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アルフォンスは魔導士ではなく、猫である  作者: 猫のアミーゴ


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第4話 猫とクッキーと情報料

家に帰るとツバキが駆け寄ってきた。

《坊ちゃんどこ行ってたんだよー?お腹減った、いい匂いするー》

あー、ツバキにオレの名前教えてなかったな。

ツバキにまで、坊ちゃん呼ばわりはされたくない。

《オレ、名前、アルフォンス》

《お前の名前、アルフォンスなのか。長くて言いにくい》

《アル、呼ぶ》

《わかった。アル。ごはんー》

ツバキは、袋を気にしている。

古い方から使うべきなんだろうけど、一日ぐらいならどっちでもいいか。

まだ暖かいし。

オレは、袋からツバキ用のごはんを取り出して、ツバキの前に置く。

今度のは茶色じゃなく白っぽかった。同じくクリーム状だ。

何がちがうんだろう?

ツバキの食いつきは良かった。

夢中になって顔を突っ込んでいる。

その間に、オレは袋の中身を片付けていく。

これは、魔石冷蔵庫にと。

「ツバキちゃん用のクッキーです」と書かれた小袋が入っていた。

ハンナって、超人すぎじゃない?いつの間に作っているんだろうか?



さて、自宅でくつろぎたい所だけど、形だけでも調査してないとマリアが怒るだろう。

オレは、再び出かける準備をし始めた。

《どこか行くのか?》

毛づくろいをしていたツバキが、オレを見上げてきた。

《レンガ商店街、調べる、行く》

《!!ニャーも行きたい!》

かぎしっぽは、レンガ商店街にもよく行っていた。

ツバキは、かぎしっぽの不在による縄張りの変化が気になるのだろう。

まあ、仕事じゃないしな。調査しているフリだけだし。

《一緒、行く、これ、お前、運ぶ》

ツバキは、おとなしくカバンに入ってくれた。

カバンから顔を出す。かわいいかも――知れない。



レンガ商店街に向かって歩いていく。

ツバキは、物珍しげにきょときょとしていた。

《早いな。位置も高いし、楽だ。アル、これいいな》

ツバキは終始ご機嫌だった。



さて、マリアの家に着いた訳だが、とりあえず現場見なきゃだよな。

「マリアー!!」

マリアを呼ぶ。

マリアは、窓から顔を出した。

「アル兄、感心。ちゃんと来たね。今行くね」

しばらくして、ドアからマリアが出てくる。

「……!!もしかして、それが噂の猫ちゃん」

猫に配慮して、小声で話しながら、ツバキと目の高さを合わせてくる。

ツバキがいたらマシンガントークこなくていいなー。

オレはひとつ学んだ。

《アル、こいつハンナの匂いがする。敵じゃない?》

《マリア、ハンナ、娘、敵、違う、少し、強い》

ツバキは、マリアの匂いを嗅いでいた。

「猫ちゃんのお名前は?」

「ツバキだ」

「アル兄にしては、いい名前だね。ツバキちゃんかわいいねぇ」

そんなにオレのネーミングセンスってないんだろうか?

ちょっと凹んだ。



ひとしきり、マリアがツバキに構った後、現場に案内してもらった。

路地に面した場所に大量の植木鉢の破片らしきものと土がこぼれていた。

「まだ、片付け終わってないの。道をふさいでいた部分と花の保護優先だったからー」

超人ハンナと違って、マリアにはそこまでの超家事能力はないから仕方ない。

「調査には、現場が残っているほうがいいからな」

「そう、そうなの!だから片付けまだでも仕方ない」

うん、ハンナに聞かれたら怒られるな。

「どれぐらいの鉢があったんだ?」

「たしか30ぐらい……かな」

あー、そんなに割られたら腹立つよなー。

「なんか足跡とか、遺留品とか、犯行時刻とかわかるか?」

マリアは考えこみながら、ひとつずつ答えた。

「足跡はなかったわ。特にここにあったもの以外は落ちてなかった。朝起きて水やりにきたときに気づいたから夜中のうちだと思う」

ほぼノーヒントだろ。それは。

でも、賢明なオレは口に出さない。

「片づけるときにおかしなことなかった?無事なのを最後に見たのは?」

「最後に見たのは夕方の水やりの時だね」

わかるのは犯行があった時間ぐらいしかないと。帰りたいなー。

「じゃ、アル兄。よろしくね。調査終わったら片づけてくれると助かる」

「おいいい!!」

マリアは、とんでもないことを言い放って、去っていった。

片付けまでやれとな。ひどい女だ。



さて、今日は帰るか。

《ツバキ!お前、まさか人間に捕まったのか?》

壁の上から一匹の猫が、オレたちを見ていた。

この黒猫は……そうだ。バケツだ。

かぎしっぽの記憶では、バケツから餌をとろうとして頭からかぶり、慌てて壁にぶつかって難を逃れた猫だ。

《ちがう。ニャーは捕まってない。えーっと》

ツバキは、一瞬言いよどんだ。

《これ、乗り物!高くて速い》

さらっと、オレを乗り物扱いしやがった。



《そうか……?お前、あんまりかぎしっぽさんから離れるなよ》

バケツは、不審げにオレを見つめた。

ツバキはちょっとだけ、顔を伏せた。

かぎしっぽのことを告げないのは、おそらくいなくなったことが知られれば、ここはすぐに別の猫の縄張りになるからだろう。

まだ、若いツバキは、かぎしっぽの縄張りを維持できない。

たぶん、ツバキは分かっている。



猫なら何か見てるかもな?

オレは、ふと思いついた。

《植木鉢、壊れる、原因、知ってる、か?》

《この人間、猫の言葉わかるのかよ?》

《わかる、少し》

バケツは興味深げにオレを見た。

《情報料くれよ。人間。ただじゃ教えられないな》

そりゃそうだな。オレは、カバンに何かないか探す。

お菓子でもあればいいけど……。

指先に、かさりと何かが触れた。

ツバキ用のおやつクッキーだ。いいものがあった。



《これ、情報、料金、なる、か?》

クッキーを差し出すと、バケツは鼻先を近づける。

《!! いいだろう!それ、そこに置け》

猫用クッキーは、親指の先ほどのサイズだったので、3枚、言われた通りに壁の上に置いた。

《うんめぇ!なんだこれ!なんだこれ!》

バケツは、むさぼり食った。

《アル、ニャーも食べたい》

ツバキが袋に爪を立てた。

これ、合法だよね?食いつきよすぎじゃないか?

ハンナ何いれてるの?

バケツも、ツバキも必死だった。ちょっと怖いよ。

袋が空になるまで、2匹は正気に戻らなかった。



《もう、ない、情報、教える、する》

さんざん食べたのだから、白状してもらおう。

《その植木鉢の周辺は、ハナクロのトイレだからハナクロなら何か知ってるんじゃないか》

情報と料金が釣り合ってないぞ。おい。

バケツも何か思うことあったようだ。

《今の奴、また持ってくるならこの付近の猫集めるぞ。情報集まるんじゃないか?》

《今日、無理、明日》

ハンナに頼みこもう。ツバキが全部食べちゃったことにして。

《また来たら、この辺りにいるから呼べよ》

バケツは去っていった。



再び、オレ達はマリアの元に戻った。

「何かわかったの?」

「調査のために、お願いがある」

「何?」

「ハンナ手製のツバキ用のクッキーが大量に欲しいんだけど」

「はい?」

「いや、ツバキがね。全部食べちゃって」

「それ、調査じゃなくてツバキちゃんのおやつってことだよね?あげすぎはダメよ」

オレは苦しい言い訳を続けた。なんでこんなに苦労してるんだろ。

「ツバキの友達もきててね……」

「んー、じゃあ仕方ないのかなぁ、お母さんに頼んでおくわ」

「頼む。明日取りに行くからー」

よし、頼み逃げだ。

「ちょ……!?」

オレは、ツバキを連れて戦略撤退を行った。断じて逃げではない。


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