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仲間の過去を聞かされる落ちこぼれ

カクヨム、アルファポリスで同時掲載

大幅に書き直しました。展開や登場人物に色々変更があります。読んだことある方もぜひ読み直して下さい。

※ Xにイメージイラストがあります

 タシノキ以下十名。

 先鋒となった面々が、魔法陣の中央に集結する。


(この先に幹部が…)


 城内にいた手下の数も予定より少なかった。

 同行させている可能性が高い。

 それらが予想通りであれば、激戦となる。


「俺がいない間の指揮は、お前に任せる」


 見送るシユにタシノキは告げる。


「ああ。無茶はするなよ」


 見送る一行が魔法陣を取り囲み、固唾を飲む。


「始めるぞ」


 カチルが転移石へ手をかざした。

 次の瞬間、内側から灯るように輝き出した。

 それに呼応するように、床一面の魔法陣が赤く光を帯びる。

 線が走り、円が重なり、模様が浮かび上がる。


「来るぞ!」


 空気が震えた。

 魔法陣から強烈な閃光が放たれる。


「眩しい!」


 周囲の仲間達は両腕で目を覆う。

 肉と骨、そして瞼までも透過し眼球を焼き付ける。


 やがて光は収束した。

 先ほどとは対極の静寂。

 そこに立っていたはずの仲間の姿は、跡形もなく消えていた。

 祭壇では再び、転移石が蝋燭の光に照らされていた。



 ユリィはゆっくりと目を開いた。


 そこに広がっていたのは、先ほどまでとは全く違う部屋の風景。

 視線を落とせば、足元には見覚えのある魔法陣が描かれている。


 転移は成功したようだ。


(みんなは…、アヤンもいる)


 周囲を素早く見回す。

 十人、全員揃っている。


 無事であることが分かり、思わず安堵する。


 だがその直後、見知らぬ男たちの姿が目に入った。


「なんでまた魔法陣が…」


 彼らも強烈な光で一時的に視力を奪われていた。

 目を覆っていた腕を解放すると、訝しげな表情になる。


「おっ…おい!」


「追加か!?」


「聞いてないぞ」


「俺もだ」


 ガラの悪そうな男たちが、口々に言う。


「そもそも、どうやって転移石を使った!?」


「そうだ!魔導士は頭領と一緒のはずだ!!」


 男たちは慌てる。

 一方ユリィたちは確信が持てた。


(消えた幹部はここにいる)


 推測は当たりだ。

 ここにいるのはビーツ団の連中で間違いない。

 根城にいなかった幹部達も、ここにいると見ていい。


(魔導士がいるって言っていた…)


 その点も裏付けられた。

 だが、状況を整理している余裕はない。


「にしても、見かけない顔だな」


「どこの部署だ?」


「知らねえ」


「俺もだ」


「だとしたら…」


 その言葉で野盗たちが腰元に手を伸ばす。


「どっから紛れ込んだ!?」


 武器を抜き構えた。


「結局こうなるのか…」


 カチルはぼやく。


 転送先は、敵地のど真ん中。

 仲間は呼べない。

 期待はしていなかったが、最も避けたい展開になる。


「何の騒ぎだ?」


 重く、低い声とともに扉が開く。

 新たに、数人の男が入って来た。


「ちょうどいいところへ!」


「妙な連中が魔法陣から現れやして…」


「あれです!」


「おそらく、あの魔導士の仕業かと」


 報告を受けたのは、タシノキより一回り大きい男。

 体格だけでなく顔つきも熊のようで、場の空気を一変させる存在。


「あの隠し部屋を見つけたのか」


「そのようです」


「あの格好…、冒険者のようですぜ」


「なるほどな」


 大男は一行に目をやる。


「賞金欲しさに乗り込んで来た…、というわけか」


 ふと、ある男に視線が止まる。


「そこのお前…、タシノキか?」


 一行の視線がタシノキに向く。


「しっ…知ってんのか?」


 タシノキは、ゆっくりと口角を上げた。


「ククク、やっぱりお前か」


 タシノキの顔が大男へと向く。


「覚えていてくれたのは光栄だ」


 大男の口角も軽く上がる。


「ほお…、お前も俺のことを忘れてはいなかったのか」


 互いに笑っている。

 だが、そこに友好の色はない。


 真顔に戻る。同時に空気が張り詰める。

 二人に何らかの因縁がある。

 それは誰の目にも明らかだ。


「誰なんだ?あのデカいやつ」


「あいつはシマナレ。昔、俺が取り逃がした男だ」


「逃した?」


 数年前。


 国境付近を荒らし回っていた盗賊団がいた。

 その討伐依頼を受けたタシノキは、仲間とともにアジトへ乗り込んだ。


 手下を蹴散らし、最奥に踏み込む。

 すると、一人の男が立ちはだかっていた。

 それがシマナレだった。


「ヤツは自分が囮となると言い、団長を逃がそうとした。そして俺に向かってきた」


 その時シマナレはサシの戦いを申し込んできた。

 罠の可能性はあった。


 タシノキには自信があった。

 そうだとしても切り抜けられると。

 タシノキは話に乗った。


 当然ながら仲間は反対した。

 だがタシノキは跳ね除け、戦いの火蓋は切られた。


「返り討ちにしたら、逃げられたのか?」


「確かに逃げた。だが、恐れをなしてという訳ではなさそうだ」


「どういうことだ?」


「奴は勝負をつける気がない、そんな戦い方をしていた」


「どういう事だ?」


「最初の数回は全力で打ち込んできた。だがそれ以降は守りに徹していた」


「妙だな」


「おそらく時間稼ぎだ。しばらくして奴は仲間と共に逃げた」


「団長を逃すためか?」


「あの時はそう思った」


「あの時は?」


「すぐさま奴を追った。抜け道を出ると助けを求める声が聞こえた」


「誰がいたんだ」


「団長だ」


「団長って…逃げたんじゃないのか?」


「罠にかかり動けずにいた」


「罠…。もしかして、自分で仕掛けて引っかかったの?」


「最初俺もそう思った」


「違ったの?」


「団長がそんなことになっていたら、普通助けるだろ?」


「うん」


「奴はそんな素振りも見せることなく、脇を通り過ぎて行った」


「ええ!?」


 主人を逃すため身を挺したはずの男が、それを見捨てた。


「自分の身の安全を優先したのかな」


「いいや、俺はそうは思わない」


 タシノキはキッパリと否定する。


「目的があったって意味?」


「ああ。これって出来すぎていないか?」


「出来すぎている…」


 その言葉でユリィはハッとなる。


「もしかして、最初から仕組まれていた!?」


「ああ、俺との一騎打ちは茶番。団長を陥れるためのな」


 タシノキはそう結論づけた。

 結局、団長の捕縛を優先したため、シマナレの追撃は中止された。


 そのあと、シマナレは新たな盗賊団を立ち上げた。

 規模は瞬く間に膨れ上がり、やがてビーツ団の傘下に入る。

 そして幹部にまで上り詰めた。


「お前の推測は、だいたい合っている」


 シマナレは否定しなかった。


「何だ、聞こえていたのか」


 シマナレがニヤリと口角を上げる。


「奴は団長の器じゃなかった。だから俺が仕切ろうとしていた」


「乗っ取ろうとしていたのか」


「ああ。実行に移そうとした矢先、お前が乗り込んできた」


 そう語る表情は意気揚々としている。


「あとはお前の考察通り。まんまと罠に引っかかってくれた」


「なるほど。俺のおかげで、手を汚さなくて済んだわけか」


「そういうことになるな」


 義理も忠義もない。

 食い喰われる世界。


 だが所詮は悪党。

 旗揚げのために裏切る。

 よくある話だ。


「お前は夢が叶った。じゃあ俺は恩人ってわけか」


「うまいことを言ったつもりか」


 皮肉を込めた言葉。

 当然ながら敬意などない。


 代わりに、ゆっくりと武器を構えた。

 部下たちも一斉に臨戦体制に入る。

 ユリィらも反射的に身構えた。


「アヤン、後に下がるんだ」


「あっ、はい」


 ユリィはアヤンを背後に庇い、室内を素早く見渡す。


(数は多い。でも…脅威はあの男だけか)


 今回は加護に頼らない。

 この部屋はたいした広さではない。

 下手に使えば、味方を巻き込む可能性がある。


 ユリィは出方を伺った。


「待て」


 おもむろにタシノキが武器を下ろす。


「どうした、タシノキ」


 タシノキは皆を封じるように前に立つ。


「奴と、勝負をつけたい」

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