壁の向こう
カクヨム、アルファポリスで同時掲載
大幅に書き直しました。展開や登場人物に色々変更があります。読んだことある方もぜひ読み直して下さい。
※ Xにイメージイラストがあります
魔法で偽装された壁は誰にでも通り抜けられた。進んだその先には空間があった。探し求めていた隠し部屋はここであろう。隠されてはいたが本来の姿だとそうではない。作戦会議や決起を行うのが目的のようで王城なら王の間にあたる場所だ。
「暗いな」
部屋の窓は全て塞がれており日の光は入らない。光源は蝋燭だけで入り口近辺は暗かった。
「さっき一通り確認したけど、誰もいなかったよ」
ユリィが無事であることを考えると安全面に問題はないと思える。そうであっても怪しさは拭えない。隠れ潜む場所というより怪しげな儀式を行われているような雰囲気がある。
「あそこに何かあるな」
「俺の言っていた祭壇があれだ」
暗くてハッキリ見えないがそこには何かが置かれた台が鎮座している。蝋燭に照らされた光が不気味さを演出させている。
「ん?床に何かあるぞ」
タシノキは床に赤黒い汚れのような何かを見つけた。蝋燭では光量が少ないため見づらいので確認のため近づいた。
「血では…ないか」
一見そう思ったがどうやら塗料の類のようだ。よく観察するとそれは広範囲に及んでおり規律に描かれているように映った。
「模様のように見える…」
光源が限られているため全体像は掴めないが、溢れた何らかの液体によって偶然できたものとは思えない。
「タシノキ、こいつは魔法陣だ」
目を凝らせばそれらは円形に描かれている事が見て取れる。魔法で隠された部屋に描かれた謎の魔法陣。この不可思議な展開には数多くの死闘を潜り抜けてきたタシノキでさえも身震いが起きた。
「何のためにこんなものを作ったんだ…?」
「おそらく転移用の魔法陣だ」
「転移魔法だと!?」
それは名の通り術者が誘うことで離れた場所へと移動する魔法。術者本人が任意の場所に移動するものと、このように魔法陣をお互いに描き繋ぐものがある。
「俺でも扱えない上級魔法だ」
「習得困難な類なんだったな」
「つまりそれを扱える者が賊の中にいなければこんな物は存在しない」
「野盗の集団がそんな大層な奴を抱えているって事か」
「そういう意味になる」
魔法職くずれが野盗に身をやつしたという話は聞いた事がある。しかし、チムビ団が上級魔法を扱える程の者を構成員に取り込んだという情報は一切ない。
「奴らが作ったと見て間違いないのか?」
カチルは魔法陣へと視線を落としながら観察する。
「塗料が新しい。最近描かれた物だ」
状況的に見ればそうであるがタシノキはあえて確認した。しかし目に映る光景は俄かに受け入れ難い。
「じゃあ一体何の目的でこんなものを作ったんだ」
その頃ユリィは祭壇の近くを探索していた。
「ユリィさん、危なくないですか?」
「さっきこの辺まで行ったけど何も起きなかったよ」
ユリィは臆する事なく祭壇の前へと立った。遠目では不気味に思えたが近くで見ると意外にシンプルだった。そこには色々置かれていたが最初に目に入ったある物が気になった。
「石が置いてあるな」
祭壇の中央には意味ありげに鎮座する物体。石と呼んだが真円に近い形をしている。よく見ると宝石のようにやや透けている。どちらかというと水晶玉に近い。
「ただの石ではないようですね」
「うん。あれ?これって何かに似ていない?」
ユリィはつい最近似た物を見た記憶があった。
「もしかして魔石じゃありません?」
「それだ!」
アヤンのおかげでユリィは思い出すことができた。これは炎の剣には嵌め込まれていた魔石と雰囲気が似ている。
「おい、ここに魔石があるのか!?」
二人の会話が耳に入ったカチルがタシノキと共にやって来た。
「えっと…、これだよ」
ユリィは場所を譲り案内した。
「なるほどな」
「何か分かったのか?」
「この魔石があれば転移魔法を発動できる」
「じゃあ習得している術者がいなくてもいいのか?」
「簡単に言えばそうなる」
この話から幹部達の行方が推測できる。魔石と転移用の魔法陣を使ってどこか別の場所に移動した、そう考えるのが順当である。
「武器みたいにコツを分かっていればいいのか?」
「いや、コイツは操作が難しく魔法の心得がないと扱えない」
「それじゃあお前に任せよう」
「お前には引き下がるという選択肢はないんだな」
「当然だ。このまま帰るわけにはいかない」
「お前らしい」
転移した先に何があるかは分からないがタシノキに躊躇はない。誰の意見を聞くことなく話は決まった。
「一度に運べられるのは十人くらいか」
「俺とお前、あと八人選べ」
タシノキは仲間を物色する。それは傍観しているユリィの目に入った。
「アヤン、一緒について行きたいんだけど…」
「私は構いませんよ」
「どんな危険があるか分からないよ?」
「ユリィさんがいれば心配ありません」
アヤンは快諾してくれた。嬉しい反面巻き込む形になるため遠慮もあった。
「なあ、俺とアヤンも連れて行ってくれ」
「来てくれるのか。正直助かる」
タシノキは二人の参加を認めた。
「じゃあ私も行くわ」
話を聞きつけたナギも表明した。
「回復役は必要だから頼む。それから嬢ちゃんの援護もな」
まずは五人が決まった。その後タシノキが厳選した五人の剣士が加えられた。
「まずはこの十人で向かうか」
「その暇があればだがな」
「暇って?」
「状況によっては仲間を呼びに戻れないという意味です」
到着直後に戦闘が始まればこの十人で対処しなくてはならない。そもそもこれから向かう先はどこであるかすら分かっていない。
「何だ、怖気ついたのか?」
「そっ…、そんなことないよ」
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