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因縁の対決

カクヨム、アルファポリスで同時掲載

大幅に書き直しました。展開や登場人物に色々変更があります。読んだことある方もぜひ読み直して下さい。

※ Xにイメージイラストがあります

 野盗と対峙するさなか、タシノキがシゲラムとの一騎打ちを申し出てきた。


「今そんな事を言っている場合か!」


 カチルは即座に反対した。それは皆同意見。敵地のど真ん中にいながらその行為に出るのは能天気としか言いようのない。一方その提案を聞いてシゲラムは口角を上げた。


「ほお、この俺とサシでやり合いたいのか」


 シゲラムが話に乗ってきた。


「お前が良ければな。当然だがあの日と同様手下には手を出さないよう指示してもらう」


「面白い。団長を陥れるための芝居とはいえ結果的に中途半端な形で終わらせてしまった。そのせいでお前に逃げられたと思われてしまうのも癪だ」


「じゃあ勝負は受けてもらえるのか?」


「いいぜ。勝負がつくまでコイツらにはじっとしていてもらう」


「話の分かる奴でうれしい。おい、お前らも手を出すなよ!」


 タシノキは仲間に命じたが快諾する者はいない。だがタシノキの顔は不平を受け付ける気が明らかにない。タシノキの性格をよく知るカチルは頭を抱えた。


「これで良いのか?」


 ユリィも賛同はできずカチルに問う。


「あいつは意志が強いからな…。こんな運びになってしまったらもう聞く耳を持たない」


「一騎打ちになる流れか」


「そうなる。奴は手を出させないと言ってはいるが定かじゃない。気は抜くなよ」


「分かっているよ」


 所詮は野盗である彼らの言う事を信用する気にはなれない。それは全員同じ考えがあるようで構えを解いた者は誰もいなかった。一方仲間の心配をよそにタシノキはこの展開を楽しんでいる。それはシゲラムも同様だった。


「まさか再戦する日が来るとはな」


「冒険者になって以来逃したのはお前一人だけだ。いずれ勝負をつける気でいた」


「随分と執着しているじゃないか」


「おまけに賞金首にまで昇格してくれた」


「俺には実際に素質があったんだ」


「自信過剰ではなかったな。俺はあの日以降改めて修練に励んだ。冒険者として称賛は受けていたが決して慢心しないよう心掛けた」


「謙虚なことだ。そこまでして俺を倒したいのか」


「いいや、倒すのは単なる過程だ」


「過程だと?」


「賞金首には条件として生け捕りと生死問わずの二種類がある。お前は前者だから殺すわけにはいかない。つまり手加減をしなければ賞金は貰えない」


「ほお…、俺を殺すのは簡単だと言いたいのか?」


 シゲラムは見るからに不機嫌な表情をしている。


「殺すだけならあの時でもできた。だが賞金がかかれば話は変わる。だから手加減をできるよう俺は修練した」


 言いたいことをまとめると、タシノキにとってシゲラムは簡単に勝てる相手だと見做している。当然ながら面と向かってそのような事を言えば相手の逆鱗に触れる事になる。


「つまりあの日撤退していなかったら俺は死んでいたと言いたいのか?」


 怒りを抑えるシゲラムは目を血走らせ柄を握る手が震えさせた。


「そうだ。お前と戦って強いとは感じた。だが所詮は力任せの攻撃。早いが単調な動きの繰り返しだった」


「ほざけぇ!!」


 荒げた声と同時にシゲラムがエモノを抜き出すとタシノキに飛びかかった。


 ジャキン


 反射的に抜いたタシノキの大剣が受け止める。ぶつかり合った両者の刃からは耳をつんざくような金属音発せられ部屋中に響き渡る。


「防いだか」


 シゲラムは即座に次なる攻撃を与えた。彼の持つ武器もタシノキと同様に分厚く身幅の広いがまるで小剣のように軽々と振り回している。人並外れた筋力が俊敏な動きも生み出した。


「うわ!」


「危ねえ!」


 後退したタシノキを追うシゲラムが振り回した刃が手下を掠めそうになる。広いとは言えない部屋で行われる巨漢二人の打ち合いは周囲を巻き込みかけた。


「今回はお前が守る番か!?」


 シゲラムの指摘通りタシノキは開始以降防御に徹していた。断続的に一方的な攻撃を受けるだけでタシノキから仕掛ける気配はない。


「ユリィさん!タシノキさんが押されていますよ」


 アヤンには一方試合のように映っていた。しかしユリィを含めて仲間の誰一人心配をしている気配が見受けられない。


「大丈夫。見ていれば分かる」


 タシノキには考えがある、そう皆は思っていた。


「ぐぎゃあ!!」


 悲鳴とともに血が吹き出す。タシノキがついに攻撃に出た。


 ガシャン


 利き腕を斬りつけられたシゲラムはその手に持つ武器を落とすと同時に傷口を押さえた。


「次!」


 シゲラムを斬り裂かんと放たれた二太刀目が突如止まる。タシノキは瞬時に柄頭がシゲラムへと向くよう持ち替えると腹に目掛けて打ち込む。シゲラムはそのまま倒れ込んだ。


「あっさり勝ちましたね」


「ほらっ、大丈夫だって言ったでしょ」


 一方血振りをし終えたタシノキに対して待機していた手下達は構えた。


「バカな、シゲラムの兄貴がやられた!」


「本当に殺さないように戦っていたぞ!!」


「凄腕冒険者だと聞いてはいたがそんな芸当までできるのか!?」


 焦った手下は相談を始めた。結論が出ると全員が同時に仕掛けてきた。所詮は有象無象、束になれば勝てると目論んだようだが叶わず撃退され、それ以外も仲間によって撃退された。


「ナギ、拘束する前にコイツの傷を治してやれ」


 生け捕りが条件であるシゲラムを死なせる気はなくタシノキは治療を依頼した。そこへユリィとアヤンがねぎらいに近づいた。


「宣言通り命までは取らなかったな」


「修練の成果だな。奴と出会うまでは一撃で相手を仕留める技を極めようとしていた。だが奴のために手加減を覚える事にした」


「確かに。一撃で仕留める方が楽だよね」


 武術で戦うユリィにはその気持ちは共感できた。そもそも戦場で相手にトドメを刺すのは鉄則。生け捕りのために手加減するのは身を危険に晒す行為でもある、


「ところでしばらく攻撃を受けていたのはどうしてですか?」


「隙を見つけるためだよ。致命傷を与えずに斬り付けるためには動きのクセを見極める必要があった」


「なるほど、相手を観察できるくらいタシノキさんの方が優っていたのですね」


「それよりも問題はコイツらがここに転移した理由を聞き出さないと」


 ユリィの言う通りそれは謎のままだった。タシノキは息のある手下を連れて来させた。


「うう…」


 意識があるので会話は可能。タシノキは早速尋問を始めた。


「お前らはあの魔法陣で根城からここへ来たんだよな?」


「…そうだ」


「目的は!?」


「それはだな…」


 男は躊躇った。


「早く言え!回復魔法じゃ治らない傷を負わせるぞ!!」


 悠長に聞き出す時間はない。タシノキは威圧的に問いただす。


「ここにいる奴らを皆殺しするよう言われた」


「殺すって誰をだ?」


「術士がいるって言われた」


「ここには術士がいるのか。何のためにだ」


「そこまでは聞かされてない」


 タシノキは返答がわりに睨む。


「本当だ!!幹部の兄貴ならもっと踏み込んだ情報を持っているかもしれない」


 経験上この男からはこれ以上の情報は期待できない。勿論全てを鵜呑みにしているわけではない。ちょうど同じころ別の手下を尋問していたカチルが戻って来た。


「ここにいる術士を片っ端から殺すよう命じられたんだとよ。賊の人数は百人以上で幹部も揃っている。コイツらはここの警備を命じられただけだ。残念ながらそれ以外の情報は聞かされていない」


「幹部はやはりいたか。目的すら教えないとは慎重だな。術士が標的らしいが、だとしたらここは宗教的な施設みたいだな」


 術士が集まる場所となればそうなる。手下は術士の殺害を命じられただけでここがどこかまでは知らされていない。


「幹部のコイツなら何か知っているかもしれんぞ」


 だが肝心のシゲラムは気を失っており頬をはたいてみたが目を覚す気配はない。


「タシノキさん、この人の言う事が本当なら急いだ方がいいと思います」


「そうよ、今その真っ最中かもしれないわ」


 これ以上の尋問を行なっても情報が期待できないのであればアヤンとナギの指摘通り急いだ方がいい。この人数で乗り込むのは危険である。一旦根城に戻り態勢を立て直すことも検討しなくてはならない。


「急ごうよ」


 ユリィはタシノキを急かせた。


「敵の目的だけでなく規模すら分からない上にこっちは十人しかいない。そんな簡単に言うな…」


 そう言い返したタシノキの目には不安そうな面持ちのアヤンがいた。それがタシノキに決断させる後押しになる。


「お前ら、どうやら仲間を呼び戻している暇はねえようだ。今から向かうぞ!」


 タシノキが出した答え。無茶ではあるが反論するものはいない。


「アヤン、行こうよ」


「はい!一人でも多く助けましょう!!」


 ユリィがそう言うとアヤンには笑みが戻る。すぐさまタシノキは一行を先導しながら部屋を後にした。


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