に否定したがナギはそれを真意と受け取った様子はない。一方横にいたカチルはそのやり取りにうんざりしている。


「騒がしいな。それよりタシノキ無しで向かうのは不安だな」


 その意見には皆思うところがあった。一時は意識不明の事態にまで陥ったタシノキの容態はかなり回復している。しかし当分は安静が必要なため今回は不参加となった。


「俺とアヤンがいれば何とかなるよ」


 ユリィは楽観的に言ったがカチルの意図はそうではないようだ。


「力押しで切り抜けるならそれでいい。俺が言いたいのは司令塔になる人物が必要だという事だ」


「アイツがその役割なのか。単に強引なだけじゃないのか?俺を野盗の討伐に引き込んだ時はそうだったし」


「確かにあいつは向こう見ずなところもある。だが人を率いる能力は相当長けている。それにこれから向かうような場所でもアイツなら話し合いで解決させられるかもしれない」


「話なんて聞かないような連中の溜まり場で?」


「アイツにはそれができてしまう」


 冒険者には荒くれ者が多いが上に立つには単に強いだけではなれないと聞いたことがある。ユリィ自身も強引に引き入られ始まった関係性だが、今では仲間としてついて行きたくなる何かがある。



 王国の掃き溜めと揶揄されるシナリニ。王政府の管轄下にはあるがそれが機能するのは一部の地域で残りは文字通りの無法地帯。元は日雇い労働者を対象にした宿や飲食店で発展したが、その結果王国中で職を失った者が集まり治安が悪化。やがて盗品の取引場や犯罪者の潜伏先へと変貌する。安全な場所はほとんどなく駐在する警備兵ですらも警邏は必ず複数人で行う。治安維持に消極的なため大通り以外の場所で事件が起きれば警備兵の耳に届かず事件にならなくなる。


 大通りから逸れた小径、王都では違法になるような建て増しをされた建造物が並ぶそこを通り進む女がいた。当然だがここは女一人で来る場所ではない。声をかける男がいた。女は無視したがやがて男が群がり行手を阻む。集まった男達は共通して清潔という言葉に程遠い風体をしている。女は顔を隠していたが体格と背丈から性別は分かる。男の一人が強引にフードを外した。周囲の男達は歓喜した。思っていた以上の上物だったからだ。顔が分かったのはこの時だった。女であれば良いのか、男達は顔もわからずに後を付けていた。


「いつまで無視する気だ?」


「……」


「ここへ女一人で来れば男が放っておくわけないだろ。ひょっとして相手にしてもらうのが目的じゃないのか?」


 男の利己的な発想だがそれに呼応するように男達が下品な声で笑い出す。だがこのような場所に女一人で来るのは自殺行為であることは確か。返答をまたず男は肩へと手を伸ばし近づけた。


「うがっ!!」


 肩に触れる直前、男の手が捻りあげられた。誰もが予測していない展開に男達は身構える。その直後、女が一瞥した。


「うっ……」


 男達は完全にたじろいだ。人数的に考えれば男達の方が圧倒的に優位な筈ではあるが、女の眼力で誰も抗えなくなっていた。


「おい」


 女は捻り上げた男に声をかけた。


「えっ、あっ、はい!」


「バハカタを知っているか?」



 喧嘩慣れした男達でさえもこの女には底知れぬ恐怖を感じ恐れをなし、要求に従いある建物へ案内した。それはこの区画を仕切る男が居住する家。粗末な造りで歩くたびに床板がきしむ。陽が差し込まない場所にあるため薄暗い。しばらくすると奥から人が出てきた。例に漏れず人相は悪い。だが女は臆することはなかった。


「心配するな。俺は女だからと言って油断はしない。あんたはどう扱えばいいか目を見たら分かる」


「そうかい」


「あんたが探しているバハカタだが、奴は名前を使い分けている。よくこの名を調べ上げたな」


「本名かどうかは知らんが、シナリニではそう呼ばれている。そして今ここにいる」


「確かに、今ここにいる」


「兄貴!得体の知らない女に容易く喋っていいのですかえ!?」


「そうですぞ!まずコイツが何者なのか聞かねえと!」


「ケイシだ。悪い、自己紹介が遅れた」


 下衆な男に名乗る気はなかったが、目の前の相手はそれではない。


「相手が誰であろうと名乗るのは礼儀だ、覚えておけ。俺は転売屋のリンポ。別の街の小道具屋では引き取ってもらえない訳あり品の買い取り、希望者がいればそれらを譲っている」


「立派な商売だな」


 リンポの言い方からして真っ当な商売である雰囲気はない。この辺りは流れ込んだ盗品を捌くのを生業としている者が集まる場所。それを仕切っているのがこの男だ。


「ところで王都の裏組織にそういう名の奴がいると聞いたが、それはあんたか?」


「そうだ。私の名前がこの街まで伝わっていたのは光栄だ。少し前までチムビ団を仕切っていた」



 ユリィ一行の遠目に街の姿がある。その周囲には街を封鎖するように柵が築かれていた。


「あともう少しで着くな」


「そうね。それにしても酷いわ。王都でも治安が悪い場所があるけどこれほどではないわ」


「綺麗なものしか見ずに育った役人殿には衝撃的ですかな?」


 再び言われたカチルの皮肉。チイヒは無言で返した。


「そうだ、探すのどんな奴だっけ?」


「似顔絵を見ただろ」


「顔は覚えている。名前は何だった?」


「カリニャだ。ちゃんと覚えておけ」


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