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アルフォンスは魔導士ではなく、猫である  作者: 猫のアミーゴ


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ネリー外伝9 聖教会の秘密とネリーの大暴走

※番外編です。今回はネリー視点のお話です。

※対応本編:第31話 首輪の布と聖教国、第32話 猫の首輪と三人の男

アルは狼狽えていた。

「ネリー、すみませんでした。断りもなく猫トイレのテスト機を渡してしまって」

その様子にちょっとだけ安堵を覚えてしまった。

アルは、ミリアムの飼い猫が車から捨てられたところを保護したのだという。

「猫を車から捨てた?!なんてことを!!」

かわいい女性だと思っていたけど、このミリアムという女は最低だ!!

たとえ、アルの恋人だったとしても許せないわ!!

私はミリアムを睨みつけた。



「それは同僚がやったことなんです!!」

私はじっとミリアムの弁明を聞く。

「あー、今のじゃなくて、元職場の同僚が私への嫌がらせでブラウを捨てたんです。それをアルフォンス様が保護してくださって……」

ミリアムが捨てたのではない…?

私はアルに確認するために視線を向けた。


「ノラ猫のボスから助けてやってくれと頼まれたんだ。ミリアムを見つけるまで預かってた」

アルがノラ猫から頼み事されることは考えられる。

「それがきっかけで元職場をやめることになって、アルフォンス様の実家で働くことになったんですよー。で、この家でブラウが使っていた猫トイレもいただいちゃったんです」

うん……まあ、一緒に暮らしていた猫のために、猫トイレを持っていくのもわからなくはない。

「アル、大変だったのですね。でも言ってくれれば私にできることは協力したのに。相談して欲しかった……」

今の私、嫉妬丸出しだったんじゃないかな……。ううう…。


アルはおろおろしながらも、

「ごめん。でもネリーに話す暇がなくて……」

「手紙ください」

「……はい」

はっ。とっさにいつもの『押せ押せ』で行ってしまった。

でも、結果オーライかも……知れない。



アルが席を外した間にミリアムと話をした。

うん、猫好きに悪い人はいない。

ミリアムの飼い猫ブラウは、アンバーと同じ白猫らしい。

機会があったら会わせて欲しいな。


アルが戻ってきた。

どうやら、かぎしっぽさんの首輪を持ってきたらしい。

「ネリー、かぎしっぽの首輪持ってきたんだけど、こんな感じだったらいいのか?」

首輪にミリアムが反応した。

「その布。見覚えがある。神官様が何度か持ち帰ってきた奴ですね」

「神官……?」


聞きなれない職業だ。

「ミリアム、神官様ってどういう方なのですか?」

「あー、私の前の職場って聖教会でね。最近この国に来たんだけど、そこで雑用してたの。神官様は私の元上司っていうのかな?」

「聖教会って、アウロラ聖教国のですよね?うちの国にはないはずですよね?」

「エルンスト様がおっしゃるには、アウロラ聖教国が聖教会を設置するためのカモフラージュ……橋頭堡(きょうとうほ)?にしようとしてた施設かな」

何かすごいワードが出た気がする。

あとエルンスト様って誰だろう?


「ミリアム、それは話していい内容なの……か?」

「まあ、亡命したし、エルンスト様からもしゃべっちゃだめって言われてないし。私、聖教国が大嫌いだから!」

亡命? それって私聞いていい内容なのかなー?


しかし聞かなければいけないことがある。

私は口を開いた。

「その神官様が、この布切れを集めていたのですか……?」

「そうそう、うん。これぐらいのサイズのというか。まさにそれだね。なんか泥だらけとかびしょ濡れで帰ってきたこともあったわ。そのたびに洗濯が大変でねぇ。何していたのやら」

何かを思い出したのか、ミリアムはぷんすこしている。

「それって、いつ頃ですか?」


ミリアムから聞いた時期は、レモンが首輪を取られた日が含まれていた。


「その布切れは、その後どうされてたのですか?」

「捨ててあったわ……切り裂いてたのかな」

「実は、私はその布で作ったシュシュを見知らぬ男性からひったくられたのです」

「はい?!まさか、神官様がひったくりしてたの!?」

「だから、何の目的でそんなことをされたのか気になるんです。思い当たること教えてくれませんか?」

ミリアムはうんうん言いながら、思い出そうとしている様子だった。


「私は家で雑用が多かったから、他の人が外で何していたのか、あまり知らないのですよね」

ミリアムは何も知らないのかもしれない。

アルが質問をした。

「ところで何で同僚に目の敵にされていたんだ?」

確かに、私もそれは気になっていた。


「あのクソ女……いえ、イザベラは聖教国にいるときから、立場が弱い相手には当たりが強かったですね。ただ、嫌がらせが激化したのは移住が決まってからですね。ただ仕事のストレスをぶつけてきてると思ってたのですが……」

うん、猫を捨てるなんてクソ女で十分。


ミリアムの聖教国に対する怒りは凄かった。


私が一番気になっていることを聞いてみた。

「聖教会を設立する任務とシュシュを強奪することはどう関係しているんでしょうか?」

「それがわからないんですよね。方針として下っ端の私が聞いていたのは、拠点を作る、支持者を作る、聖人聖女を探すの3つなんですよね」

アルが、

「拠点を作るは、移住した地点で完了してるのかな。残り2つは?」

と聞いた。

「支持者を作るっていうのは、奉仕活動などを行って教義を広めていく感じですね。他国では、炊き出しで人を集めて説法をする。子供はお菓子で釣って教義を植え付ける感じでしょうか?」

ミリアムの身も蓋もない言葉に、ララと気が合いそうだなと思った。


「聖人聖女を探すっていうのは、試しの石っていうのをぎゅっと握ってもらうんですよね。そしたらわかるとか。」

ミリアムは、指で丸を作りながら、

「これぐらいの白っぽい石で、聖教国では子供の頃に握らせられるんですよ。変化があった人を見たことないからどうなるかはわからないんですが」

聖教会がフォルダを探す理由はなんだろう。

「ミリアム、もしその石を見たら試しの石かどうかってわかります?」

「んー、どうでしょう?」

「アル、例のフォルダが試しの石という可能性が考えられませんか?」


私の言葉に、アルはフォルダを取ってきてミリアムに渡した。

ミリアムはフォルダを眺めて、握ったりしてみた。

「私がみた試しの石とは見た目もサイズも違ってますね。それだけしかわからないです」

ミリアムにもわからないようだ。でも見た目は違うのね。


「ミリアム、試しの石って貴重品?どういう管理をされているものなんだ?」

アルの質問にミリアムが答える。

「大きな聖教会にしかなくて、外への持ち出しは禁止ですね」


ツバキちゃんが、にゃごにゃごいいながら飛び込んできた。

「ツバキがトイレだって!!」

私たちは慌ててその場から離れた。



いつものようにアルに自宅まで送ってもらいながら、今日聞いた話をまとめていく。

「そうですね。あの、キルヒナーさんにも情報を共有したほうが良いですね。叔父を通じて連絡してみましょう」



フォルダが『試しの石』なのかという問題はあっさり解決した。

キルヒナー氏によって『試しの石』ではないことが断言された。


結局、アウロラ聖教国を含む、いくつかの勢力がフォルダを求めているということしかわからなかった。



会議終了後、キルヒナー氏がアルに話しかけた。

「アルフォンスさん、今回の件とは関係がないのですが力を貸していただきたいことがありまして、よかったら明日にでも私の自宅に来ていただいてもよろしいでしょうか?」

またアルは面倒ごとをただで引き受けてしまうかもしれない。

私はとっさに口を挟んだ。

「キルヒナーさん。私も同行して良いでしょうか?」

「あ……その……」

キルヒナー氏は口ごもっている。

これはよからぬことにアルを巻き込もうとしているのではないかしら。

「私が聞いたらまずいようなことをアルに頼もうとされているのですか?」

「そんなことは……」

「では、同行しても問題ないですよね?」

「……はい」


私は上司である叔父に向かって、

「叔父様、明日休みいただきます!」

「はいはい」

叔父は、あきれたような、もしくは面白がるような顔で許可をくれた。



私、強引すぎたかも……。

家に帰ってから、ベッドでごろごろと転がってしまった。

アンバーが迷惑そうな顔をしてベッドから降りていった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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