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アルフォンスは魔導士ではなく、猫である  作者: 猫のアミーゴ


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第25話 タクシー運転手の証言

約束の時間よりちょっと早くつきそうだが、飲食店に向かうとイグナツさんがいた。

「あれ?イグナツさん」

「アルさん、付き合いますよ。アルさんはちょっと危なっかしいから」

そんなにオレ、信用ないんだろうか?

「ああ、じゃあイグナツさんの分も出しますよ。付き合ってくれてありがとうございます」

「……そういうところですよ」

何かイグナツさんが小さな声でつぶやいた。お礼を言うのが照れ臭かったのかな。



程なくして、運転手さんが一人の男性を伴ってやってきた。

おそらくノルさんであろう。

「ああ、お客さん。お待たせしました」

運転手さんは、ハイマンさんというらしい。ハイマンさんはヒゲがダンディなおじさんで、ノルさんはひょろりと身長が高いおじさんだった。

店に入って、エールと適当なつまみを注文する。

まずは、お疲れ様の乾杯してから。

「何か聞きたいことがあるとハイマンから連れ出されたのですが」

オレはブラウの事情を話した。

「ああ、覚えていますよ。とんでもない女でしたよ」



あの日の午前中、ノルさんは郊外のタクシー乗り場で客待ちをしていたそうだ。

そこで大きな麻袋を抱えた女性が乗ってきた。

袋がごそごそ動いていたので、生き物を持ち込んだのは気づいていたそうだ。

女性は、適当に人通りが少ない場所を走ってくれと注文してきた。

ノルさんは嫌な予感がしたが、断る理由もなかったため従ってあの広場付近まで車を走らせた。

しばらく、何事もなかったが唐突に女性が車の窓を開けて袋の中身を捨てた。

その瞬間は猫とは気づかなかったが、

「ふぎゃー!!」という鳴き声とミラー越しに白いものが転がり落ちるのを見た。

慌てて路肩に車を止め、女性に抗議したが「さっさと車を出せ」としか言わず、お金を出されたので、その場から来た道を戻った。



そこまで聞いて、ハイマンさんから、

「お前、乗車料金以外にもらった金どうしたんだ?」

ノルさんは、

「えへへ……」

「懐にいれたな。まあ、社長に言ったら没収の上、減給だろうしな」

ハイマンさんはグラスを飲み干し、オレをちらりと見た。

ああ、追加ですね。オレはエールを追加で注文する。イグナツさんは申し訳なさそうな顔をしていた。



「郊外のタクシー乗り場の近くって何かあるんですか?」

イグナツさんが質問をする。

「ああ、あそこは近くの農園の客ぐらいかな。午前中はあんまり客がいないから、あそこでよくサボってるんだよ。こいつ」

ハイマンさんがノルさんを突いた。

「いやー、朝から客を探しに行けって社長がうるさいからさー」

ノルさんは少し赤くなった顔でへらへらと笑っていた。

「あ、最近あの辺りにアウロラ聖教国から来たって集団が住み始めたらしくって利用がちょっと増えたんだぜ」

……アウロラ聖教国、うちの国では余り見かけない。聖教会がないからだ。

「珍しいですね。アウロラ聖教国の商人ですか?」

「いやー、たぶん商人って名目の教会関係者だと思うね。白い服着てたし」

我がカタリナ王国では、聖教会を置くことを認めていない。長期滞在するには商売、留学などの理由がなければ許可が下りない。

「ふーん。そっちも売り上げになりそうなら、ライバルが少なくていいかもな」

「あの猫を捨てた女もおそらくそれだと思う」

ノルさんが断言する。

「何でそう思うのですか?」

「教会の白い服きてたし。というか教会の神官が動物捨てるなんて、聖教会ってろくでもない組織だよな」

「うちの会社もなー」

ハイマンさんとノルさんはグラスをぶつけて、笑いあっている。あー、出来上がってきてるな。

そこから先は、会社の愚痴が延々と続いた。

オレは、お金を多めに置いて、イグナツさんと帰ることにした。

「兄ちゃん!ありがとうよぉ!あはははは……」

いつの間にかエール追加してるなー。オレたちはそそくさと店を後にした。



帰り道を歩きながら、イグナツさんと話す。

「うーん、その集団のところに行って、猫捨てませんでしたか?って聞くわけにはいかないよなー」

「アルさん、ちょっと酔ってますね?まず、そのエリアの自警団詰所を当たってみてください」

ああ、そっかぁ。段階飛ばしすぎた。

「それに、またその猫を捨てた女性に猫を渡してしまうことになりかねませんよ?」

ああー、その問題もあった。

「送っていきますから!帰ったらちゃんと水飲んでくださいね」

うん……お酒飲んでからの考え事は良くない。

イグナツさんは、オレを送ってくれた上に管轄の自警団詰所の場所を紙に記してくれた。



水を飲んだ後、起きてきたツバキに頬ずりをしようとしたら、全力で拒否られた。

オレはひとりでベッドに潜り込んだ。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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