ネリー外伝7 猫の本音と恋する乙女
※番外編です。今回はネリー視点のお話です。
※対応本編:第20話 青い花、買わされました、第21話 青い花は偶然か
デート当日、10分前にアルが私に走り寄ってきた。
「ネリー、すまない。オレ時間間違えてたか?」
「楽しみすぎて、ちょっと早起きしてしまいました」
一時間前から待ってたなんて言えない。
劇場に向かう道すがら、青い花がいたるところで売られているのを見かけた。
「青い花は何かあるんですか?」
アルが売り子の女性に尋ねた。
「ローザ・オイラーが青が好きだから、ファンは青い花を買ってイベントに行くのですよ。ローザブルーって呼ばれてます!」
なるほど。ファングッズなのね。
「イベントに行くなら是非買っていったほうがいいですよ。アンコールの時にみんな一斉に投げるのが圧巻で…、
あの新聞記事の影響で、ファンがピリついているんですよ。青い花を持っていなかったら冷やかしと思われてからまれるかもしれません」
女性の売り込みにアルはあっさりと財布を開いた。
「じゃあ、2本ください」
そうして私に1本手渡してくれた。
アルって、さりげなくこんなことするよね。
だけどちょっと、どきどきした。
劇場の入口にカイルさんがいた。
頭にローザ・オイラーと書かれた青い布を巻いていた。
「アルー! ネリーさんも」
「カイルさん……」
これは、カイルさんもご一緒にとなってしまうのかな。あー。
「君らにローザブルーを渡そうと待ってたんだけど、持ってきているなんて感心。感心。
はい、これ今日のパンフレットね。」
ローザ・オイラーが表紙になっている冊子を渡された。
「あ、これ布教用だからお金はいらないからね。今日は是非、ローザの魅力を堪能していってくれよ。僕はファンクラブのみんなと最前列にいくから!!」
「そ……そうか」
手を振るカイルさんが、離れていったことに心底ほっとした。
舞台は凄かった。
最後のアンコールの後、青い花が舞台に飛ぶ。
アルも私も花を投げていた。
楽しい。
「ネリー、舞台の感想を共有したいから、どこかでお茶でもしながら話さないか?」
アルから誘われた。
やばい。心臓がばくばくいっている。
「行きます! 私も話したいです」
喫茶店でひとしきり感想を言い合う。楽しいよぉ。
新たな話題の糸口をつかむために、カイルさんからもらったパンフを流し読みする。
「あれ……」
私は気になる一文を見つけた。
「どうかした?」
「アル、ここ見てもらえますか?」
ローザのインタビュー記事は、青い花の植木鉢事件を連想させる内容だった。
この記事が書かれたのはいつだろうか?
パンフの裏側の発行日を確認した。
「このパンフが発行されたのは、半年前ですね」
もしかして……。
「ヘルマンさんが空き巣の犯人の調書を調べていましたよね。詰所の裏の花壇を見に行くついでに、今度聞きに行きませんか?」
「青い花の植木鉢!!」
事件も気になるけど、私ネリーは一緒に出かける口実をゲットしたのである。
アルに向かって、私はにっこりと微笑んだ。
次のお出かけの前に、私は新聞社に問い合わせた。
ローザ・オイラーのスキャンダルの記事が出た日を確かめるためだ。
そこでその日の夕方に、スキャンダルについての号外が配られたことを知った。
さらに余っていたその号外は捨てる予定だったそうで、分けてもらえた。
偶然にしては一致しすぎている。
私は記事の大事なところに付箋を貼って準備をした。
アルと待ち合わせ。早く着いていたのだが、ちょっと前についたように装った。
道中、アルは自警団詰所への差し入れを購入していた。
そういう気遣いがしっかりできるところも素敵だと思った。
ヘルマンさんは畑仕事の真っ最中であった。
「あれ……もしかして、その魔法」
「ああ、あんたたちか。あんたが使ってた魔法を買ってきたよ」
「ありがとうございます!!!」
「私も、ドライヤーの魔法買いました……」
……くっ。出遅れた。
私だってアルの魔法買ったのに。
ちょっとだけ、この強面のおじさんを憎く思った。
「ヘルマンさん、空き巣事件ってどうなったんですか?」
アルの質問に対して、ヘルマンさんが状況を説明した。
「それがな、どうも取り調べしている部署でも、容疑者が黙秘していてな。
まず、容疑者は近くの宿屋に宿泊しており、夜の12時に外出し、3時に戻ってきた。近くの飲食店は1時までに閉まるため、不審に思った宿屋からの情報提供によって現在容疑者として拘留されている。
もうすぐ拘留期限も切れるんだが、何か黙秘を崩す手がかりがあればと言われた」
なるほど。
「あの……ここを見てもらえますか?」
私は、準備してきた資料を差し出した。
「号外が配られた日の夜に、ローザの象徴である青い花の植木鉢が割られて、同じ特徴を持つ家に空き巣が入った。偶然にしては出来すぎてないでしょうか?」
しばらくの沈黙の後、ヘルマンさんは、
「お嬢さん、こちらの資料をお借りしてよいでしょうか? 取り調べをしている部署に連絡してみます」
「キルヒナー氏のことがあるので、結果が出たら教えてもらえますか?」
「捜査上で問題がない範囲で、よければ。資料の返却の時にでも」
無事に資料を受け取ってもらえた。
アルは必ず、帰りに私を家まで送ってくれる。
この時間が私は一番の楽しみだ。
家がもっと遠ければいいのに。
「うーん。これで結果が出れば、キルヒナー氏も安心するだろうな」
そこへ、一匹の猫が寄ってきた。
「あら猫ちゃん」
猫はアルに何やら、にゃごにゃごと言ってきた。
「アル、この子何ていってるんですか?」
「お腹が減って、食べ物欲しいみたいだよ」
うーん。何かあるかな。
私はカバンを探ったが、あいにく猫が食べれそうなものはなかった。
「うーん、猫が食べられそうなものはないですね。ごめんね」
猫は、アルに向かって、にゃごにゃごと言う。
よっぽどお腹が空いているのだろうか。
ツバキちゃんがカバンから顔を出して、猫に向かって、にゃごにゃごと言い返した。
アルがツバキちゃん用のおやつを猫にあげた。
きっとツバキちゃんが「おやつを渡してあげて」と言ったのだろうな。
猫ってかわいいな。
私はほっこりした気分になった。
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