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アルフォンスは魔導士ではなく、猫である  作者: 猫のアミーゴ


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第26話 迷い猫と聖教国

コン、コン、コン。

翌朝、力強いノックの音でオレは目を覚ました。

「アルさん、イグナツです。起きていらっしゃいますか?」

え?イグナツさん?

慌てて、オレはドアを開けた。

「アルさんは、危なっかしすぎます。ヘルマンさんと相談して今日もお供しますよ」

寝巻のままのオレを見て、イグナツさんはため息をついた。



イグナツさんに飲み物を、ツバキとブラウに朝ごはん。

オレはバタバタと準備を始めた。

《あ、これこれ。いつものおいしいごはんだー!!》

《ん~。今日のはさっぱり味ね》

衝立で仕切られた猫2匹の独り言。オレはごはんを間違えて出したことに気づいた。

まあ、イグナツさんに猫のごはん出さなかっただけ、マシだな。

外出着に着替えて、寝ぐせを直してからイグナツさんの待つ応接室に向かった。

「アルさん。これ砂糖じゃなくて塩ですよ」

イグナツさんが調味料入れを示す。マシじゃなかったよ。



郊外の自警団詰所まで距離があるので、タクシーに乗っていくことにする。

黒いタクシーはなしだな。ハイマンさんとノルさんの顔が思い浮かぶ。

イグナツさんも、同じことを考えたようだ。



郊外の自警団詰所に着くと、イグナツさんは顔見知りの団員に声をかけられた。

「なんでイグナツがこっちにいるんだ?」

「いやー、ちょっとね。ところで迷い猫の問い合わせがなかったか知りたいのだけど。白い猫で」

「ちょっと、調べるから待っててくれ」

待つこと5分ほどで、団員が戻ってきた。

「2日前に白い猫の問い合わせがきてるね」

間違っていたら困るのでオレは口を出した。

「あの依頼主さんはミリアムさんという方じゃないですか?」

団員は変な顔をして、

「なんでそう思うんだ?」

「えーっと……猫本人に聞きまして……」

追い詰められるオレをイグナツさんがかばってくれた。

「アルさんは、魔導士で猫語が少しわかる魔法を開発したんですよ」

「そんな魔法聞いたことないですが」

不審者を見るような目で見られた。

「失敗して、自分にインストールしちゃったので販売できない魔法なのです……」

オレは居たたまれない気分だった。

イグナツさんが事情を話し、ブラウがまた捨てられる可能性があることを伝える。

「そういう理由なら、たしかに依頼主はミリアム・レーヴェさんです」

名前が一致している。ほぼ間違いないだろう。

「ブラウが言うには、つい最近遠方から引っ越してきて6人程で共同生活を送っているそうなのですが……」

団員は依頼書をちらりと見て、

「猫本人がブラウって名乗ったのですか?」

「……はい」

何かオレが尋問されている気がしてきた。

「……確かに、レーヴェさんはアウロラ聖教国から最近引っ越されてきてますね」

アウロラ聖教国か……。やっかいな予感がする。



これは一度、持ち帰ったほうがよさそうだ。

オレが単独で聖教国に関わったと知れたら、実家から何を言われるかわからない。

「レーヴェさんとは、日を改めてブラウと顔合わせしてもらうっていう形にしてもらえませんか?」

これには団員もイグナツさんも反対のようだった。

「いや、普通は猫が見つかったかもと連絡したら、飼い主はすっ飛んできますよ」

「後日なんていったら家に押しかけてこられるのでは?」

そうだよなぁ。うーん。

黙り込んでしまったオレにイグナツさんが、

「アルさん。何か理由があるのですか?」

オレは、理由のひとつを伝えた。

「いや……同居している同僚がわざわざ部屋に押し入ってきて袋に詰められて遠くに捨てられたって言ってたから……」

もうひとつはオレの事情だから言いづらい。

「あー、それはまた」

「同じこと起きかねないよね。今度はもっと巧妙か過激になるかも」

これには団員も黙り込んでしまった。



沈黙を破ったのは団員さんだった。

「依頼主に猫が見つかったかもしれないことは連絡しないわけにはいきません」

そうして続けて、

「ただ、捨てられるにいたった環境の改善が見られない場合は引き渡しに応じることができないとは言えます」

そうだよね。自警団の立場もある。

3人で依頼主に伝える内容を決めた。



・ブラウらしき猫を保護しました

・猫はタクシーに乗った乗客が窓から捨てたところを保護されました

・乗客は依頼主自宅付近からタクシーに乗車していました

・再発しないと判断できない場合は引き渡しできない



ただ、ひとつ問題がある。

まだブラウとレーヴェさんの面通しが済んでいない。

ブラウが、届け出のあった迷い猫なのかは確認できていないのだ。

それについては、レーヴェさんが確認したいと言ってからにしようと決まった。



帰りにオレは郵便屋に寄って、実家に手紙を書いた。



『たまたま拾った迷い猫が、アウロラ聖教国からの移住者の飼い猫だったみたいです。

接触はしていないが、念のため報告します。

少し猶予はありそうですが、近々猫を連れて面接に行くことになりそうです。


アルフォンス』



ハンナからも報告が行っているだろうし、こんなもんでいいかな。



家に戻るとツバキとブラウはお昼寝をしていたが、オレが帰った気配で起きだしてきた。

ブラウに飼い主(ミリアム)が見つかったこと、どうやって伝えようか。

《ブラウ、ミリアム、見つかった、かも?》

《本当!?私帰れるの?》

ブラウの顔が輝いた。

《確定、違う、本人、確認、まだ、ブラウ、安全、確認、する、帰る、時間、かかる》

《まだミリアム本人とは決まってないのね。それに安全が確認できるまで、帰れないのね……》

ブラウは、俯いて震えている。

《ブラウいなくなっちゃうの?》

ツバキが聞いてきた。オレは何て答えようか悩んだ。

《いやったぁ!!帰るまでおいしいごはん堪能するわ!!》

あれ……?ブラウの反応おかしくない?

《だって、こんなおいしいごはん。帰ったら食べれないんだもん!!トイレも綺麗だし!》

《じゃあ、ブラウずっとここにいたらいいじゃん?》

えーっと、ハンナのごはんすごいな。うちリゾート扱い?

《ううん、ミリアムが迎えにきたら帰るわ。だってミリアムは私がいないとダメなんだから》

ブラウは、ハンナのごはんよりミリアムを取ったようだ。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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