ネリー外伝5 お宅訪問と首輪の秘密
※番外編です。今回はネリー視点のお話です。
※対応本編:第16話 探偵ネリー
今日は、アルのご自宅訪問だ。
私は気合を入れて挑んだ。
早く着きすぎて、近くの公園で時間をつぶしていたりもする。
アルの家は、一人暮らしにしては大きな一軒家だった。
あれ、もしかして実家とかだったかしら。
深呼吸してから、ノックをした。
ノックしてから、そう時間を置かずに、年配の女性がドアを開けた。
「ネリー様ですね。坊ちゃんがお待ちしております。私、メイドのハンナです。」
メ…メイド…?
「あ、あのジルバーシュタイン様のご自宅ですよね?」
「はい!!」
一軒家にメイド……。
奥からアルが顔を出した。
「ネリー、いらっしゃい。ハンナがびっくりさせちゃったね」
私は慌ててハンナさんに手土産を差し出した。
「あの、これ宜しかったら」
ハンナさんは笑顔で受け取ってくれた。
「まあ、ありがとうございます。 応接室にご案内いたしますね。」
勝手に一人暮らしだと思っていたけど、アルの名前のフォンって貴族の称号だったよね。
カタリナ王国では貴族と平民の垣根は低い。
ほぼないといっていいぐらいだ。
感覚的には、貴族=小金持ちぐらい。
アルの家ってお金持ちなのかしら。
急に不安になってきた。
案内された応接室にはツバキちゃんがいた。
何かくわえている。
「ツバキちゃん!」
「ネリーに見せようと一番お気に入りのおもちゃ持ってきてるんだよ。全部持ってこようとするから大変だった」
私は心を落ち着けるために、ツバキちゃんを揉みまくった。
やっぱり猫は癒される。
「お飲み物です。では、どうぞごゆっくりされてください」
ハンナさんが、テーブルにお茶とお茶菓子を置いて部屋から出ていった。
アルがツバキちゃんに何かを言ってから私に、かぎしっぽさんの首輪を手渡してくれた。
これは、レモンの首輪と同じ生地だわ。
「アル、かぎしっぽさんってトラ柄の猫でした?」
「ああ、トラ柄で尻尾がかぎしっぽだったよ」
「以前、私がシュシュをひったくられた時、ひったくりが頻発しているといわれましたが、そのシュシュってこれに似ていましたか?」
「確か、その柄と同じ生地を買った人がシュシュを配ったら、ひったくりにあったと、マリアから聞いたんだけど」
!!
「マリアさんってどなたですか!?」
「え? ハンナの娘で妹みたいな子かな」
つい、女性の名前が出てきたから……ハンナさんの娘さんか。
恋人という訳じゃなさそう。
「ああ……例の妹さんですね」
「アル、レモンがしていた首輪と私のシュシュ、そしてこの首輪。同じ生地が使われています。
雑貨屋さんで、この生地を購入したのですが、新作で3枚しか入荷してないって聞いていたのです」
何故かこの生地で作られたシュシュが狙われている。
「レモンは男性を怖がっていました。首輪も」
そう、あれからレモンは男性を極端に怖がるようになった。
叔父にも近寄らなくなった。
「あー、ネリーが心配するかなと思って言わなかったけど、男性に追いかけられて首輪を取られたみたいで」
アルは、私をさりげなく気遣ってくれていたんだ。
頬がゆるみそうになるが、今は大事な話をしているのだから我慢。
「追っかけていた男性の特徴とかわかりますか?」
「白い服を着た小太りの男性と猫たちが言ってたかな」
「キルヒナー氏も小太りでしたね」
「レモンから首輪を奪ったのは、キルヒナー氏ってこと? まさか、かぎしっぽと間違えた?」
私は可能性が高いと思ったのでうなずいた。
「キルヒナー氏は、かぎしっぽの首輪を探しているってこと? でも、彼がかぎしっぽに首輪を着けたのに」
その時、首輪を触っていた私の指先に引っかかるものがあった。
「アル、この首輪の中に何か固いものが入っています」
「開けてみる?」
「そうですね。」
アルは、ツバキちゃんをちらりと見てから首輪にハサミを入れた。
幸いにもツバキちゃんは眠っていた。
「これは、小型のフォルダ……だな」
「あ、ツバキちゃんにバレないように首輪を縫いますね」
アルの気遣いが無駄にならないように、私も隠蔽に加担することにした。
フォルダを確認していたアルが言った。
「ロックがかかってるな。暗証コードタイプみたいだ」
パスワードがわからないとどうしようもないってことね。
「キルヒナー氏に聞くしかありませんね。アポをとってみましょう」
「危なくないか?」
こういうときは叔父がたよりになる。
「叔父に頼んで会議室を借ります。それなら危険も少ないかと。アルも着いてきてくれますか?」
「当たり前ですよ。女性を危険にさらす訳にはいきません。まだこのフォルダが危険なものかはわからないですし、案外日記とかかもしれませんね」
「保険で叔父にこの話をします」
叔父ならアルが危険にさらされないように立ち回ってくれるはず。
帰りは、アルが家まで送ってくれた。
今、猫トイレを作っているらしい。
すっごく気になるんだけど。
あ、これはチャンスだ。
「完成したら絶対見に行きたいです!!」
「あ……はい」
私は、『押し切り』に成功した。
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