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見つけられない標的

カクヨム、アルファポリスで同時掲載

大幅に書き直しました。展開や登場人物に色々変更があります。読んだことある方もぜひ読み直して下さい。

※ Xにイメージイラストがあります

「どうやら敵は打って出る気はないようだ」


 扉に開く気配はなく野盗から攻撃を仕掛ける様子はない。


「文字通りの籠城戦か」


 こちらが引き下がるのを期待しているとしてもタシノキ達がそれに応じる気になるわけがない。


「突入するか」


「そうするしかない。ところでナギ、怪我の治療はどうだ?」


「ええ、終わったわ」


 伏兵からの攻撃を受けた仲間には幸い致命傷に至った者はおらずナギの回復魔法で無事に回復した。


「さすがです。短時間で全員の傷を…」


「術士だからね」


 アヤンは感嘆した。一方ナギは術士としての本分を果たしたに過ぎないとしか思っていない。


「これができないなんて術士としてもどかしいです…」


 この光景にアヤンは自身の不甲斐なさをぼやいた。


「おい、タシノキ」


「何だカチル」


「おかしくないか?」


「おかしいって何がだ?」


「今日ここには幹部が集結している。だとしたらこの状況に幹部が黙っていると思うか?」


「言われてみればそうだ!」


 それを考えると確かにおかしい。侵入者に蹂躙される事態になれば幹部が直接出向いて対処するはずだ。


「幹部は間違いなく集まっている。周辺を監視していたレンジャーがここに向かう幹部の姿を確認したとの報告がある」


 シユは指摘される前に反論した。幹部が集結したという情報は間違いではない。


「入り口の前まで来て引き返すなんてできない。中に入って確認するぞ」


「危険だがそうするしかないか」


 カチルは罠探知の魔法を詠唱し扉の先を探った。


「どうやら仕掛けはなさそうだ。みんな下がれ」


 一同が扉から距離を取ったことを確認するとカチルは再び詠唱を始めた。紅く光った手のひらを扉へ当てると爆発音と共に扉は四散した。


「お前ら、突入だ!」


「おお!!」


 カチルによって破壊された扉からは一行が雪崩れ込んだ。周囲には爆発で吹き飛ばされた野盗達が慌てふためいている。野盗達は応戦しようとしたがすでに出鼻はくじかれている。戦いはすぐさま冒険者達が優位となった。


 城内には怒号が飛び交う。建物の内部も侵入者を拒むように複雑に入り組んだ構造をしている。しかし冒険者らには多少の時間稼ぎにしかならない。一行は城内を下層から順に制圧してやがて最上階に達した。


「何故だ…」


 タシノキとカチルは四階のバルコニーから階下を見下ろしながら言った。


「戦った賊に幹部と思える者はいなかった」


「ああ。倒したのは下っ端ばかりだ」


 標的である幹部の姿を見ることもなく建物は制圧された。このままで変えればクエスト失敗になる。


「タシノキ、生け捕った賊を連れて来たぞ」


 倒した野盗で息のある者は拘束した。その中の傷の浅い何人かを尋問するために連れてこさせた。


「おいお前、今日ここには幹部が集まっているはずだよな」


「……」


「それなのに何で誰も出てこない!?」


「……」


 威圧的に詰問したが答える気配は一切ない。タシノキは男の腹を蹴り上げた。男は悲鳴と共に白目を向いたが哀れみを感じることはなく、すぐさま隣の男の胸ぐらを掴み上げた。


「次はお前だ!さっさと答えないと同じ目に遭うぞ」


 男は怯えた表情で失神した仲間に目をやった。


「……だ」


「何だって!?」


 男は言葉を発したが恐れのあまりで呂律が回らないのか聞き取れない。



「何かの作戦があってそれに出払っているらしい」


 タシノキは聞き出した情報をカチルとシユに話した。


「どんな作戦なんだ?」


「それは聞かされていない」


「いつどうやって根城から抜け出した?」


「その方法も聞かされていない。普段通り見張りをやらされていただけだとよ」


「そうか。ところでタシノキ、別のやつが妙な情報を聞き出している」


「妙だと?」


「隠し部屋があるらしい」


「どこにだ?」


「この階にだ」


「おいシユ、どういう事だ?」


「言われてみればこの階層は全体の広さに対して目で見える床面積が狭いような気はしていた」


「レンジャーのお前ならそれに気づけよ」


「俺は近くまで来たことがあるだけで建物に入ったのは初めてだ。そもそも内部の調査と地図が作成されたのは奴らが住み着く何十年も前。しかも改築をされているとなれば昔作られた地図なんてアテにならない」


 これにはタシノキは落胆したがよくある話だ。シユが知る城内の情報は引き継いだものだった。


「頼りない…。ところで賊から場所は聞き出せたのか?」


「ダメだ。そもそもこの階は限られた者しか上がれずしょっぴいた奴らは今初めて足を踏み入れたと言っている」


「つまり何も知らないのか。情報統制はしっかりしているな」


 知らされていない情報は漏れる心配がない。教えない、それが流出を防ぐ最も確実な手段である。



 一方、尋問に関わっておらず暇を持て余したユリィはアヤンと共にこの階を探索していた。


「勝手に歩き回って大丈夫ですか?」


「変なことしなければ怒られないよ」


「そういうものでしょうか…」


 ここは裏手から正面へ回り込むように通路が造られており小部屋がいくつかあった。


「玉座の間はないんだな」


「お城と言っても立て篭もるために造られたので必要はなかったのではないですか?」


「城というより拠点だからか。普通はバルコニーのお向かいにあるのが定番だけど」


 ユリィは手近な壁に手を当てもたれようとした。その時ユリィは異変を感じた。支えである壁が存在するはずなのにバランスが崩れてようとしている。



「何だ?」


「女の叫び声…」


 悲鳴を聞きつけて一行が向かった先には慌てふためくアヤンがいた。


「どうしたの、アヤンちゃん!?」


 ナギが問いかけるとアヤンはある場所を指差した。アヤンの指先に目をやったがおかしな点はない。


「ユリィさんが…」


「そう言えばいないわね。どうかしたの?」


「壁の中に消えました」


 一行は騒いだ。


「ただの壁だよな」


 タシノキの言うとおり目の前にあるのは石のレンガで構成されたありふれた壁だった。通り抜けられるようには思えない。


「でもその中に吸い込まれるように入っていきました」


 そう訴えかけるアヤンにふざけている気配はない。疑っているわけではないがにわかに信じられない。触れて確認すれば真偽は分かるが危険なので誰もしようとしない。


「俺の探知魔法で何かが分かるかもしれない」


 そう言うとカチルは魔法を発動させ一行は結果が出るのを見守った。


「どうだった?」


「何もない」


「何もないって壁の向こうには何もないって事か?」


「残留思念が一切見当たらないという意味だ」


「何もなければそうなるな」


「だが人工物の中でそのような結果が出るのは逆に不自然だ。だとしたら妨害魔法がかけられている可能性がある」


「つまり何かがあるというわけか」


 そう結論を出そうとしている中、周囲が騒ぎ出した。


「ちょっと、壁から何かが!」


 指摘された場所からはそれが徐々に顕になる。合計十本になる肌色の物体。やがて手のひらが露出することによりそれらは指であったと理解できた。


「人の手か?」


 しばらくすると頭、そして胴体が表へと現れた。


「ユリィさん!!」


 出て来たのは姿を消したユリィだった。


「あれ?みんなが集まっている」


「心配していたんだぞ!」


 タシノキは叱責した。何があったのかは分からないが見る限りユリィに怪我は見当たらない。


「そうだったんだ…、ごめん」


 ユリィは皆に心配をかけたことを謝罪した。


「無事で何よりです」


「アヤンもごめん。それよりみんな、中に変なものがあったんだ!」


「変なものだと?」


「祭壇とか色々怪しげなものがあってそれを見ていたら長居してしまった」


「なんだと!カチル、ここが隠し部屋かもしれない」


「かもな」


「おい」


 手がかりと思しきものが見つかり二人はユリィへと詰め寄る。


「詳しく教えろ」


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