表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/41

災難が続く落ちこぼれ

カクヨム、アルファポリスで同時掲載

大幅に書き直しました。展開や登場人物に色々変更があります。読んだことある方もぜひ読み直して下さい。

※ X1にイメージイラストがあります

 一般的に魔法職は攻撃力が低く、非力だと思われている。

 その中でも、登録したての初心者はカモ中のカモだ。


 ユリィが標的にされたのは、その固定概念ゆえだろう。

 しかし、ユリィはそうではなかった。


「こんな魔導士と戦えるか!!」


 捨て台詞を吐いたシオチキは、一目散で逃げ出した。


「お前!先に逃げてんじゃねえ!!」


 見捨てられた仲間達の怒号が、路地に響き渡る。

 我先にと追いすがり、逃げ去っていく様はどこか滑稽だった。


「やっぱり話が出来すぎていたな


 ユリィは小さく息を吐いた。

 未遂に終わった。

 しかし、被害に遭ったことは変わりない。


 幸い、返り討ちにできるような相手だった。

 しかしながら、普通こうはならない。

 初心者狩りに遭った者は、無事では済まない。


 強盗だけではない。

 人身売買目的の誘拐もある。


 メンバーとして採用はされた。

 蓋を開ければ、囮や捨て駒にするため。

 こうなれば確実に命を失う。


 パーティ内に死人や行方不明者が出た場合、ギルドへの報告が義務付けられている。

 その現場が捜索困難な場所であれば、尤もな理由を添えれば深く追及されにくい。


 冒険者という職が死と隣り合わせである。

 それが横行する一因でもある。


 把握されれば、ギルドは厳罰を科す。

 それでも被害は絶えない。

 手口が狡猾で、証拠を掴むのが困難なためだ。


 一行を見送りユリィは一息ついた。

 直後、大事なことに気づく。


「しまった!帰り道を聞いていない…」


 本来の目的は、それだった。

 追いかけようと思った。

 しかし、距離が随分と開いてしまった。

 今からでは余計に迷う危険性がある。


「自力で帰るしかないか」


 ユリィは向きを変え、再びギルドを目指す。


 懸命に思い出しながら道を進む。

 記憶に自信がない、でも合っている気はする。

 しかし、似たような景色が続くだけ。

 やがて、ユリィは受け入れることにした。


「迷っているな…」


 立ち尽くしたユリィは途方に暮れた。

 だが、立ち止まっても何も解決しない。


 考えを変え、ギルドではなく、まずは大通りへ出る。

 王都のどの位置にいるか、それを把握できれば帰れる。

 気を取り直し、ユリィは足を踏み出そうとした。


「こっちに来い!」


 争うような物音。

 路地の奥から聞こえてきた。


「いやっ!」


 そこには抵抗する少女の姿がある。


「待ちやがれ!」


 男の姿もある

 見るからにゴロツキの風体。


 少女は懸命に抵抗を続ける。

 その目には涙が浮かんでいた。


(これって…誘拐だよな)


 ユリィは呆然となる。


「あの娘は…術士か」


 ローブが形状。

 魔導士とは違う。


 この状況下で、分析ができる冷静さがあった。


「逃げられてんじゃねえよ!」


 あっと言う間に取り囲まれる。


「手間かけさすな!」


 逃げ道は完全に塞がれた。

 それでも少女は諦めようとはしない。


「暴れるな!」


「いい加減にしねえと痛い目に遭わせるぞ!」


 男は乱暴に少女の髪を掴んだ。


「バカ、やめろ!絶対傷つけるなと言われていただろうが!!」


「ああ…、そうだったな。ちっ、面倒くせえ」


 仲間からの制止に従い渋々手を離した。


「それより…、さっきから向こうに誰かいるが」


 突き刺さるような視線。

 それが男たちから向けられた。


(これって、俺のことだよな…)


 念のため周囲を見回す。

 やはり、他に誰もいなかった。


 ユリィは再び分析を始める。


(人気のない場所で、誘拐現場に遭遇…)


 目撃者の末路。

 予想はできる。


「おい、そこの魔導士!」


 やはり、そうなった。

 ゴロツキらは腰からエモノを抜く。

 そして、じわじわ近づいて来た。


「じっとしていたら、楽に死なせてやる」


「こっちは忙しいんだ!」


「魔導士が俺らに勝ち目はねえ、それくらい分かるだろ?」


 既視感、というか先程と同じ展開が起きる。


(同じ日に二回も絡まれる!?)


 ユリィはうんざりした。

 今回は、さっきのチンピラとは違い本職。

 口を封じるために、息の根を止める。

 そこまでやる連中だ。


 だが、ユリィが慌てることはない。

 充分に、返り討ちにできる相手だからだ。


「話が分かるな。助かるぜ」


 ユリィはじっと間合いを測る。

 あと一歩の距離にまで近づく。


 だがその時、少女が再び暴れ出した。


「その人は関係ないわ!手を出さないでください!!」


「黙れ!」


 ゴロツキは少女の口を塞ぐ。

 一方、ユリィは急いで構えを解く。


(調子が狂うな…)


 一時中断となる。


「おい、さっさとソイツをやれ!!」


「おっ…おう!」


 男は指示に従い、ユリィの喉元へとエモノを突き出した。


「いでっ!」


 間合いへと踏み込む、その瞬間が訪れる。


 ユリィの杖が、鋭く男の手首を打ち抜く。

 男は悲鳴と共にエモノを落としうずくまる。

 樫製の杖は骨を折らずとも、行動不能にさせる威力がある。


「あの魔導士、反撃しやがったぞ!」


 完全に予想外の行動。

 修羅場を潜ってきた奴らの驕り。

 面食らった男達に、次はユリィから攻撃を仕掛ける。


「うぐっ!」


「ぐわ!!」


 次々と手首を叩き、武器を封じる。


「魔導士のくせ、にでしゃばりやがって…」


 最初に打たれた男が、震える手でエモノを拾い上げる。

 まだ痛むのか、利き手を押さえている。


(杖術なら、もう勝敗はついているんだけどな…)


 男は怒りに満ちた目を向け、構え直した。

 それに対しユリィも構え、次の手を探る。


 手首への攻撃は一時凌ぎに過ぎない。

 今は杖術の対人戦とは違う。

 相手を戦闘不能にしなければ、何度でも攻撃は続く。


(仕方ない…。痛い目に遭ってもらおう)


 男が再び襲いかかる。

 ユリィはそれをかわし、杖を振り上げた。


「ぐはぁ!」


 今度は左の肩口を狙って、杖を振り下ろす。

 男は肩を押さえ悶えた。


 杖術での有効技の一つ。

 本来なら、防具を着用した上で行う。

 直接受ければ、その痛みは計り知れない。


 一方、残った仲間たちが慌て出す。


「メチャクチャ強えぞ。魔導士なのに」


「こんな魔導士、初めてだ。油断しちまった」


(やはり、こういう反応になるか…)


「いくら強くても、全員でかかればなんとかなるんじゃ?」


「よし、それでいくぞ!」


 号令と共に、男達が一斉にユリィへ飛びかかる。

 だが、ユリィは冷静だった。


 距離を詰める速度にばらつきが起きる。

 その隙を逃さない。


(突きと頭への振り下ろし…、これ以外だ!)


 今は使えない有効技。

 生身の相手だと命を奪いかねない。

 しかし、それに頼らずともユリィには充分だった。


 やがて雁首揃えていたゴロツキたちは地面へと転がり、立っているのは少女を拘束する男一人だけになる。


「ち…近づくなぁ!」


 男は震える手でエモノを抜き、少女の喉元へ突きつける。


「待て!傷つけるなと言われてただろ!?」


「うるせえ!この状況で言ってられるか!!」


 仲間が止める声はもはや聞こえない。

 ユリィは足を止め、杖を下ろした。


「よし、そのまま動くな…」


 声はかすかに震えている。

 だがユリィが従ったことで、男の表情にわずかな余裕が浮かんだ。


「この人の言うことになんて従わないで下さい!!」


 少女が叫んだ。


「このアマ!」


 男は力を込め押さえつけ。

 だが少女は怯まず続けた。


「通りすがりのあなたが、私のために犠牲になる必要なんてありません!」


「黙れ!」


 刃を持つ手に力がこもる。


 一方、少女の言葉は正論だった。

 ユリィは、たまたま少女の誘拐現場に居合わせただけ。

 少女とは会ったばかり。

 そうであれば、犠牲になる義理などない。


「……」


 ユリィは黙って立ち尽くした。

 男は要求が通ったと判断。

 少女を拘束したまま、じりじりとユリィに近づく。


「魔導士、女にその杖を渡せ」


 少女は盾にされている。

 完全な優位を取ろうとしている。


「…わかったよ」


 ユリィは一歩、距離を詰める。


「待て!その位置から渡せ。ゆっくりとだ」


 まだ距離がある。

 杖の先端を握り、腕を伸ばす。

 そうしなければ届かない。


 一方、少女の背後で必死に隠れようとしている。

 身体は男の方が大きい。

 懸命に身を縮めようとするその姿は、見るからに情けない。


「どうして、私のために…」


 少女の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちる。


「掴め!早く!!」


 受け取れば、優勢が変わる。

 少女は渋り抵抗した。

 だが、それはわずかな時間稼ぎ。

 結局従った。


「ごめんなさい…」


 見届ける終えると、男はさらに腕に力を込めた。


「魔導士ぃ!じっとしていろよ!!」


 男は少女を密着させながら後退を始める。

 一歩、一歩。

 それが止まる。


 背中には壁。


「行き止まりか」


 どう動くべきか、男に躊躇いが生じる。


 その刹那、少女はある考えが浮かぶ。

 行動に移すのは危険。

 しかし迷っている時間はない。


 思わず膝が震える。

 男に悟られないよう、必死で抑える。


 今しかない。


 少女は行動に移した。


「ごめんなさい!」


 少女は杖を両手で握る。

 男の足の甲に向かって全力で突き立てた。


「っ!!」


 声にならない呻きとともに、エモノを離す。

 同時に、少女を拘束する力が緩む。


 少女はその隙に身体をすり抜けた。

 すぐさま踵を返し、杖を構える。


 男は壁に背をもたれ苦しむ。

 少女は、そのみぞおちに狙いを定める。


「えいっ!」


 声と共に放たれた一撃。


バシッ!


 鈍い音。

 同時に動きが止まる。


 少女の目線の先には、杖を掴み取る男の手がある。

 押し込もうとしても、びくともしない。


「…っ」


 少女は凍りついた。

 思わず杖から手を離し、その場に座り込んだ。


「このアマが…」


 恐る恐る見上げる。

 そこには、怒りに歪んだ男の顔があった。


「助けて…」


 軽率だったと、少女は後悔した。

 足を引き摺りながらも、少女の方へ近づいていた。


「やめろ!命令を忘れたのか!?」


 その叫びが、男の動きを止めた。

 どうやら、奴らには逆らえない“指示”があるらしい。


「ちっ…」


 男は渋々だが引き下がった。

 怒りはまだ治っていない。


 そんな中、手首を掴まれる感触が起きる。


「なっ!?」


 少女との攻防に気を取られ、ユリィに迫る隙を与えてしまっていた。

 男は慌てて振り解こうとする。

 しかし、もう遅い。


「返してもらうぞ」


 ユリィは男の手首を捻り上げる。

 激痛に耐えきれず、男は杖を手放す。

 すかさずユリィはみぞおちへ拳を叩き込んだ。


「がっ…」


 男はその場に崩れ落ち、意識を失った。


「こっちだ!」


 ユリィは杖を拾い上げ、少女の手を取ると走り出した。


 目指すは大通り。

 人目のある場所なら、追手が来ても手を出しにくい。

 今回も勘を頼りに進むしかない。


(こっちで合ってるか…?)


 だが、今回は運が味方してくれた。

 前方に、行き交う人の姿が見える。

 薄暗い路地から抜け出せると分かると、自然と足が速まった。


「あと少しだ!」


 路地裏とは違い、太陽の光が眩しい。

 人々の話し声が雑踏として耳に届く。


「…はぁ」


 全力疾走のまま飛び込んだユリィは、その場で呼吸を整えた。


 ふと、まだ少女の手を握っていることに気づき、慌てて離す。

 少女の方も息が上がっていた。

 ユリィのペースに合わせて走らされたのだから、無理もない。


 少しして、少女がようやく落ち着く。


「た…助けてくれて、ありがとうございます。あっ、私、アヤンと言います」


 アヤンはそう言うと、深く頭を下げた。


「俺はユリィ。そんなにかしこまらなくていいよ」


 謙遜ではなかった。

 確かに助けはしたが、降りかかった火の粉を振り払っただけだ。

 とはいえ、歳の近い女の子に礼を言われると、嬉しさと照れが同時に込み上げる。


「いえ、本当に助かりました。あの時、ユリィさんが通りかかっていたなかったらと思うと…」


 言葉を詰まらせるアヤン。

 大勢の男に取り囲まれ、連れ去られそうになった恐怖は、想像に難くない。


「とりあえず、警備兵を呼ぼう。俺も一緒に行く」


「お願いします。あの、それと…」


 やはり、アヤンにも疑問を持たれていた。


「魔導士なのに、とてもお強いのですね」

読んでくださってありがとうございます!

面白い・続きが気になると思って頂けたらブックマーク登録お願いします!

広告の下側にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして頂けると励みになります。

感想やレビューもいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ