26話 ランクアップ
「枯れたな」
「そのようですね」
「まあゲームじゃないんだから一気に同じこと繰り返したらそりゃだめになるよなぁ」
「ゲームって何です?」
「ゲームってのはな・・・」
希少ドロップの出し方が分かった俺たちは、その検証のために30層のボスを倒しまくった。
キリのいいところで30回だ。よく頑張ったと褒めてもらいたい。
俺たちの考えはあっていたようで核となるものを怖さずにボスを攻略すると希少品がでる可能性があるようだ。
30回のうち5回がアダマンタイトだったので大当たりだろう。ただこれ俺の運(他の人間と比べて異常に高い)が有ってこそだとすると、他の人が同じことをやっても出ないかもしれない。
当たりの5回は前半に来ており、後半は0だ。そしてだんだん宝箱の中身がしょぼくなっている。俺の運を持ってしても鉄の塊(手のひらサイズ)とか銅の塊(同じく)。一番最後は銅の欠片(親指サイズ)になった。ゲームでボス戦普通にやってこれ出てきたら殴るよ?
正確なところはわからないがこのダンジョンのエネルギーが切れたのだろう。やりすぎたね!
ボスドロップを大量に抱えた俺だが一つ悩みがあった。このアダマンタイトをどうするか、だ。
順当なところで言えば自分達の武器にすることだし、売れば相当な金に成るだろう。
ただこの人間の世界にこれ以上強い装備を持ち込んでもいいのだろうか。
俺のせいでこの世界のバランスを崩すのは望むところじゃないし、自分が持ちこんだ物で人間族が他の人族を侵略するかと思うと躊躇われる。
心情的な話で言えば俺はこの世界の人間族に味方する気はない。現状侵略戦争を仕掛けているのは人間族なのだからそれを加速させるようなことはしたくないと思っている。
今回売らなかったとしても、俺達がこれを世に出せばこのダンジョンを多くの人間が攻略することになる。アダマンタイト等の新たな供給源として活性化するだろう。しかも鉱脈等とは違い期間をおけばまた宝箱から出ると予測できる。
「って考えてるんだけどどう思う?」
「そうですね・・・。竜人族としてはこれ以上迫害が進むのは避けて欲しいところです。このダンジョンが人間族の武器供給源として動き出すとなると他の種族の先行きは厳しそうですから」
「だよねぇ」
「ご主人様のパーティに入ってればかなりの速度でスキルを身につけられるのですよね?」
「そうだね」
「私が鍛冶を覚えますか?」
「あー自分達で作る、か・・・ちょっと悩むわ。とりあえずアダマンタイトは秘密でいこう」
「分かりました。これだけ荒らしたんですからしばらくは宝箱から出ることもないでしょうしね」
俺達がこの辺にいる間は安心だね!
アイラに任せるのもいいけど自分で自分の武器を作るというのに憧れはあるし、やってみようかなぁ。
ゲームだと鍛冶関連は必ず手を出してたしね。
ちなみに『壊砂』には土属性に干渉しやすくなるという特殊能力があった。土魔法が使いやすくなるし弱点の魔物がいればより攻撃力が増すということだ。
強さ的にはミスリル武器と言った所か。硬さの割りに軽いのがいいね。
俺達はダンジョンを出てそのままギルドへ向かう。
受付のエミさんに30層を攻略した旨伝えるとギルドマスターの部屋に通された。
エミさんは最初信じてくれなかったというか。昨日の今日で冗談ですよね?とか言って固まってた。
信じたくなかったようだ。
ギルドマスターには証拠としてかばんの中にごろごろある金塊を見せた。
信じてくれたのはいいのだが、Sランクより進行スピードが速くて意味わからん。やっぱり人間じゃないのでは?とか言われた。どいつもこいつも人を人外扱いしよって!
攻略情報は水と土の魔法だけを伝えておいた。ぶん殴って倒したとか言ったらまた人外扱いされちゃうからね。この攻略法を試してみてうまくいくようならランクをAに上げると言われた。Aランクになると税率が10%に下がるとのこと。なかなかでかいな。
攻略情報関連の話が終わると、昨日の清算の話が始まった。ミスリル等の値段はしっかりでたみたいだ。とりあえず白金貨5枚を即金でとのこと。白金貨5枚ってのは帝都でそこそこの家が建つぐらいの値段だそうだ。さすがバックボーンが国そんな大金が即日で出るなんてすごいな。とりあえずってのは帝都でオークションをして、5枚以上で売れた場合は差額の50%がもらえるらしい。
うーん、高い税金のことを考えるとなかなかいいシステムではなかろうか。自分でオークションに持ち込めばもっと儲かるかもしれないけど、そのためには帝都に行かないといけないし、その間ばっちり拘束されてしまう。これが冒険収めのアイテムとかだったら自分で売るけどこのダンジョンでもうしばらく活動したいしね。冒険者は公務員だから優遇されてるのかな?
冒険者ギルドを出ようとした所で双龍の連中に話しかけられた。
「君が30階をクリアしたと噂のケンかい?」
「はい、そうですけど」
「僕はSランクパーティ双龍のリーダーマテウスだ」
「はあ、どうも」
「少し話があるんだが、ちょっといいかな?」
うーむ、おもっくそお断りしたいけど酒場からの目線がきつい。気配探知覚えたせいでギルド中が俺たちを見ているのがわかってしまう。
「わかりました。どうすれば?」
「会議室があるからそこへ行こう」
双龍の後ろに続いてギルドの会議室に入る。机に向かい合って座る俺達。
「単刀直入に言おう。ソロで30層まで進んだ君の腕を買って、俺たちのパーティに君を入れてあげようと思うんだ」
「・・・」
「俺たちはSランク、君はCランクだからこれほど名誉なことはないよ。それにソロじゃダンジョン攻略に限界があるだろう。俺たちがいればこれからの攻略もはかどるよ」
うーむ。頭がパーなかわいそうな人だったか。何とかして断ろう。
「俺はこのアイラとパーティを組んでるので、申し訳ないですがお断りさせてください」
「? アイラってもしかしてその獣人の奴隷かい?」
「ええ、そうです」
「君、奴隷なんかに名前付けてるのかい?まあ人形に名前つける奴もいるからいいけど、他では言わないほうがいいよ?おかしな奴だと思われてしまうぞ」
本当に不思議そうな、善意で言っているような感じを受ける。それが余計に頭にくる。
「・・・」
「持ち物は個人の自由何だけど・・・そうだな。俺たちのパーティに入れてあげるからその奴隷は売ってしまいなよ。穢れた獣人族なんて連れてると外聞が悪いぞ。代わりに強い装備もいくつか見繕ってあげるよ」
この野郎、この場で殺してやろうか。
怒りのままに動きそうになる俺を、アイラがこっそりと引っ張る。
・・・
アイラのほうが大人だな。
「俺はSランクなんて名前だけの称号に興味はないし、こいつが道具だというならあんたたちの持ってるおんぼろよりはるかに役に立つさ。だからパーティに入るつもりはない。」
双龍の連中の顔に分かりやすく憤怒が浮かぶ。今まではにこにこと気持ち悪い笑顔だったからな。
暴れるのはやめるけど、売られた喧嘩は買うよ?
「あんた!マテウスがせっかく誘ってあげてるのに私たちを馬鹿にするなんてどういうつもりよ!それにその獣人なんかと私たちの滅竜装備を比べるなんてなめるんじゃないわよ!」
「そうです。取り消してください」
「俺たちSランクパーティに喧嘩を売る意味がわかっているのか?」
等と口々に文句を言ってくる。
「うるせえ。最初に俺のものを侮辱したのはお前らだろうが。誘ってあげた?自分達のパーティが無能だから助けてくださいの間違いだろうが、雑魚が」
怒りのままにぶち殺したいのを我慢して、恐怖スキルをほどほどで使う。
「なっ」
全員が青い顔をして固まる。俺の恐怖は既にLv5だ。並みの耐性では耐えられない。
「俺たちに関わるな。次は殺すぞ」
俺とアイラは部屋を出て宿屋に帰る。その前にエミさんにパーティの誘いを受けたけど断ったことを伝えておく。恨まれたりしないですかね?とびびってるように振舞って伝えておいた。やつらが騒いでもめんどくさいからな。
ちなみに会議室での会話は結界を張ったから外には漏れていない。そうじゃなきゃまだダンジョンにもぐりたい俺はあんなに堂々と敵対はできない。
はあ、やれやれめんどくさい連中に目をつけられたわ。本格的な戦いはオリハルコンをゲットしてからにしてくれないかなー。
☆
「はあっはあっ・・・、何だ今のは。竜族と戦った時のような・・・」
「く、悔しい。Cランクなんかに!」
「俺たちを脅すなんて許せん」
「だが、ギルド内で揉め事はまずいぞ。いかに我々でもまだ成果をあげてないこの町で、あいつ相手の醜聞はまずい」
「ダンジョンで殺そう」
「いいのか?ばれたらただじゃ済まんぞ?」
「奥のほうならばれねえだろ。それに・・・この屈辱はあいつの悲鳴じゃなきゃ晴らせそうにねえ」
「そうね!泣き叫びながら土下座したら殺してあげるわ!」
「獣人・・・御執心の・・・質に・・・いや、・・・ワープ・・・・・・」
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